表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/12

決闘する町 4

「メイの準備が出来てもマインが用意できないと行けませんよ」


 やれやれ、という感情を表したいのか手を肩の上まで上げるアオイ。


「マインなら既に外だぞ?」

「出来てるよ?」



 っと、今ままで閉まっていたはずの扉の外からマインの声がする。


「全く理解出来ませんね」

「こういう準備は昨日のうちからやっとくもんだぞ」


 年齢が2桁になって間もない彼女らに化粧をする必要はなく。身支度は簡単。


「誰が戦うんだろうな」

「さあ、行ってみたら分かりますよ」


 当たり前のような顔で大量の食料を買い込んだアオイを連れて、コロシアムの席に座る。


『さー、まずは挑戦者から。今日の挑戦者は、こちら!』


 アナウンスが鳴り響き、入場口に注目が集まる。そして、大歓声の中、1人の男が現れる。


「えっ、」

「うっ」


 アオイが驚き、メイが思わず直視してしまったそれから目をそらす。


「血まみれの旅人さん」


 それは、昨日まで元気に宝石を見せびらかしていた、あの旅人だった。


『先日、豪商ガルーダに挑み、見事勝利した強き旅人が今日の挑戦者だー!』


 だが、その旅人を赤く染めている血は昨日被った誰かの血ではない。彼自身の血だ。


『そして挑戦を受けたのは序列4位!破壊のゴルギウス!』


 反対側から現れたのは大きな剣を持った一体のオーガ。


『さあー、どちらも出揃いました! それでは早速。FIGHT!』


 その一言でオーガが動き出す。

 骨折しているのか立ち上がることすらまともに出来ない旅人を、その大きな剣で叩く。叩く。叩く。


「酷いですね」

「んー、だが仕方がねぇもんだ」

「あ、パン屋のおじさん」

「おじさんじゃなくてお兄さんなんだが、あれはこの街のルールを知らなかったんだ」


 偶然にも隣で観戦してたパン屋の店主が、この国で本当に大事なことを教えてくれる。


「この国にはな、序列ってもんがある。序列が下のものは、上の者に決闘を挑む権利がない。このコロシアムの中以外でな」


 それ故に1部の民は上を目指す。


「でもな、別にこのルール。法律で決められてるわけじゃねぇ。いわゆるマナーってやつなんだ」


 法律でしっかりと決まっていないマナーなら破っても罰則はない。


「罰がないわけがない。マナーってやつは痛い目見るやつが出ないようにするためのものだ」


 旅人はそれを知らずに上位のものに決闘を申し込んでしまった。


「そりゃ、最初は勝てるだろうな。だが、勝ったらさらに強いものが来る。勝つ度にさらに強いヤツと戦うことになる」


 武者修行をしたい奴なら問題は無いが、そういう奴ほどマナーというものをわきまえている。


「マナーをわきまえていない欲望まみれの男は、1日で潰れる」


 ボコボコにされた旅人が、体験によって地面のシミになる。


「あれが最後だ」

「怖いところなんですね」

「何もしなけりゃ観光客の多い、いい町だ」


 挑戦者が死んだことで見る価値を無くしたのか、パン屋の店主を含めてほとんどの客が帰っていく。


「私達は次の町に行きますか?」

「そうだな」


 さっさと荷物をまとめて入った時と同じ門から出る。


「楽しめました?」


 出る直前、あの、入場管理人に、話しかけられる。


「はい、とっても美味しかったです!」


 少し質問の答えとしてはズレている気もするが、彼は満足したように微笑む。


「そうだ、ひとつ聞いてもいいですか?」

「どうぞ?」

「ここの国の人達は何を求めて、何をかけているんですか?」


『負い目があるものは負けを呼ぶ』

 初めにここを通った時に見たもの。


「求めているのは順位、プライドだ。金とかその他はそのおまけ。かけているものはもちろん命だよ」


 この街での名言を見ながら強く答える。


「負い目、というものは負けるかもしれないという思いじゃない。そんなもの持ってる時点で負けだ。負い目って言うのは甘さだ」

「甘さってことは手加減とか同情とかですか?」

「それと相手に勝とうと卑怯な手を使うとかな」

「喧嘩に卑怯とかあるんですか?」

「もちろんあるさ。勝った時に『俺は正々堂々戦って勝った』と宣言できなくなるような行為。自分がそう思ってしまう行為は卑怯に入る。っと、随分長く引き止めちゃったね」


 管理人が儀礼用の剣を構え、マニュアル通りの仕事をする。


「あなたの旅に勝利と終わりが来ますように」




 彼らの旅は作者が飽きるまで続きます。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ