(1) 弟からの兄
こんにちは、初めまして。短編から連載に載せ替えました。
「おーぅい、弟よ。メシまだ?」
何ともだらしない声に手を止め、振り返る。視界に入るのは大学に入ってから髪を染め出した兄だった。丁度帰って来たばかりらしく、手には鞄を持っている。確か今日は彼女とデートで、帰りは遅くなると聞いていたのだが。聞き間違えたのか。
「おい~、『お帰り、お兄ちゃん(ハート)』くらい言えよ~」
嫌だ。
途中で料理を止やめる訳にもいかないので、兄を無視して作業を続ける。包丁で具材を切る感触が心地良い。リズミカルならなお良し。しかし、兄はそんな気分をぶち壊してくれる。
「なぁ、片手間で良いから聞いてくれよ。今日、彼女とデートって言ったろ?……」
ああ、聞き間違いでは無かったようだ。そして嫌な予想が出来る。これは今までの兄の行動からして、絶対に外れないだろう。
「……待ち合わせ場所に行ったら、彼女の他に二人見知った奴が居んの。で、『何、お前ら待ち合わせ?』って言ったら、『そーよ、あんたとよ!!』って三人同時にボディブロー喰らって。痛ぇの何の。事情を聞いたら、ってか一方的に聞かされてたら、どーも違う日に同じ日、同じ場所で待ち合わせしたらしく。彼女と女友達とでブッキング。彼女には『女友達と彼女、同じ日に約束する!?』と殴られ、他、二人には『彼女居るなんて聞いてない!!』と殴られ。いや~、さんざんな目に遭ったわ~。……」
あんた最悪。見事予感的中じゃないか。
荷物を投げ出し、ソファに座って語りかけて来る兄の話を聞きつつ料理を進める。
「……んでな。合計六発喰らった俺には見向きもせず、何故か女同士で意気投合しちゃってな、彼女にもフられるし。俺寂しいわ~」
同情はしない。
それにしても、女性って強いな。兄に彼女なんて勿体ないだろう。
最後の仕上げを済ませ、兄に声を掛けようとした所で、電子音が鳴り響いた。
「お、おれだ。ワリ」
一方的に言い置いて出て行かれ、言いかけた言葉を飲み込んで、少し何とも言えない気持ちになる。こういうとき、兄はきっと……
「なんか、彼女がやっぱやり直したいってさ。いや~、俺今幸せ」
あそ。
やっぱりなぁ。何故か兄はこうして彼女から振られないことがある。このまま、もう一度食事に行くのだろう。なら、料理が少し余ってしまう。どうしようか。
「ああ、悪い。そのまま三人で親睦を深めてくれ。俺今から弟とメシ食うから。ああ、また明日にでも。また後で」
……。
「と言うわけだ。メシ、食おうぜ」
……。
きっと、こういう所がもてるのだろう、兄は。
結局そのまま、二人で夕飯を食べたのだった。
読んでいただきありがとうございます!
ついに連載にまとめ直すことにしました。短編からの方にはしばらくつまらないと思いますが、四月には新しい話も載せ始める予定です。
今回初めて読んでくださった方、今後もよろしくお願いします!




