(20) 星降る夜
幼い頃のお話。
一面の夜空に無数の点が散っている。普段は見ることの無いそれに圧倒され、〈そして感動していた。
両親は今回の最大の目的である『二人でラブラブ星空デート♡』とやらに出掛けている。今部屋にいるのは兄と自分だけだ。兄はすでに寝ているのか静かだ。正直、星空でいっぱいで兄のことは余り気にならない。
窓越しに広がるそれは、無機質な家々や無遠慮に張り巡らされた電線に囲まれて、霞んで見える都会の空とは違い、包み込むように、でも遠くに広がっている。
不思議だな。どうして遠くで光っているのに、近くにあるように見えるんだろう。
ただ、漠然と見上げていた。
ふと視界に影が落ちる。見上げた先には兄が居た。手には湯気の立つ湯飲みを持っている。
「山に来ると星が綺麗だなぁ。・・・星見るの好きなのか?」
兄の言葉に、好きだろうかと考える。多分好きなんだろうな。頷いて答える。嫌いでは無い。兄から湯飲みを受け取った。
「夏って言っても、夜は涼しいな。なぁ、外行ってみないか?」
兄の言葉に、こくこくと首を振る。
「お、乗りが良いな。父さんたちのとこまで行くか」
兄の突発的な発想で、俺たちは両親の所まで探しに行くことになった。
さくさくと下草を踏んで夜の小道を行く。月明かりに照らされた立て札が目に入った。「恋人の小道 あと m」と書かれている。両親はきっとそこに居るのだろう。
月明かりだけの道は、小さな段差や障害物が多くて、小柄な体ではすぐに転びそうになる。見かねた兄が服の裾を掴ませてくれた。
まだ小学生になったばかりの俺に合わせてゆっくり進んでいく道は、他に誰も居ないけれど、そんなに怖くは無かった。
長いようで短い冒険の時間はすぐに終わり、拓けた場所に出る。
「父さん、母さん!」
兄が駆けだし、引っ張られるまま付いて行く。
「え、あれ・・・」
「あらら。良く来れたわね」
困惑、と言うよりは呆れ気味の両親に迎えられる。
「寂しくなったか?」
「冒険したくなったのよね?」
いろいろな意味で正反対のことを言う両親だ。兄は笑うだけだが、俺がこくりとどちらにでも無く頷くと、父に頭を撫でられた。
「みんなで見るのも良いか」
「ふふ。そうね。家族で『恋人』って事で」
笑う両親の間に、兄と二人で座らせられた。元々二人がけのベンチだから、少しきつい。
家族四人で自然と夜空を見上げると、まるで待っていたかの様に、無数の星が流れ落ち始めた。
「流星群だ」
父の言葉に頷き、ただじっとその光景を見上げていた。
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