プロローグ5
「というか近代の勇者は家事もできるって聞いてたのに」
「家事スキルは持っているが。家事スキルのやってくれることは焼く、煮る、などの過程省略と味の調整だけだからな」
レシピがなければ全くわからん。と、ドヤ顔で決める。まあ、確かメイも10歳だし仕方ないかな?
「私も火薬のレシピは知ってても料理のレシピは知りませんからね」
「なんで火薬のレシピ知ってたんだ?」
「戦争してたもので」
アオイの世界では、冷戦が悪化して資本主義と共産主義が殺しあってるなんてことが現在進行形であるのだが、異世界ではどうでもいい事だ。
「仕方ない。私が作る」
マインがすごく手際よく、下準備をして調理していく。
だが、火をかける、という所になってメイが邪魔する。
「何?」
「焼くのは私がやる、他のことをやっといてくれ。頼む」
「ん、分かった」
強引にフライパンを奪ったメイにアオイがススス、と近寄る。
「(なんであんなことをしたんですか?)」
「(鬼人族の悲しい呪いのせいだ)」
説明するよりも見た方が早いので、マインに空いているフライパンを持たせて、そこら辺の雑草を乗せる。
「一瞬だけ、火の上にかざしてくれ。一瞬だぞ!」
「よく分からないけど、はい」
マインが火の上を通過させる。
「あの一瞬だけでさっき抜いた草が黒焦げになるんですね」
「どれだけ頑張っても焼いたものが黒焦げの炭になる。鬼人族の悲しい呪いなんだ」
高い身体能力の犠牲となったのが、焼く工程の失敗というのは、関係が無さすぎる気がするが、実際そうなのだからそうなのだろう。
「家事や料理スキルなどの過程表略で飛ばせば焼けるんだがな」
「何故か誰も料理させてくれなかったの」
どうやらマインは鬼人族の中でも身体能力が高く、それに比例して呪いの力も強いみたいだ。
そのあとも、メイとマインによる調理は続き、アオイが先程の料理を片付けたころ。料理が完成した。
「3人分の肉とスープを食べて、まだ食べるのか?」
「天使ってお腹が空くんですね」
「王城の時の反応からして昔からみたいだが」
「太らなければいいんですよ」
頭に栄養が行ってますからねー。
と、言うアオイの体を見て、マインが呟く。
「胸には行ってないみたい」
「んー、んー、」
「ぶふっ」
マインの一言によって、アオイが喉をつまらせ、メイがスープを吹き出した。
「な、あなただってつるつるじゃないですか」
「そうだぞ、ひ、人のことを言うには少し小さすぎるぞ」
と、ペタンコ姉妹が騒ぐ。
だが、マインはキョトンとしたままで
「私は鬼人族なので胸は成長しませんよ」
「え?」
「ああ、そうか。鬼人族は精霊種の類いだからか」
どうやら精霊種は子供を育てるのに母乳が必要ないようで。
「私たちは子供の頃、お母さんの血だけで生きるから」
血を飲むという行為にあまり良い感情を持てない2人が少し黙る。
「じゃあ、そろそろ行きましょうか」
「そうだな」
馬車に乗り込み、どこかを目指す。
魔王もおらず、目的がない。故に目的が現れるまで旅をする。
これはそんな彼女らの旅の話。