表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒甲のベリサリウス   作者: あきなん
1/2

0.序章という名の英雄譚

壮大なあらすじですが文才が追い付かないこと必至。

最初はあんまり戦いません。

なお、作者の歴史・人物・兵器の知識には過分な主観と思い込みが介在しておりますので悪しからず。

遥か昔の遠い国に一人の青年がいた。

青年は国を愛し、そこに住む人々を愛していた。

平和に人々が暮らしていけるだけで青年は幸せであったし、それ以上に望むものはなかった。

しかし、その国は大国であることから内外に多くの敵がおり、平和は脅かされ続けていた。

青年は自分はこの国のためになにができるだろうと必死になって考えた。

そして彼は自分の才を国のために役立てようと考えた。


彼の才は戦いに強かったことだ。


個人の武勇もさることながら、彼の戦いの才は大軍を指揮した時に最大限の力を発揮した。


将軍となった彼は指揮官として戦いに明け暮れていくことになる。


ある時は反体制派市民の反乱を鎮圧し、またある時は異民族国家を侵略・平定し、またある時はより強大な大国からの侵攻を防いだ。


長く続く戦いの中、彼も傷つき、その片目は失われた。

それでも彼は戦い続けた。

それが自分が人々のためにできる唯一のことだと信じて疑わなかったからだ。

彼はやがて人々から『英雄』と呼ばれるようになった。

数々の武功とその献身的な人柄から彼がそう呼ばれるのは必然だった。


しかし、それを快く思わない者もいた。

それはこの国の皇帝であった。

皇帝は名君と呼ばれ、国の発展と拡大に成功してきた。

だが、皇帝は優秀であるが故に人一倍の猜疑心と嫉妬心も併せ持っていた。

英雄が活躍し、人々の崇敬を集める度に皇帝は彼へ暗い感情を向けるようになった。

英雄の将軍位を剥奪し、辺境に追いやった。

しかし、隣の敵国の侵攻が始まると英雄の力がどうしても必要になった。

彼でなければ敵国の侵攻を止めることはできない。

皇帝は英雄が自分を恨んでいる筈だと思い、彼が再び力を貸すことはないと思っていた。

しかし、英雄は皇帝の求めに応じ、見事敵国の侵攻を防いだ。

英雄にとっては皇帝の所業など国の危機に比べれば些事に過ぎなかった。


国の人々は英雄を讃えた。

英雄の武勇と献身が国を救い、多くの命を救ったのだと。


しかし、英雄自身が報われることはなかった。

皇帝は再び英雄から将軍位を剥奪し辺境に追いやった。

皇帝は彼に褒美も栄誉も与えはしなかった。

ただただ、己の高まる猜疑心と嫉妬心を抑えるために、自らの地位を脅かす英雄を遠ざけるためにその権力を振るった。


その後も国は幾度も危機を迎えたがその度に英雄は戦い、国を救った。

皇帝がその時だけ掌を返し、助けを請うのを英雄は拒まなかった。

戦いが終われば、彼はまたその地位を剥奪され、遠ざけられる。

財産も没収され、軍事指揮に怠慢があったという謂れのない罪で幽閉されたこともあった。


長い月日が流れ英雄は老い、その力に陰りも見えてきた。

そのころには、国は大きく拡大し、人々は豊かな暮らしを送っていた。

英雄に代わり、若く才気溢れる将軍が軍事を主導し始めてもいた。

英雄は自分の役目が終わりに近づいていると悟った。

このまま、自分が消えてしまってもこの国の平和は続くのだと。


しかし、平和を謳歌し始めた国に新たな危機が襲った。

異民族の侵攻である。

異民族は主力となる軍が辺境防衛や地方の反乱鎮圧のため出払っている時を狙い、国の首都にまで迫り、防衛戦力が皆無に近い状態で陥落は必至だと思われた。


人々か絶望に暮れて、泣く姿を英雄が黙って見ていられる筈がなかった。

英雄はその老いた身体にむち打ち、寡兵の軍を指揮し、自らも剣を振るった。

そして、陥落するかと思われた首都は異民族に大きな打撃を与え、撤退させることに成功した。


英雄はまた国を救った。


だが、英雄を待っていたのは謂われなき罪による拘束であった。

皇帝の帝位を簒奪しようとした罪。

それは英雄から一番縁遠い罪名だった。

辺境の異民族を引き入れ、皇帝を無き者とする。

それは明らかな陰謀論であった。


英雄は幽閉された。


しかし、英雄は弁解もせずその謂われのない、拘束を受け入れた。

その目には負の感情の色はなく、終始穏やかだったと言われる。

やがて、その罪が冤罪であったと分かり、英雄は自由の身となった。

その後、国が危機に見舞われることもなく、平和な時代が続いた。

その後の英雄の足跡については史書には詳しくは残っていない。

しかし、民間伝承によれば英雄はその後も不遇であったという。

残っていた片目を抉られ盲目となったとも、こじきに身をやつしたとも言われている。


英雄とは何なのか?


他が為に身を磨り減らし、必要がなくなれば切り捨てられるだけの存在なのか?


答えは分からない。


その意義を意味を正しく理解できるのはその英雄ただ一人だけなのかもしれない。




これは、何の変哲もない英雄譚。

今も世界のどこかで繰り広げられている英雄譚。


特別でもなんでもないどこにでもある英雄譚…。


















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ