表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
兄弟 Day's   作者: 着津
6/24

(6) 在りし日

今回は過去編です!仕様が他のとちょっと違います。

「うぅ~」

「じゅん、我が儘言わないの!」

「母さーん、ちょっとくらい良くない?」

「良くないっ!ゆうすけは黙ってなさい!」

 とある街のスーパーで、家族三人、買い物をしている。母、俺、弟のじゅん。父は海外赴任から、今日の夜帰ってくる。その準備のための買い物をしていて、弟が自分の欲しい物をねだって怒られている。が、いつもなら直ぐに謝る良い子なのに、今日は全く折れる気がしない。

 初めは珍しいな、位の感想だったけれど、あまりに粘るので助け船を出してみた。見事に母に鎮められたけれど。

「もうっ…!今日は忙しいから我が儘言わないでよ~」

 母まで泣きそうになっている。普段は優しい人なのだが、今日はお帰りパーティを開くので準備に時間がかかる。あまり買い物で時間をつぶすわけにはいかないので、母も切羽詰まっているのだろう。

「母さん、じゅん、おれが見てるから。他の買いに行ったら?」

 母は渋っていたが、結局は溜息を吐ついて頷いた。

「じゅん、何でそれ欲しいの?」

 母がいなくなったあと訊いてみる。弟は大きめの、家族四人が乗った、キャラクター物のおもちゃの車を持ち続けている。

「みんな、いっしょ」

 それだけ言って黙ってしまう。みんな、いっしょ?…ああ。

「おれら(家族)みたいってこと?」

 こくりと頷く弟。でも、それだけじゃ無いとばかりに目で訴えてくる。

「ん~?…分からない。けど、大事(?)なんだろ?」

 またこくり。

「じゃ、兄ちゃんが買う」

「!?」

 じゅんは『びっくり』と言うのがぴったりな表情になる。その車のおもちゃは小学生の俺にはキツい値段だけれど、まぁ、買えないわけじゃ無い。

「いいの?」

「おう」

「ありがとう、ゆーにいちゃ」

 弟は花が咲くように笑った。

 この瞬間に、俺のブラコンの気けが出始めたのかもしれない。

 このときの弟はもう、言葉にならないほど可愛かった。

 その日の夜。弟は食事を終えた父と母に、俺が買ってやった車を突きだした。

「みんな、いっしょ。ぱぱもままも、いっしょ。ひとりじゃない」

 いつもはあまり喋らない弟の言葉は、拙い。だけど、俺はやっと、じゅんがそれを欲しがった理由が分かった。

「それって、父さんか母さんがまたかいがいふにんしても、寂しくないようにってことか?じゅん」

 俺の言葉にじゅんが嬉しそうにこくりと頷く。父も母もそれ(弟の笑顔)に釘付けだ。

「うう~、ごめん~、じゅんちゃん!あのとき怒ったりして~」

 母が涙目でじゅんを抱きしめる。じゅんも、照れているのかすぐには反応を返せていないけど、嫌がっては居ない。

 一番感動しているのは父のようだ。

「じゅん!お前って奴は…!」

 そう言って母ごと抱きしめる。

 それ、俺が買ったんだけど!?

 …ああ、もう、俺も混ぜてよ!

 その中に俺も飛び込んだのだった。


「ってな事あったの覚えてる?」

 古びたおもちゃの車を弄いじって兄が言う。忘れたことは無い。というか、忘れられるわけが無い。何故なぜならその車は親が何処どこかに赴任するたびに、親の赴任先まで持って行かれ、帰ってくると俺の目に付く所に置かれたからだ。今思い出すと無性に恥ずかしくて、この年ではもうあんな事は出来ないけど。良い思い出だ。

「てな訳でさ」

「……」

 嫌な予感がする。

「久々に『おにいちゃん』てよん…」

「嫌だ」

「即拒否!?あ~、俺傷ついた…。どうしよう、弟が反抗期!」

 このテンションにはついて行けない。

「兄さん」

「はいはい、メシな」

 あの日みたいな気持ちになったら、言うかも知れないけど。


読んでいただきありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ