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魔法が使えない魔法使い  作者: 浮島 藍
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不安

本編もですが、予告を書くのも楽しくなってきました。……予告と言うか小さなまとめみたいになってますがゲホゴホ。活動報告に掲載しております。

十四章、不安



 エンリケはギルドにて、不在のアイリンの替わりに雑用を申し付けられていた。

「下手くそじゃのう。お前さん、本当にアイリンの弟子かあ?」

マスターのいびり口調に、エンリケは思わず青筋を立てる。

「あのですね、師匠が規格外なんです。確かに僕は普通の魔法使いじゃないですけど、毎日勉強してるんですよ!」

エンリケはキコキコと魔法道具のネジを締めた。ここ最近、マスターから言われて、古くなった道具の手入れをしているのである。

「魔法陣や魔力回路についても、師匠の本で基本的な理論までは理解しましたからね。……あ、これ魔力切れだ。魔石を新しくしないと」

ギルドに持ち込まれる道具のほとんどが、大風から家を守るためのものだ。これが壊れると、マドーラ・チサの人々は困ってしまう。ギルドには予備の魔法道具が保管されているが、壊れたものは直さねばならない。

「ふ、まあ最低限のことは出来とるから良しとするか。ところでエンリケよ、お前、そろそろ杖を持ったらどうじゃ。剣だけでは魔法使いと分からんぞ」

マスターは耳をほじりながら言った。エンリケは小さく溜め息をつく。

「良いんですよ、分からなくて。持ったところで使えませんし。使えない物持っていても滑稽なだけですもん」

「何が『ですもん』じゃ。この街のほとんどの者が、お前は見習い騎士だと思っとるぞ」

エンリケはぴくりと反応した。腰の剣に目を向ける。

「……いや、合ってますよ、それでも。騎士団に在籍してるわけですし」

エンリケの言葉に、マスターは大げさな溜め息をつく。そしていつものように新聞を広げながら、少年に言った。

「お前が一生、ここで暮らすと言うなら、それも良かろうて。だが、お前はそう遠くないうちに街を出るかもしれん」

エンリケはぴたりと修理の手を止めた。

「……どういう意味ですか、それって」

マスターは新聞の上から鋭い目線をエンリケに寄こす。

「あやつ――アイリンと同じく、ギルドから密命を受けた魔導師は他にもおる。その選ばれる条件じゃ。わしもつい先日知ったことじゃが」

「……教えてください」

「まあ、例の組織とは無関係だとか、強いとか、大前提の条件と、もう一つ。弟子がおらねばならん」

マスターは言うと、再び新聞の陰になった。エンリケは首をかしげる。いまいちぴんと来ていないと見て、マスターはぼそっとつぶやいた。

「万が一の保険じゃの。確かに、もう一度候補者を探すのは骨が折れる作業じゃ」

ここまで言われて、エンリケの顔にも理解の色が浮かんだ。しかし、それと同時に彼は怒り出した。

「まるでそれじゃあ、死ぬ前提じゃないですか!師匠を誰だと思ってるんだ。あの人が、そう簡単に任務に失敗するものか!それに、弟子だからって優秀だと思うなよ!僕に期待されたって何も返せやしないぞ!」

自分で言って悔しくなったのか、エンリケはやけくそに魔法道具を修理し始めた。マスターはやれやれと思いながら、言葉を続ける。

「可能性の話じゃ。要は自覚を持てという話にすぎん。……ほれ、手元が雑になっておる」

 エンリケの脳裏には、アイリンが残していったあの文書が巡っていた。あのダニエル・アンフォッシという魔導師……。彼も、アイリンと同じく組織について調べていたのだろう。そして、どういう経緯でか、命を落とした……。

 エンリケは寒気を感じていた。アイリンは当代最高の魔導師の一人だ。死ぬことなどありえない。彼女はすぐに帰って来る。何を心配することがあろうか……。

 その日エンリケは二十個もの魔法道具を修理した。


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