第一話 ラバウルへ来たる
1944年、11月。内地から100人の補充整備員と3人の搭乗員、航空機107機が空母信濃を使い輸送された。
ラバウル基地は43年に第一次空襲、44年3月に第二次大空襲、8月に第三次大空襲を受け、全体的な施設を修復中であった。
林の中の墜落したB-29の残骸の近くに全搭乗員が集められた。
「今日からこのラバウル基地に加わる搭乗員10人だ。ほれ、挨拶しろ。」
「震電と申します!階級は中尉。海軍兵学校を卒業後大村の基地航空隊で中国方面から飛来する米軍機の迎撃を行っておりました。よろしくお願いします。」
「疾風と申します。階級は少尉。海軍兵学校を卒業し、間もないためにわからぬことも多々有ることでしょうがよろしくお願い致します。」
「飛燕と申します。階級は少佐。漢口の航空隊の司令官をやってました。よろしくお願い致します。」
一人は元気よく、また一人は丁寧に、また一人はくねくねしながら挨拶をした。
「ふむ。偶然だな。3人の名前は陸海軍の航空機と全く同じだ。陸軍には三式戦闘機「飛燕」、四式戦「疾風」。海軍には局地戦闘機「震電」がある。震電の方はまだ試作段階だがな。」
三人は驚いた。こんな偶然があるものかと不意に顔を見合わせた。
「3人はまず宿舎へ向かい荷物の整理、そして夕食を取れ。その後に司令官に挨拶へ行って来い。分かったか。」
「はい!」
「声が小さぁい!」
「はぁい!」
そして搭乗員らが解散しようとした時
「空襲警報空襲警報!搭乗員らはすぐに防空壕へ!整備員らは機体を一時放棄し避難せよ!繰り返す、空襲警報・・・」
上空を見上げるとB-29と思わしき4発重爆撃機が大編隊を組んでいた。