episode 4 First Request / 町の現実
今回は探偵パート導入部です。
「そういえば、まだ名前を訊いてなかったな。差し支え無ければ教えてくれないか?」
「私、ユリア。ユリア・タリスマンと言います。衣服や人形を作って売ったり店のある区画まで出稼ぎに行ったりしています。」
「なるほどな、その年で大したものだ。」
ギルドを出て商店街とは反対方向に暫く歩き続けた。やけに長い道だ。臆測だが、整備も長らくされていないのだろう。おかげで話す時間には困らなかった。依頼の話をしようかと思ったが、ユリアが落ち着いたところで座って話したいとのことで断念した。
「実はな、ユリア。私もわけあって遠いところからやって来た身なのさ。ここは良くも悪くも故郷とはまるで別世界さ。」
「そうなんですか…。私も少し前までは…。あっ、見えてきました、あそこが私の家です。」
ようやくユリアの家についた。パトリシアは家の周りのを見渡した。
家に入る前にパトリシアが口を開いた。
「ひとつだけ質問させてくれ。」
「はい。構いませんが…。」
「商人お抱えの豊かな町のはずのシュタインウッドの一区画が何故こうも荒んでいるんだ?」
人気があまり無い閑散とした光景に僅かながらの建物が並ぶ。先程までの豪勢な建物と比べると、そのどれもが小さくボロボロであり、まるで古びた小屋のようだった。
「はい、それなんですが…。この町では富裕層のローヤルズと貧民のパバティーズとに大別されてるんです。パバティーズはローヤルズから疎まれ、差別を受けているんです。」
「ひどい話だ。さっきのあの男もそれで…」
「いや、それだけじゃないんです。実は私の父も商人だったのですが、差別撤廃を唱えたり商売方針が違ったりであの人とは揉めていたんです。」
「そうなのか…。でも、こんな惨状を変えようとしたなんて、素晴らしい父上じゃないか。」
せめて励まそうと思っての一言だった。しかし、ユリアは顔をさらに悲しげに歪めた。
「でも、優しさが祟ったんだと思います。いろんな人に信頼されてたから、父はあの人に目をつけられていたんです。数日前に母と近くのペスカドール村に出かけて、それ以来行方不明で…。しかも、お金や家もあの男に持っていかれて、差別され、やっとのことでここに逃げて…」
少女はとうとう耐えきれなくなり、泣き崩れた。痛ましい話だ。家族を失い、家も何もかも失い、その日を生きるだけで精一杯な生活。パトリシアには想像もつかなかったが、彼女が筆舌に尽くしがたい苦痛に苛まれ続けた事だけは容易に理解できた。
ひとしきり泣きじゃくると、ユリアは落ち着きを取り戻し、依頼内容を告げた。
「お願いします。行方不明の両親を探してください!両親が帰ってきたらきっと今までの生活が…」
「言ったはずさ、『無論引き受ける』と。」
「ありがとう…ございます…。」
依頼の受諾だけを伝え、パトリシアはユリアの家を出た。
いつも読んでいただきありがとうございます。
次回から調べたり推理したりし始めます。