魔道書(グリモア)
「神たちはこの世界を理想郷とし、ユートピアと名付けました。神たちはユートピアに4人の人間の男女を創りだしました。彼らはユートピアを創るべく農業や工業などありとあらゆる知恵を神たちに教え込まれたのです。こうして彼らはその知恵や技術を巧みに使い、何十年もかけて王国を作りだしたのです。そして後々、彼らの子孫が帝国と法国を創り上げたのです。これがこの世界ができた経緯です。」
ガイアは最初にこの世界と国について語った。その後、ここから一番近い国は王国だと言った。先程森の出口からうっすら見えた街並みは王国だったのだろう。そして王国を南に進むと帝国があるという。帝国の西側には法国があるそうだ。
「ここから西へ進むと王国があります。王国へ行きまず戦う術を手に入れなさい。この世界では戦いが日常的に起こります。この森にはいませんが外へ出ると魔物が襲いかかってくることもあります。戦う術は自衛のためにも必要なことです。」
そうだ。ここでは戦いが普通に起こる。ガイアが言うには魔物というものが出るそうだ。魔物と聞くと一番最初に思い浮かぶのはスライムだ。そんなものが出るのかとガイアに聞いてみた。すると
「魔物とは体のどこかに魔石核というものを持っているもののことです。あなたがいうようにスライムもこの世界には存在しています。それにあなたの世界では架空の存在と言われているドラゴンもこの世界にはいますよ。」
と答えた。ドラゴンなど文献上の挿絵でしか見たことない。ドラゴンはトカゲの体を持ち、翼が生えているという。本当にいるのなら一度は見てみたいものだ。
「話が逸れてしまったが、戦う術とはどうすればいいんだ?剣でも使って戦うのか?多少ではあるが扱えるぞ。」
「いいえ、人間相手はともかく魔物相手では普通の剣では倒せません。」
「ならばどうするのだ?この世界には銃や化学兵器など無いだろう?それが無いなら剣で戦うくらいしかオレには思いつかないが?」
「たしかにあなたの世界のようにそんな便利なものはありません。ですがここは異世界です。あなたの世界には無くてこの世界にあるものがあります。それが魔道書と呼ばれるものです。」
ガイアの話によればこの世界は魔法を使って戦うのだという。成人になると国ごとにある塔へ行かなければならないらしい。その時に授かるのが魔道書なのだそうだ。ちなみにこの世界では成人は15歳なのだそうだ。
「ちょうどこの時期は成人したものが魔道書を授かるため塔へ行きます。だからあなたもそれに紛れ魔道書を授かると良いでしょう。」
「魔道書は異世界人のオレでももらえるのか?」
「それは大丈夫です。魔道書は人間誰でもが持っている内に秘めたる生命エネルギーに反応して出てきます。異世界人のあなたでもそれは持っています。」
「なるほどな。魔道書は自分の内にある生命エネルギーに反応する。成人にならないと生命エネルギーが充分に足りず授かれないということか。」
生命エネルギーが足らないというのも成人にならないと授かれないという理由の一つでもあるだろう。しかし単純に危険だからということもあるだろう。成人してある程度覚悟ができてからでは無いと外に出て魔物と戦うのは危険だという判断なのだろう。
「魔道書は基本的に火、水、風、雷、土、光、闇の7属性に分けられます。火は赤色の魔道書、水は青色の魔道書、風は緑色の魔道書、雷は黄色の魔道書、土は茶色の魔道書、光は橙色の魔道書、闇は紫色の魔道書、とそれぞれ色に分けられています。また、どの属性になるかは授かるまで誰にも、本人さえ分かりません。」
出るまでのお楽しみというやつだな。魔道書のことについてはだいたいわかった。
「あなたに私が教えられることはこれくらいでしょう。あとは王国へ行けばなんとかなると思います。調べ物をするなら図書館がありますし、寝泊りをするなら宿屋が沢山あります。
あとはくれぐれも神たちに見つからないようにしてください。もし見つかってしまえばあなたの最後です。それだけはお忘れなく。また元気な姿で会えることを願っています。」
ガイアはオレに最後の忠告をし別れを告げた。そうするとガイアは姿を消した。そしてオレはこの森を後にし王国を目指すことにした。