プロローグ3
さっきから長くつまらない話ばかりをされたせいでアオイの脳が夢の国に入ってしまったのだ。
「まあ、少し時間はかかりましたが寝てる間の記憶も見返したので、しっかり理解できました。大丈夫ですよ」
寝てる間に聞いたことを覚える睡眠学習というものはオカルトレベルで信用がないが、アオイの場合、耳に入れば覚えられる記憶力が寝ていても働いてるので、寝ていても先生の話を覚えられる。
「大丈夫なわけがあるか! 勇者だということを自覚して行動してくれ」
「はーい」
どうやら怒られてしまったようだ。
それで、宝具を選んだりするわけなんだが、アオイもメイも直感で選んでいったせいでつまらないのでカット!
「異世界転移から数時間で森って展開早すぎませんか?」
「アオイの持ってる力も知りたいし、少しくらい戦闘に慣れといた方がいいだろう」
ならやらウッキウキしてるメイに連れられて魔獣なるものがいる森に馬車で来たが、その魔獣というのが狼のでっかい版みたいで怖すぎる。
「ほら、こんなふうに倒すんだ」
「そんな簡単に言われても出来ないものは出来ませんよ」
重たい剣を持ち上げるだけで苦労するアオイには メイのような真似は出来なさそうだ。
「こうやれば上手くいきますよ、勇者様」
アオイと違い緑の少女はとても上手な剣技を見せる。
だが、その相手はメイだ。
「突然何を」
「黙って死んでください、勇者様」
そういう少女の額には1本の角が生えている。先程まで生えてなかったそれは、鬼の証。
「鬼人族の生き残り……」
「あなたに滅ぼされたあの村の、ただのマインです」
マインと名乗るその少女は、憎しみを持って勇者を殺そうとする。
その背景にはメイが騎士と共に生まれ故郷である鬼人族の村を襲った事件があり。
メイは、魔王の力を受け継がせようとする「魔王の右腕」という人物がその村に立ち寄っているという情報を元に襲った。
という複雑な状況なのだが、アオイはそんなことを知る由もない。
メイとマインの剣が幾度も交差し、マインとメイの体に傷が増えていく。
「メイ!」
「なんだ? 言っとくが止めることは出来ないぞ。こいつが魔王の力の一部を受け継いでいるとすれば殺さなければならない」
そんな殺し合うしかない状況は、どちらかの死へと猛スピードで走っていく。
だが、そんな状況がアオイによって止められる。
アオイがマインに抱きつき、その動きを強制的に止まる。
「離して!」
マイラが超至近距離の状態でアオイを切る。
だが、無傷のアオイは優しくマインを抱く。
「大丈夫です」
アオイが覗いたマインの心は憎しみに染った黒だけど、
「……泣いても、いいんですよ?」
それは悲しみの青が幾重にも重なった、悲しい憎悪だから。
「……うぐっ、ひっ」
マインが抵抗しなくなり、アオイの胸に顔を埋める。
「辛かったんですね」
耐えきれなくなった少女が、アオイの腕の中で涙を流す。
アオイはそんな少女の頭を撫でてやりながら優しく、優しく包み込む。
「もう、大丈夫なのか?」
「ええ、ようやく泣きやみました」
服を掴んで離さないマインに、膝を貸しながらアオイが話す。
「泣き疲れて眠ってるみたいですね」
「なぜ、なんだ?」
「涙の理由ですか?」
アオイは感情が色として見えるだけで何故かを当てることは出来ない。ただ、なんとなくだが彼女から感じたことがある。
「きっと人間が好きだったんですよ」
「あれだけ襲ってきたのにか?」
「私たちには分からない何かがあったんですよ。あなたに故郷を潰されても、まだ、嫌いになれない何かが」
メイがアオイの隣に座る。
「私が、1つの村を滅ぼしたことに何も言わないのか?」
「別に、その必要があって、滅ぼしたのなら何も言いませんよ。生き残るための行動に、私が口を挟む権利はありませんから。だから」
不安げなメイの顔をアオイが覗き込む。
「嫌いになったりはしませんよ?」
そして、また、マインを優しく撫でる。
そんなアオイの背中に、メイは一対の白い翼を見る。