決闘する町 1
天使と勇者と鬼が馬車でサンドイッチをむしゃむしゃと食べながら道を行く。
「って、おい、アオイ! 少し食べ過ぎだぞ」
「まだ、少ししか食べてませんよ」
「アオイの少しって3人前?」
1人で全て片付けようとするアオイを止めながら、ゆっくりと進んでいく。
「おーい、そこの馬車。止まってくれないか?」
突然馬車の外から男の声を不思議に思ったマインが馬車から顔を出してみると、馬車は道を少し外れて道の近くでキャンプをしていた旅人にぶつかりそうになっていた。
「ん、ちょっとまずい」
「何がですか?」
アオイになにか返すよりも先に御者台に飛び乗って、馬車の方向を正す。
「ああ、どうやら誰も馬を操って無かったせいで進路がズレてたみたいだな」
「大事にならなくて良かったです」
馬車を降りて男のところに向かう。
「すみませんでした」
「いや、何も犠牲にならなかったから心配ないよ」
男が、道のずっと先を指さす。
「あの町を目指しているのか?」
「ん、もっと先」
「どうだろう。ここであったのも何かの縁だし、一緒に行かないか?」
「いいですよ」
「え、アオイ?」
マインが驚いて声を出し、メイも咄嗟にアオイの方を掴む。
「騎士でもない男と一緒に行くなんて危険じゃないか?」
「私にはなにも出来ませんし、人斬りや勇者なら大丈夫ですよ」
その自信がどこから出てくるのか分からないが、言ってしまったものは仕方ない。
「わかった、一緒に行こう」
馬車の隣を黒い馬で併走しつつ、あの町についてのことを教えてくれる。
「外観は、そうだな。見た方が早いのは当たり前だが例えるなら闘技場、みたいらしい」
「何か名物的な料理はありますか?」
「どこでも食べれるを売りにした多種多様なパンを売ってるらしいぞ」
それは美味しそうですね、というアオイに勇者は冷たい目を向ける。
「そこに行ったことがあるのか?」
「いや、1度もない。ただ俺に合いそうな街を探していたらその町の話を聞いたから来てみたんだ」
そんな話をしていれば、町までの道などすぐに走りきる。
「ほら、見えてきたぞ。あれが俺の目指す町。決闘の町だ」
その町は外壁や住宅街がなく、大きなコロシアムひとつだけがある異様な街だった。
「大きなコロシアムだろ? あそこで男と男が殺し合うんだ」
「すっごいですねー」
「ああ、驚いたな」
「んーでっかい!」
アオイだけでなくメイやマインも興奮するくらい、とっても大きな人工物。
そのコロシアムは直径が10キロほど、高さは70メートルという破格の大きさだった。
野球場が2、300メートルだということを考えればどれだけ大きいか分かるだろう。
「うし、んじゃ俺は行くぜ!」
「え、もうですか?」
アオイたちを完全にほったらかして、男は入口を探しに走っていく。
「こんなものもあったんですね」
「ああ、私も初めて知った」
その時、ちょっと離れたところから眺めていたマインが、何か言いたそうにこっちに手を振っているのを見つける。
「何か言ってる気がしますが聞こえませんね」
2人で顔を見合わせた結果、身振り手振りで聞こえないことを伝えてみる。
それが読み取れたようで、マインもジェスチャーで返してくる。
「えっと、すぐそこに入口がある。ですかね」
「逆方向だな」
「逆方向ですね」
先程男が走っていった方向とは真逆の方向に進んでいく。
「1周するんですかね」
「元気そうだったし大丈夫だろ」
メイが突き放したように言うが、騎士なんてそんなもんである。
「初めまして旅人さん。この街は初めてですか?」