13.設定等の被りを指摘する事について思う事
なろうサイトで様々な小説を読んでいると、以前読んだ○○と何となく似ているなと感じた作品の一つや二つはあるのではないだろうか。そして、感想欄にて○○と設定が被っているとか、○○とストーリー展開が似ているといったように、設定等の被りを指摘するような書き込みがなされている事も見た事があるだろう。
だが、この様な指摘を行う事は見当違いな行為のように感じる。何故なら、そもそも創作活動とは設定A、設定Bといった素材から作品Cを作り出す事であり、同じ設定から別々の作品が生み出される所にこそ作者らの創造性が存在するからだ。仮に同じ設定、名称、似たようなストーリー展開を使う事がパクリだからダメだとするならば、全ての小説がダメとなってしまう事になるだろう。
※著作権法で保護されているのは「アイデア」ではなく「表現」である。当然の事だが、作品Cが表現として同一性が認められるレベルで似ていたらアウトである事は言うまでもない。
例えば設定が被ってはダメだと言い出したら、「ファンタジー」「恋愛」「歴史」「推理」等のジャンル的な大枠の設定から、「世界(異世界・地球世界・ゲーム世界)」「社会的な地位(貴族・平民・経営者・労働者)」「時代(現代・戦国時代)」「職業(冒険者・軍人・会社員・公務員・学生)」「文化・社会背景(欧風・和風・中華風)」等々ある程度細分化した設定であったとしても、必ず過去の作品と重なるのだから、被らないようにと考えると、何も書けなくなってしまう。
二次創作は、大枠の設定に留まらず、個別のキャラクターや世界設定と言う「表現」の範疇に含まれる物までパクっているので、当然許諾が必要となる。が、今回問題にしているのは表現の範疇に含まれない大枠の部分に焦点を当てている。
名称やストーリ展開も同じである。名称が重ならないようにと言い出したら、キャラクターはDQNネームか記号付き($太郎$ のようなもの)になるだろうし、固有名詞を持つような様々な物もへんてこりんな名前を付けざるを得なくなる。重複防止良にく用いられる記号類がついた名称だらけの、さながらネットゲームの様な状況になってしまうだろう。現実問題としてそんな事はやってられないので、小説が書けなくなる事は言うまでもない。
ストーリー展開が重ならないようにと言い出したら、キャラクターが行動を起こした段階で、ストーリー展開として何某か被ってしまうのだからこれまたアウトである。例えば、朝起きて、顔を洗って、朝食を食べて、家を出て、職場や学校に行く。と言ったように、ある程度社会生活を営む上での行動パターンが決まっている以上、ストーリーの展開を全く重ならないようにする事は不可能である。
故に、設定や名称、ストーリー展開の被りを気にする事には意味がないし、それを作者へ指摘する事もまた見当違いの話となる訳だ。単に同じ設定や名称、ストーリー展開等のアイデア部分は被っても全く問題ないし、良い物があるのなら、より積極的に取り入れるべきであるとすら言えるだろう。そして、それらの設定や名称、ストーリー展開を組み合わせて、どの様に新たな作品を創造しているのかこそが重要と言える。
○○と(大枠の)設定やキャラ名が同じとか、○○と(大枠の)設定が被っているからパクリじゃないかとか、酷いのになると皮肉混じりに○○が改題して再投稿したんじゃないかとか、○○の作者に許可を取ったのか等と勘違いも甚だしい事をわざわざ感想欄に書き込んだりする輩がいる事は極めて残念である。似たようなストーリーの作品や設定をパクった作品なんて許せないと独り善がりな正義感を発露させ、真っ当な指摘や批評をしてやったつもりなのかもしれないが、実際にやっている事は、全く意味のない不見識極まりない難癖付けである。
作者にとっては自分自身が考えて作り上げた作品だけに、感想欄でこの手の設定被りを指摘されると辛いものがあるだろうけれども、この手の不見識な批判は創作活動を行う上で付き物であるとの割り切りが必要だろう。そして、深刻に受け止めず、話半分ぐらいで受け流す位の心構えでいた方が精神衛生上も良いように思う。
ただ、繰り返しになるが、著作権法で保護されてるのは「アイデア」はなく「表現」である。当たり前の話だけれど、文章をコピー&ペーストしてパクるのは当然盗作となるし、そこまであからさまでなくとも文章表現が同一視できる程似ているのもアウトである。つまり、文章表現が似ていると言われた場合は、直ちにその作品と投稿された日付を確認して、自分の方が後に書いていたら書き直した方が良い事は言うまでもない。
判断の難しいのは、何処までがアイデアで、どこからが表現なのかであろう。例えばキャラクター設定の場合、性別や年齢、職業等、一つ一つの設定であれば、アイデアの範囲だろうが、キャラクターの身体的特徴や性格付け、能力等、設定の組み合わせを包括的に見た場合は表現の範疇となる。
上述したが、個々の設定A、設定Bは被っても問題はない。だが、それら要素を複雑に組み合わせた作品(世界観、キャラクター、ストーリー)Cが似ていると、表現が被っているのでアウトとなる。
作者に被りを指摘する場合、或いは読者から指摘された場合、問題とされる部分が「アイデア」なのか「表現」なのかを見分ける必要がある。




