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持ち合わせ持て余し

作者: 矢光翼
掲載日:2014/10/11

例えばの話で。

「もっと早めに託しておくべきだった」

そんな投げやりな言葉と共に俺は託された。

自分の、そして他人の、それに加えてその他の未来を見る能力を。


短いながらも今まで生きてきた俺にとってこの事象はあまりにも唐突だった。

ある日を境に俺の視界は一変した。

意識を集中するとその対象の未来が映る。まるでビデオを再生しているようで、視界の右端には必ず現時点からどれぐらい先の出来事なのかが記されている。

最初、訳がわからなかったが、その時見た自分の未来、「次の曲がり角から数人の小学生が現れるのを目撃する」を見事に見当てたので、信じないわけにはいかなかった。

謎のなにかにこれを受け継いで三日後、俺は夢でその謎と出逢った。


「やぁ」

「お、お前」

「どうだい?未来を見る気持ちは」

「・・・気持ちよくはねぇな」

「それは明るい未来を見てないからだ」

「明るい未来なんてわかるのかよ」

「わかるわけないさ未来は変わらないんだから。どんな未来を見るかなんて見る前に解るはずが無いだろう?」

「・・・色んな奴の未来を見た。この三日で」

「へぇ。まぁ勝手に見ちゃうだろ。私もそうだった」

「干渉はしてないけどな」

「あれ、人間ってのはそういう時真っ先に首を突っ込む生物じゃないのか?」

「お前今さらっと自分が人間じゃないって吐いたよな。まぁ別にいいや。それより聞きたいことが」

「でも勿体無いな」

「ある・・・あ?」

「思い知るべきだ。もっとしっかりと。未来はかけがえの無いものである半面、取り返しのつかないものなんだと」

「は?お前それってどうい」


ここで夢が覚めた。俺は謎に謎の言葉を残されたまま現実に引き戻された。

謎の言葉を思い出す。「未来はかけがえの無いものである半面、取り返しのつかないものなんだ」・・・?意味が解らない。取り返しのつかないものは過去なんじゃないのか?

疑問を反芻した後、学校へ向かう。

一つだけ誤算があったとすれば、俺は学校へ向かう最中に思い知るのだった。謎の言葉の真意を。


未来を見ている間、視界は変わるが元の視界が失われるわけではない。こればかりは説明が難しく、言葉にすることが出来ない。

強いていうなら、テレビを二枚重ねにしてその両方を見ている感じ。なので自分の未来を見ながらでも普通に歩くことはできた。

・・・見えた。数秒後、俺は信号にぶつかる。現時点では赤だが、俺が止まるとすぐに青に変わる。俺が観ている時点で俺はその青に気付かない。少ししてから進んでいた。数十秒後の未来。俺は信号を見据えていた。

一番役に立った瞬間かもしれない。

赤い信号の前に止まる。ふと、足に違和感を感じる。どうやら靴の下に石があるようだ。

足をどけてうつむく。それを後方に蹴飛ばす・・・あ、青だ。

不覚にも、見た通りになってしまった。しょうがない。偶然石を踏んでしまったのだ。

歩道を渡ったあと、もう一度自分の未来を見る。すると、曲がり角で同じ高校の知らない生徒とぶつかっている。双方ともに驚いている。しめた。これなら大丈夫だ。

俺は突き当りの前で止まる算段を立てた。

まぁここら辺で止まっておけば不審でもないだろう、と止まろうとした瞬間。

ドンッ

「あ、すみませんっ」

「えっ、あ、いやこちらこそごめんなさい」

見た通りになってしまった。一体どういうことだろう。俺はこの未来を回避するために、角の一歩手前で立ち止まろうとしたはずなのに。足が、勝手に進んでいた。

「・・・?」

歩き去る生徒の背中を見つめる。俺は、見えていたはずなのに・・・


歩きながら考えた結果、結論は出た。

「俺の未来はあくまで未来が見える上での未来だから変えられない」というものだ。

つまり、俺自身は自分の未来を変えることはできない。恐らくこの力は他人に使ってこそ真価を発揮するものなのだろう。

「よっ」

そこへちょうど良くクラスメイトが現れる。

「おはよう」

意識をそいつに傾ける。すると、俺を見ながら校門の前でスマホを落とすクラスメイトの姿。そうか、こういう時に使うのが正しいのか。

俺は今までの三日間、音沙汰ない未来しか見てこなかったからこういう事態をみることは無かった。単なる偶然だった。

「ながらスマホやるとスマホ落とすぞ」

「え?あぁありがと」

クラスメイトはスマホを仕舞った。これで、スマホが落ちる未来は無くなった訳だ。

なんとなく雑談を続け、校門が近づいてきた。

クラスメイトはスマホをすっかり忘れたかのように俺と話している。

あと数秒。未来は変わる。

「あ、すげぇいい雲!写真とっとこ」

クラスメイトがスマホを出した。

「!?」

パシャ

写真を撮ってから俺にそれを見せようとした時、クラスメイトの手からスマホが滑り落ちた。

「あ」

カッ、カタン

「やっちまった・・・ほんとに落ちちゃったよ」

・・・いやいやいや。待てよ。確かに雲は綺麗だったが、ここで撮るか・・・?

偶然にも、またもや未来を変えることは叶わなかった。


「私も最初は意気込んでいたがね。まぁ無理なんだよ。未来が見えたってこれからのことがわかったって、それを変える事は不可能だ・・・自己が存在を自認する限り、過去と現在と未来は徹頭徹尾変わらない。見えるだけで変えられない。それがその能力の特徴さ。あぁあ。未来は見えなくなったけど、未来のわからない視界っていうのは凄くいいね。先に楽しみが見出せる・・・。やっぱもっと早く託しておけばよかったな。次の『通告師』は君なんだ」


俺はこれから痛感する。

過去と未来は変えられない。変えられない二つに挟まれた現在もまた、変える隙すら見せてくれないのだと。

まぁそうそうない話です。

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