(11) どっきり企画 そのに
包丁を鼻歌に合わせて動かしながら、弟君とのやり取りを思い出す。ゆうすけとは違い、必要最低限の事しか書かれていないメールは、初め、取っつきにくい印象だった。でも、突然のサプライズの申し出に了承してくれたり、ゆうすけにばれないような計画を立ててくれたりと、案外親身になってくれて、すぐに初めの印象は消えた。
ゆうすけは、一般的に「ちゃらい」と思う。でも、弟君は「まじめ」なのだろう。ゆうすけから、弟君は口下手でそんな所も可愛いと少し嫉妬してしまうようなことも聞かされていたけれど、何だか私も好きになれそうだ。…それにしても、正反対な兄弟だなぁ。
切り終わった材料をまな板から皿に移す。今日、この家で作るのは、ゆうすけが好きな一皿だけ。他は自分の家で、温めるだけで食べられるように作ってきた。
火を付ける前に時計を確認する。あと一時間で二人が帰ってくる。弟君と会うのが楽しみだな。
フライパンを火に掛ける。弟君の許可を貰って使っているこの台所は、良く使い込まれている。弟君が料理を作っているそうだから、几帳面さがあるのも何だかしっくりくる。ゆうすけはきっとこうはいかない。…まだ直接会ったことも無いのに、初めて会う気がしないなぁ。
味を調えた料理を、フライパンに入れたまま蓋をする。さぁ、そろそろ他の料理を温めよう。
一品目を温め終えたところで足音が賑やかに響いた。それは直ぐに居間にきて、元気よく扉が開かれた。
「たっだいまー、て、誰も居ないんだけど…は!?」
「お帰り、ゆうすけ」
台所から顔を出して声を掛ける。ゆうすけは私を見ると、滅多に無い驚き顔で固まった。その後、堰を切ったように叫び出す。
「え?なんで?え!?」
「兄さん、うるさい」
ゆうすけの後ろから、弟君らしい人が顔を出す。目が合った。思わず笑ってしまった。どっきり大成功!
「何で!?なんであずさがいんの!??」
「ふふふ。いつも驚かされてるから、サプライズ。大成功!」
「え?え!?」
「取り敢えず、服」
「お、おう?」
弟君に連れられてゆうすけは出て行った。あんなに驚くなんて。残りの料理を温めてテーブルにのせていく。最後に特大ケーキを真ん中に。
ケーキを作る余裕は無かったからお店で買った。ありふれたホールケーキにありふれたチョコレートのプレート。プレートには勿論、ありふれたペインティングが施されている。
これを見たらゆうすけはどんな顔をするだろう。想像するだけでもわくわくしてくる。
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