お金と幸せ
「AIに人間の仕事を奪わせてはならない!」
私は新聞を読みつつ、テレビを話半分に聞いていた。労働者のデモ隊がニューヨークで行進をしていた。
しかしいつまでたっても愚か者どもは減らないな。そんなに仕事が好きなのか? 馬鹿馬鹿しい。私は何が何でも人の言うことを聞きたくは無いものだが。
そこへ愚かな父親がやってきた。
「僕の仕事もいつかAIに奪われてしまうのかなー。そうなったら、麻衣にもご飯を食べさせられないなー。」
「ふん、どこまで言っても愚かな野郎だ。そんなAIにでもできるような仕事にきさまはしがみついとるのか。恥ずかしく無いのか。」
「いやー、麻衣ちゃんは厳しいなぁ笑笑。でも、仕事がなくなったら僕たち食べていけなくなっちゃうよ?」
「そんなにお金が恋しいのか貴様は。金なんて今の時代たくさん必要なものでもなかろう。自炊して、狭いアパートに暮らし、それに地方にでも住めば安くてそこそこいい暮らしができるだろう。ネットがあれば世界中の情報が手に入るし、世界中の人と繋がることができるのだ。貴様はこれ以上に何を望むと言うのだ。」
「お金が沢山あれば、旅行にも沢山いけるし、欲しい物が沢山買えるよ?お金があるに越したことはないでしょ?」
これだから愚か者は。仕方ない、この私が啓蒙してやろう。
「ふん、これだから愚か者はどうしようもないのだ。貴様はRPGゲームをしたことがあるか。」
「そりゃあやったことあるよ。ドラ○エは大好きだよ。ちなみにあれはVが1番面白いよね〜。」
「貴様は金が無制限に手に入るRPGゲームをして楽しいと思うか?そんなものは糞ゲーだろう。欲しい物があって、その為にお金を稼ぐ。その過程があるからこそ買ったものが大切に思える。そのうえ、買ったら買ったですぐ飽きてしまうではないか。貴様この間買ったマッサージチェアは何処にある? もう物置の奥にしまってあるんじゃないのか? 物欲なんてそんなものなのだよ。人間、欲しい物が手に入った未来を想像する時間が幸せなだけなのだ。お金が沢山あったら幸せなんて貧乏人が未来を妄想して勝手に幸せになっているだけだ。」
「そうだね、ごめんなさい。あのマッサージチェアは使わないから、メ○カリで売ってしまおうかなぁ。 」
「そうだ。素直で良いではないか、自分の愚かさが身にしみてわかったろう。そんなものはさっさと売ってしまった方が良いのだ。」
「じゃあ、麻衣ちゃんもこの間買ったかき氷機はもう要らないから、メ○カリで売っちゃおっか。」
「いやっ、うん、そうだな……。物欲というのも悪くはない。物欲のおかげで経済は回っているのだ。人間から欲を取っては何も残らないな、うん。それにしてもパパ、麻衣、暑いから、冷たいものが食べたいなぁ♡」
「かき氷食べよっか?」
「うん! パパだーい好き!」
続く