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ラ・カンパネラ  作者: Opus
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ガニエール家の終戦 Opus 3

「ガニエール家に遺された二人の少女は、三つか四つ歳が違ったでしょう。お二人が会った菩提樹のある家は人に貸し、ガニエール氏の妻と孫娘たちは、戦後はストラスブールの郊外で暮らしていると聞いていましたが? あの二人は姉妹のように育ち、共に音楽家として成長し、若い頃は、ヴァイオリンとピアノのデュオ・コンサートを何度かこの街でも開きました。お二人が探しているガニエール氏の孫娘は、母親やドイツ人の父親に似た、ブロンドの髪の女性ですから、きっと会えば、直ぐにわかるでしょう」

 ハンスの娘は、祖父が自殺するきっかけになった嫌疑を語ったという、ユダヤ人の娘と戦後も一緒に暮らしていたのだ。ボスニアで過ごして、戦争にまつわる話には、慣れていたつもりだが、それでも驚かずにはいられなかった。

「いかがでした。これでよろしいでしょうか。こんな話をしてよかったのかと、今の私は考えています。お二人は、これから、もう一度、菩提樹のある家に行くのですね」

 ド・シャルメの額から、さっきまで見えた眉間の縦皺がなくなっていた。

「宝石を届けるのが、私たちに頼んだ人の遺志だから」

 短く、俺は自分の決意を語った。

 ホテルを出たら、その足で、菩提樹の家に行き、ハンスの願いを果たすつもりでいた。だが、その前にド・シャルメに尋ねておきたい事があった。

「ド・シャルメ。どうしてガニエールさんは、ガンダーというアルザス語名を用いなかったのでしょうか?」

 昨日の話では、ド・シャルメはガンダーをアルザス語名だと教えてくれた。ドイツ語でもガンダーと呼ぶようだが、自治主義者であったガニエール氏なら、フランス語名のガニエールより、アルザス語名を用いるべきではなかったのか?

「ガニエール一族は、フランス革命の頃に、ロアン氏の法律顧問としてパリから招かれたのです。もう何代にも渡ってストラスブールで暮らしていますが、フランス語起源の名までは捨てられなかったのでしょう。ただ、ナチスの占領下にあったとき、ガニエール氏が自分の名前をどのように呼ばせていたのかは、私も良く知らないのです」

 占領中は、ガンダー姓を使っていたのだろうか? 名前はアイデンティティの一つだと聞かされたが、ここにも歴史が横たわっている。フランス、ドイツ、そしてアルザス。ド・シャルメの話を聞いていると、アルザスがフランスの一地方ではなく、一つの国のように膨らんでいく。

「ガニエール氏の孫娘に会いに行くお二人に私から伝える言葉は、真面目や勤勉とか、時にはフレンドリーとまで言われることがあるアルザス人ですが、アルザス人はなかなか心を許さないことがあるのを忘れないでください。それと、誰も失われた過去を取り戻すことも、時の仲裁者にもなれないのを……」

 何か言葉に秘められた意味があるのだと畏れながら、ド・シャルメの言葉を心に刻んだ。


先日、職場の花壇の整備をしていたら、真っ黒な肌の小柄な女性が、道を迷っている様子で歩いていました。Can I help you! と声をかけたら、日本語は挨拶程度で、レストハウスの場所がわからなくなった日本滞在3年目のザンビアの少女でした。愛らしい眼差しの彼女との話しでは、日本に来ているのに、日本人の友人はいないといい、日常会話は英語で話しているそうです。

Wikipediaによれば、2014年に在日ザンビア人の数は158人。彼女もその中の一人、日本でいろんな想い出を得て欲しいと思いました。


この小説をこちらに載せてから二年、次は、11月27日(日)になります。また、読んでください♫ 

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