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ラ・カンパネラ  作者: Opus
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もう一つの名前 Opus 3

 何処へ行くあてもなく、ストラスブールの旧市街であるGrand-Ileを歩き始めた。

 グーテンベルクのブロンズ像が飾られたグーテンベルク広場に、ルイ十五世麾下の将軍ブロイが整備したブロイ広場と、ストラスブールの街の中には大きな広場がいくつかある。

 Grand-Ileの中心に、フランスを代表する立派なカテドラルがあるのに、今朝、前を歩いたサン・トーマ教会堂の他にも、十二世紀に建てられたサン・テティエンヌ聖堂やサン・ピエール・ル・ヴィユー聖堂にサン・ピエル・ル・ジューヌ聖堂といった宗教施設が点在していた。

 サン・トーマ教会堂と同じように、パイプオルガンで名高い、サン・ピエル・ル・ジューヌ聖堂に入ると、たまたま慈善演奏会を行っていた。

 バッハのオルガン曲をいくつか聴き、気持ちよい気分で外に出たら、「ピアノを弾いていないな……」と陽子が呟いた。

 教会の中では、何となくお互いにマリアや指輪の話は避けていたのだが、この時は、学生時代のことをレッスンを浮かべることなく、ハンスの店のピアノを思い出し、マリア・ガンダー捜しという現実に戻された気がした。

 大聖堂に面した所にある、ロアン邸館という十八世紀の建物を訪れた。ヴェルサイユ宮殿に似た、豪華な続き部屋が繋がったロココ様式の観光名所だ。

 フランスの王家とも繋がるロアン家は、ストラスブールの領主でもあり、大司教や、バチカンの枢機卿を輩出した名家だ。

 何よりも、フランス革命の頃のロアン家の当主は、王妃マリー・アントワネットの偽者が登場する《首飾り事件》で騙された、世界史の教科書にも載っている枢機卿でもあった。

 一通り、街を歩き、Grand-Ileを楽しみ、ホテルに帰った。

「お二人が、沈んでおられたので、父が気にしていました」と、鍵を受け取る時に支配人が話し掛けてきた。

「明日に出発される予定だと話したら、明日は午前中も、ホテルにいると伝えてくれと言われています。もし、父に話があるなら、どうぞ仰ってください」

 俺たちの人捜しが上手く行っていないのを知っているために、ド・シャルメは心配してくれているのだろう。何か相談するにしても、マリア・ガンダーについては、未だ何と言って新しい情報がない状態だ。明日、警察に行くか、戦前からやっているような弁護士事務所を尋ね、マリアの父親についての情報を集める他に、手はないのだろう。

 いや、ガンダー姓の人に電話を掛けるのは、まだやっていない。夕食後に、電話帳のコピーをしてもらって、試してみようか?


先週、親しくしていた友が突然逝ってしまったため、少し立ち直れなく昨日の掲載が遅れました。

一期一会の大切さをひしひしと感じています。


文字の一つまで、愛情を込められたら、どんなに幸せなのでしょうか。

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