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ラ・カンパネラ  作者: Opus
41/96

指環 Opus 4

2月から、忙しくって、間が空きました。

また、書き始めますので、読んでください。

よろしくお願いします。

 バスは、ライン川に沿って進み、ドイツ側の国境の街ケールに着いた。

 ケール駅の前の、四車線の大きな道路に沿って三百メートルほど歩くと、橋が在る。ドイツとフランスというヨーロッパの両大国を跨ぐ、ユーロップ橋だ。

 俺はユーロップ橋を見て、思わず「フー」と溜息をついた。

「これがユーロップ橋だったんだ。もっと重厚な橋を想像していたのに」

 ユーロップ橋は、多摩川に架かる国道などでよくみる、ごくありふれた橋だった。きっと車で走っていたら、気がつかないのではないかと思わせるものだ。

「うふっ。渉は、ナポレオンも渡り、第二次大戦ではヒットラーも通った、石造りの橋でも想像していたんでしょう。私も、ヨーロッパの国境がどんなものか知っているつもりだったのに、期待しすぎていたみたい。だから、ここが国境だと考えると、気が抜けてしまう」

 陽子が言うようなフランス革命の頃から在った橋を、俺は想像していた。

「ああ、そんなやつ。馬鹿だった。橋は戦いの度に壊されるから、いつまでも在るわけないのに」

 俺たちは、歩く足が速くなった。

「渉、この橋は車が多いからか、よく揺れるのね」

 吊り橋でもないのに、大型車が通る度に揺れるような気がした。

「いざとなったら、簡単に爆破できるような構造に、なっているのかな?」

 俺は、冗談のつもりで話した。

「じゃあ、どこかに爆弾が仕掛けてあるとか?」

 冗談が通じなかったのか、本気で心配している陽子に笑った。

「まあ、今の時代に、そんなことはないよ」

 陽子を笑っておきながら、俺まで心配になり、なぜかフランスではなく、ドイツ側の橋の付け根に目をやった。

 ボーッと、汽笛が響いた。のんびりとした音だ。橋の下を《VAN GOGH》と書いた客船が走って行く。

「渉、ゴッホだって。下流は、オランダだから、ここまで遊覧船が来るのね」

 陽子は、上流へと向かう客船に、軽く手を振った。

「ゴッホか。ゴッホが、生前たった一枚の絵しか売れなかった画家だなんて、信じられないよね」

「絵が売れなくても描き続けるなんて、凄い自信。普通なら、辞めるわよね。私には無理だなあ。今はピアニストとしてやっているけど、いつまで続くのかと不安になる」

 優雅に見える音楽の世界だが、陽子のようにピアノだけで食べていくのは、かなり難しい。実際、アメリカではピアニストの名簿を、世界で最も高価な失業者名簿だと揶揄される。

 ピアノは、ヴァイオリンや、管楽器のようにオーケストラの中でやっていけるわけではない。陽子のように、コンサートだけで生きていける恵まれたピアニストは、ほんの一握りなのだ。

今週は、水曜日にN響のコンサート。

楽しみです。

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