(4) とある公園にて
今回は弟です。
小学校が終わった帰り、いつもの公園に寄る。同じように寄り道をしている小学生が遊び回っている中で、俺はそれを尻目にベンチに腰掛けて本を出した。子供向けの伝記だ。
やーいだの、わーだのと騒ぐ子供の声を聞きながら、ゆっくりと本を読み進めていく。俺にとっては周りの子供と遊ぶよりも本を読むことが楽しい。
「おーい、お前も混ざらねぇ?」
声を掛けられても気づかない位には。
「おいってばぁ!」
周りの騒がしさは嫌いでは無いけれど、本を読んだりして何かに集中していると、周りの音が全て一歩引いて聞こえる。だから、いつも話しかけられても返事をするのが遅れる。
「…な」
「もういいよ!コイツつまんねぇ!」
「に…」
何、と言いかけて、それを遮って相手は去って行った。少し変な気持ちになっても、それが何なのか、はっきりする前に萎んでいく。結局、分からない事を考えようと思う間もなく、本に目を落とした。今は目の前の、興味を引く物が大事だった。
久しぶりに、よく小学生の頃に遊びに来た公園を見て、たわいも無い思い出を振り返る。
あの後から、段々と、でも急速に、誰からも話しかけられなくなっていった。それでもあまり苦しくなかったのは、自分の性格と、他に興味を引く物があったこと、それから、兄のおかげだろう。
今更だが、そう思う。
公園の、昔、良く座っていたベンチに腰掛けて思い出す。
あの頃、誰からも話しかけられなくなり、必要が無ければ自分から話しかけなくもなった頃だ。たいして気にしていなかったが孤立していて、それでもこのベンチに座って周りの子供が騒ぐ声をBGMに、本を読んでいた。
『おー、じゅん、ここに居たのか』
兄に話しかけられて顔を上げる。もう中学生に上がった兄は、珍しく早く帰ってきたようだ。
何か用があるのだろうか。
『ん~、久々に来たけど、ここは変わんねぇな。…にしてもじゅん、お前、いつもここにいんの?』
俺は首を傾げた。どうしてそんなことを訊かれるのか、そしてその問いの答えが無かったからだ。
『お前、みんなと遊んでるわけじゃ無いみたいだし。何?もしかして、みんなと居るの好きなの?』
俺はこの問いにも答えられなかった。
何時までも考え込む俺に、兄は慌てたように、あんまり気にするなと言って居た。
あのときの答えを、ずっと考えてきた。そして今、ベンチに座って誰かも知らない子供達の声を聞いて思う。
きっと好きだった。いや、今も好きなのだろう。特に、言葉としてでは無く、声が、自分の周りにあふれていることが。だから、嫌われていると分かっていても、人の中にいることを選んでいた。
…だからといって、集団で行動したり、みんなと一緒に騒ぐことは得意じゃ無かったけれど。どうしても一歩引いてしまうし、『友達』を作ろうとは思わないけれど。
それでも、きっと嫌いでは無いんだ。
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