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奴らは濃いグレーのスーツに身を包み、サングラスをかけていたり、帽子を深くかぶっていたりと、なかなかに怪しい格好をしていた。
数は全部で六人だった。対するこっちは五人、隠れている水萌は戦力にならないから実質四人だし、相手は大人の男性ばかり。
圧倒的にあたしたちの不利は否めない。
でも、こちらには地の利があるのだ。しかも、こちらの標的としては誰かひとりでいい。
入ってきた奴らは、明らかに慌てた様子で公園内を探していた。
あたしはその中の、やけにトロそうなひとりに目をつける。服装もそいつだけ紺色だったからわかりやすい。
ターゲットはあいつにしよう。
散り散りになったみんなとすれ違う際に、紺色をターゲット、と素早く伝えた。
そのひと言でも、充分に伝わるだろう。
やがて、あたしたちは水萌を探すフリをしながら、それぞれの持ち場へと身を隠す。
奴らは水萌の捜索に集中していて、こちらにまで気が回っていないはずだ。
あたしと土柳はそれぞれ別の下側の土管に、フーミンと地花ちゃんは上側の土管に入った。
「むっ? あいつら、どこに行った?」
男の声がすぐそばから聞こえた。
よし、今だ!
あたしはターゲットの男が滑り台の横を通った瞬間、土管の中から素早く右足を出し、そいつの足に引っかける。
「うあっ!?」
奴はものの見事に転倒した。
思ったとおりとはいえ、ほんとにトロい。水萌にも匹敵するトロさかもしれない。
「それっ、行くのだっ!」
「ごめんなさいなのでございますっ!」
倒れたそいつの上に、上側の土管からフーミンと地花ちゃんが飛び下りて乗っかる。
「ぐえっ!」
ふたりとも小柄とはいえ、さすがに落下する速度分も加わるとそれなりの衝撃になったようで、奴はうめき声を上げていた。
「うりゃっ!」
「観念しろ、この!」
土柳とあたしも素早く土管から飛び出し、そいつを押さえつける。
いくら大人の男性といっても、四人に取り押さえられている状態。
ターゲットの男は声を上げながら抵抗するも、あたしたちをはね退けることはできなかった。
心配なのは、残った奴らだ。
あいつらが全員集まってあたしたちをどうにかしようとすれば、きっと抵抗できずに捕まってしまう。
だからこれは、賭けだった。
そしてあたしたちは、賭けに勝った。
「くっ、俺はいいから散れっ!」
異変に気づいた奴らがこちらに向かってくるのを一喝したのは、押さえ込まれている当の本人だった。
一瞬躊躇するも、グレースーツの男たちは散り散りに公園から出ていく。
そして残った男は観念したのか、抵抗をやめてその場でぐったりと項垂れていた。
☆☆☆☆☆
「それで、これからどうするのだ?」
黙ったままあぐらをかいて座っている男を取り囲んで、あたしたちは相談していた。
隠れていた水萌も出てきて、一緒にその男を見下ろしている。
もう危険はないだろう、そう判断したのだ。
男は完全に観念したのか神妙にしてはいるものの、なんでもかんでもべらべらと喋ったりはしなかった。
「う~ん、さすがにこのままここにいるのも問題があるかな。奴らが戻ってくるかもしれないし」
「それはないけどな」
男は憮然とした態度で吐き捨てる。
さっきから、こっちの質問には答えないものの、向こうからこうして口を挟んできたりはしていた。
この男、歳は二十代前半くらいだろうか。
サングラスを外させると、結構キリッとしてカッコいい顔立ちをしていた。
「そうねぇ~、そろそろ暗くなってくるし、とりあえず私の家にでも行きましょう~。叔父さんも叔母さんも遅いはずだし~」
そう言って、水萌は率先して歩き出した。
でも、それはどうなの?
というか、見ず知らずの男を水萌の家に……?
そ……そんなのダメよ!
と、あたしは気が気ではなかったのだけど、当の本人は全然気にする素振りもなく、自分の案に満足げな様子で歩き出していた。
笑顔の水萌に、あたしが意見できるはずもない。
土柳兄妹もフーミンも、その男の腕をしっかりとつかんで逃げられないようにしながら、水萌のあとを黙って歩いていた。
ふと、地花ちゃんが訝しげな表情を浮かべているのに気づく。
「どうしたの? 地花ちゃん」
「……いえ、なんでもないのでございますよ」
そう言いながらも、地花ちゃんはやはり、なにか考え込んでいるようだった。




