決闘する町 2
コロシアムの入口にあるゲートで入場管理人に話しかけられる。
「はい、初めてですね」
「まず、この街にいる間、覚えておいて欲しいことがひとつ。この街ではいざこざがあった際に決闘によって決めます」
「それは、強いひとが有利なのではないですか?」
「もちろん、ですが小さい頃から決闘を学んでいる我々としては、負けるのは努力を怠っていたから、と考えるので。それに代役も立てることが出来ますから」
「なるほど」
「ああ、そういえば、あれが私たちが戦いで決める理由ですよ」
彼が指を指した所にはひとつの板が飾ってあった。
その板には
『負い目があるものは負けを呼ぶ』
そんな、単純な一言。
だがこのコロシアムで生きる彼らにとって正しいものが勝つと信じているのだ。
「でもその一言も、毎日眺めていれば愛着が湧きます」
「他にこの街特有のものはありますか?」
「ふむ、そうですね」
説明用の厚い本を捲る。
「ああ、こんなのもありましたね」
「ん、珍しいもの?」
「ええ、珍しいですよ」
その本に載っている写真を見せてくれる。
そこに載っていたのはいくつかのパンの写真。ただ、もちろん普通のパンではなく
「武器や防具の形をした、この街特有のパンですね」
彼からコロシアムに入る許可を貰い、勧めてもらったホテルに荷物を運ぶ。
「とりあえずパンを見に行きましょう」
「どう考えても先にコロシアムを覗くのが先だ。パンはそのあと」
「パンなら食べながら移動出来ますよ」
騎士、勇者という戦う職業に着いているせいかコロシアムを覗きたいメイ(普通)と、お腹が空いた気がするアオイ(食いしん坊)の間で意見が割れる。
「マインはどっちがいいですか?」
「マインはどっちなんだ?」
結局多数決に行き着く二人。
「お腹すいたしパン食べたい」
「よっしゃー」
「はぁ、わかった。先に食べに行こう」
両手を上げて喜ぶアオイに苦笑しながら、渋々、という感じでパン屋というのを探す。
「どのへんに売ってるんでしょうね」
見つからないのではと心配していたのだが、すぐに見つかった。というかどのお店のも売っているようだった。
「ふむ、剣だけでなく盾や籠手もあるんだな」
そのどれもが精巧にできており、実際の武器と同じ色だったら見分けが付きにくいだろう。
「硬さもある」
試しにいつも使っている剣と同じ形をしたパンを買って振ってみる。
「おお、軽いが本物と同じ強度だな」
メイと同じように、いつものダガー(パン)を買ったマインがメイに刃先を向ける。
「お、試し斬りか?」
「ん、リベンジマッチ」
パンの立てる音ではない、恐ろしく硬い音を鳴らしながら、2人はパンで斬り合う。
「もー、食べ物で遊んじゃダメですよ」
「いいんだよ、あれはああやって食べるものなんだからさ」
食べ物を粗末に扱う2人にアオイがプンスカと怒るが、店主はそんなアオイを止める。
「弱い金属と同じだけの硬さを持ったパンなんだ、1度砕かないと食べられないんだよ」
「確かに硬そうですね」
武器パン(命名アオイ)の中でも特に硬そうな盾型のパンにかぶりつくアオイ。
普通ならガリ、という音を立てるだけなのだが、そのままボリボリと食べ進めてしまう。
「マジかよ」
「ご飯を美味しく食べるコツはよく噛んで食べることですよ」
金属製の武器の代わりとして十分に使えそうなパンを、まるでただのフランスパンのように腹に収めていく。
「なるほど、あそこで本気の試合を繰り広げてる子達といい、嬢ちゃんも化け物の類みたいだな」
「違いますよー。バリモグ。ただの可愛い女の子ですよ? ボリボリ」
残念ながらパン屋は金属を噛み砕く生物を人間と認めないようで、白い目で見てくる。
「さてと」
武器パンを3種類ほど噛み砕いた天使様は、すくっと立ち上がって手でメガホンのような形を作る。
『2人ともー、そろそろ柔らかくなりましたかー』
「まだ食べるのか!?」
「ちょっと食べ過ぎ」