(17) 青空ジイさん
ここまでが短編で掲載していたモノです。
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今日は大学生にもなったというのに、教授のジイさんと数人の受講生で遠足になった。この青空の下で弟の弁当を広げたら完璧なのになぁ。
しかし、現実はそう甘くないのである。
と思ったが甘かった。いや、現実が甘くない(弟の弁当が無い)のは確かだが、俺的にはおもしろいことになったのだ。
「ほれ、お前ひゃえさんら、ここで好しゅきにしてええぞぉ」
最早、訛りと言うよりもただ発音が心許ない事になっている。ジイさんはそんなことを言って、率先して芝生の上に寝転がった。これのどこが大学の授業だと思うだろう。事実、俺でも違うだろ、と突っ込める。
「お、お前ひゃえさんは自習かえ?」
「は、はい!」
俺から見える位置に座っている女の子にジイさんが話しかけている。いつの間に移動したんだ?女の子もいきなりすぎて驚いてるよ。
「ほ、ほ~。ええ子じゃのぉ」
「え、はぁ」
戸惑う真面目そうなその子を一言褒めると、何故か俺の方に来た。
「お前ひゃえさんは何をするのかえ?」
「ん~、何しようか考えているところ、です。ジ・・・教授は?」
おっと危ない。敬語なんて使い慣れてないから、咄嗟に出てこない。親しみやすいから、つい心のあだ名で呼びそうになる。
「ジイさんでええよ。この時間はの」
まじか!印象以上の親しみやすさだ。
「わしはぁ・・・。何しようかの?」
「え・・・?俺に訊くんすか・・・」
こんな教師おとな初めてだ。真剣にジイさんになんて答えようか悩む。
それから、俺はジイさんと授業らしい授業もせず、ひたすらボケボケな話をしてその日の講義を終えた。
「いや~今日の講義さぁ・・・」
早速、友人知人にジイさんの事を話すと、意外と多くの情報が集まった。
まず、年齢不詳だと言うこと。見かけも、言葉遣いも時代がかっているからなぁ。
次に、大学でも有名な変人だと言うこと。くびにしようという動きもあったらしいが、一部のジイさんに更正された生徒の猛反発に遭い、ジイさんが自分の意思でやめない限りやめさせない、と公約したらしい。大学側が。
他にもいくつかあったが、一番印象に残ったのが、ジイさんの講義を受けた生徒は、皆、愛情を込めてジイさんをこう呼ぶらしい。
『青空ジイさん』と。
その理由は、次の講義で分かった。その日は一日中雨で、遠足(?)はどうなるだろうと思っていた。が、すぐに無いことが分かった。
講義室のジイさんは、明らかにテンションが低かった。というか、普通の教授だった。口調は変わらないが、外に出ることはなく、淡々と講義を進めていった。
講義の最後に自分で言っていたが、ジイさんは雨の日がおかしいらしい。
ジイさんはおもしろいと改めて思った。
これがジイさんこと、谷田部教授との出会いだ。
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