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ラ・カンパネラ  作者: Opus
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尋ね人 Opus 7

一話、書き加えました。

 しかし、どうやってマリアを捜すかだ。今の方法で、むやみに続けていては、明日も一日が無駄になりそうだ。

 カイザースブルクを出るときは、四日間、ストラスブールに滞在する予定のため、時間はたっぷりあると思っていたが、もう二日が過ぎた。残りがたった二日だと考えると、あっという間に終わりそうで、焦ってしまう。

 俺は、ハンスの話を、何も見落としていないか考えた。


・ガンダーという名前。

・ガンダー家が、戦前まではこの地で代々法律家だった。

・ガンダー家は、カテドラルから市庁舎に向かって二分も歩けばある。

・娘のマリアが五十六歳。

・幼い時の怪我の痕がマリアの耳にある。


 ハンスが教えてくれたのは、この五つだ。

 カテドラルから市庁舎までは、直線で三百メートル以内。通りは三本で、サングリア通りは、探し終えた。俺たちが歩いている道は、間違っていないはずだ。

 じゃあ、どうして誰も知らないのか? せめて、住所だけでもわかれば……?

 あっ……! ハンスは「何度も手紙を送ったが返事がなかった」と話していた。

 でも、陽子が出掛けるときに手紙を送った住所を尋ねたら「住所は《Strasborg Grand-Ile》で届くから、参考にはならん」と話していた。

 とにかく電話を掛けて、もう少し詳しくハンスに訊いてみよう。カイザースブルクを出る時に、ハンスの電話番号を陽子が控えたはずだ。陽子が起きたら、ハンスに電話をしてみればいい。

 俺はさっぱりしたくなり、バスタブに熱い湯を溜めた。陽子が気持ち良さそうに寝ているのを確かめ、風呂につかった。

 髭を剃るため、自分の顔を見た。二ヶ月前にウィーンで床屋に行ったきり、伸びたままの髪の毛を、そろそろ切りたい。

 一昨日、陽子と出会ってからを思い出した。もし、陽子がカイザースブルクに来なければ、どうしたのだろう。

 金が必要になれば、どうしようもなく、もう一度サラエボに戻って、藪木の仕事を手伝ったに違いない。カメラマンの藪木は「困ったら、戻って来な!」と別れ際に、優しく声を掛けてくれたが、サラエボでの仕事は、もう直ぐ終わりのはずだ。

 コソボの紛争も収まり、やがて平和が訪れるだろう。そうすると、俺を雇うどころか、藪木もどこか他に仕事を求めて、出て行かなければならなくなる。そうしたら……。

 ほんの数日前まで、将来は「どうにかなるさ」としか考えずに暮らしていたのに、心配している自分が不思議でならない。

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