(18) バレンタイン.2015
バレンタインスペシャル!遅れました。ごめんなさい。
「じゅんちゃ~ん」
反射的に兄を睨むが、兄の緩んだ顔はびくともしなかった。
「今日、何の日か知ってる?ね、知ってる?」
知っているし、そんな物欲しそうな目で見てきたって何もやらん。兄はただでさえお菓子好きでいつもどこかで菓子を隠れて食べているだろうに、その上、今日はバレンタインだ。彼女さんからも、その他の女性からもたくさんチョコレートやそれに準じたものをもらうんだろう。俺から何かあげなくても十分じゃ無いか。
ああ、まだ何か言っている。うるさいしやかましい。こんな日は早く学校に逃げてしまおう。
「行ってきます」
聞こえていないだろうか、と思ったが、兄はちゃんと聞いていた。
「いってらっしゃ~い」
学校に着くまでも、着いてからも浮き立った雰囲気だ。この空気から逃げ出したい。席に着いて本を出す。今日はいつも以上に本の内容に引っ張られていった。
授業を受け、本を読み、友人に軽く話しかけられていたら、もう放課後になっていた。高校生はこれからが本番とばかりに、クラスの、否、学校中の雰囲気が盛り上がっている。何か用事があるらしい友人を置いて、俺は逃げ出すように学校を後にした。
「・・・・・・」
家に帰って、静けさに一息つく。兄はきっと彼女さんと夕飯を食べるだろうから、遅くなるだろうな。
時間が空いたので予習復習をした。俺が通う高校は明日、バレンタインの直後から定期試験が始まる。友人曰く、この定期試験の結果で成功したヤツと失敗したヤツが分かる、らしい。鬼畜だ、とも言っていた。
勉強の合間にメールが来た。兄からだ。
〈今日はあずさと食べるから、〉
ああ、やっぱり。
〈三人分夕メシよろしく!〉
こう来るか。最近何となく感じていたが、兄は俺を優先しすぎじゃ無いだろうか?彼女さんはいい人だけど、こういう日くらいは二人きりでいたいものじゃ無いのだろうか。
兄に主張すると、もう昼に満喫したから問題ない、と返ってきた。もう、俺は知らない。
了解と返してため息を吐く。こうなったら兄は譲らないだろう。
それからしばらくして、夕飯を作り終えた頃に兄が彼女さんを連れて帰ってきた。
「こんばんは。お邪魔します」
「ただいま~。じゅんちゃん」
ちゃんはいらん。
「どうぞ。お久し振りです」
「うん。久し振り、じゅんくん。すこし背が伸びた?」
「おーい。俺は~?」
「・・・お帰り。良く分かりません、自分のことは」
「じゅんが冷たい!」
「ふふふ。相変わらず仲良いね。さ、ゆうすけ、上がろうよ?」
静かだった家が一気に騒がしくなった。こういうのは悪くない。
読んでいただきありがとうございます!
ホワイトデーは忘れないようにしたいです。




