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「本日、第二作戦を決行します!」
「はい?」
次の日の教室、朝のホームルーム前の時間。
あたしが高らかに宣言する声に、疑問符を返してくる面々。
それはそうだ。第二作戦というのを、まだ説明していないのだから。
あたしは昨晩、なかなか寝つけないあいだに、いろいろと考えていた。
警察に言ったところで、なにも被害が出ていない上に証拠もない現状では、そうそう信じてはもらえまい。
とすると、まずは奴らの目的を確かめるのが先決だろう。
とはいえ、どうやって確かめればいいのか。
じっくりと監視し続ける?
いやいや、そんなまどろっこしいこと、やっていられない。
そのあいだに精神がまいってしまうってものだ。
狙われている水萌本人はのほほんとしているから大丈夫だろうけど、心配するあたしの精神のほうがヤバい。
ここはいっちょ、奴らをとっ捕まえて直接聞いてしまえば手っ取り早い、そう考えたってわけ。
「熱希ちゃん、それは危険だよぉ~」
水萌がもっともな意見を述べる。
「うん、確かにそうなのだ。いくら熱希ちゃんが水萌ちゃんのためなら車だって持ち上げちゃうくらいだとしても、さすがに危ないのだ」
フーミン、それは言いすぎだよ。
いくらあたしだって、そこまでは。
……バイクくらいなら、いけるかもしれないけど。
「そうだぞ。沢湖さんを危険から護るためとはいえ、炎壁が危険にさらされるのは、さすがにちょっとマズいだろ」
おっ、土柳の奴、あたしのことまで心配してくれるんだ。へ~、珍しい。
「余計に事態がこじれそうだし」
余計なことをつけ加えた土柳には、脳天チョップをお見舞いしてやった。
「でも、だからこそ、こうしてみんなに相談してるんだよ。あたしひとりじゃどうにもならなくても、力を合わせればどうにかなるかもしれないでしょ?」
あたしは、ぐっとこぶしを握って力説する。
「そうねぇ~。みんなで協力して事件を解決~。それって、素晴らしいわぁ~」
水萌が乗り気になっている。
うんうん、思ったとおり。
最近水萌は少年探偵もののマンガにはまっていて、ちびっ子たちが協力して事件を解決するのをうっとりとした目で見ていたのをあたしは知っているのだ。
水萌が喜んでくれるなら、あたしはなんだってする。水萌が望むなら悪魔にだって魂を売るわ!
ふと見ると、フーミンがジト目であたしを見ていた。
なるほど、そういうことなのだね。そう瞳で語っているようだった。
相変わらず喋り方はおかしいのに、結構鋭い。
「ま、それにさ。危険な目に遭うとすれば、主に土柳だから。危険だと判断したら、あたしたちは土柳をおとりとして置いて逃げるしっ!」
「それはまあ、そのとおりなのだ」
「おいこら! なんだよ、それは!?」
あたしとフーミンの当然のごとき主張に、土柳はどういうわけだか慌てた声で反論してくる。
だけどほら、民主主義民主主義。
と、問答無用で主張を押し通そうと思ったのだけど。
「土柳くん、いつも迷惑かけてごめんねぇ~。でも、私たちにはあなたが必要なのよぉ~。お願いしますねぇ~」
にこぉ~っ。
満面の笑顔を咲かせながら、そんなことを言う水萌。
……あんたもなかなかやるわね……。
「迷惑だなんてとんでもない! 沢湖さん、僕に任せてくれていいよ!」
結果、真っ赤になって自ら泥沼にはまり込んでいく土柳だった。
☆☆☆☆☆
さて、具体的にどうするのかというと。
あたしたちは放課後、公園を訪れていた。
子供たちが喜びそうな、ブランコやら滑り台やら砂場やらジャングルジムやら、そんな遊具がいろいろとある、いわゆる児童公園だ。
こないだは、ここでベンチに座ってアイスを食べたっけ。
それはともかく、今はもう初夏。夕方近くになっているとはいえ、まだ日差しも強い。
公園で遊ぶ子供たちの姿もまばらだった。
そんな中で、あたしたちは、
「もういいか~い?」
「まぁ~だだよぉ~」
かくれんぼを始めた。
高校生にもなって、かくれんぼだぁ~!? 僕はイヤだぞ!? と駄々をこねる土柳もねじ伏せ、一緒にまざってもらっている。
公園に来る途中、偶然出会った地花ちゃんも強制連行……もとい、お姉ちゃんたちと一緒に遊べると喜んでついてきてくれた。
作戦としては、こうだ。
公園でかくれんぼを始めるあたしたち。
最初は普通に遊んでいるように見せかける。
でも、そのうち異変に気づいてあたしが言う。
「あれ? 水萌は?」
「あれれ? いないのだ」
そして水萌以外が一ヶ所に集まってから、大声で水萌の名前を呼んで彼女を探しているふりをする、というものだ。
公園の中央には、象さんをかたどった滑り台がある。
その胴体部分には、横から突き刺さるように土管が設置されていた。
真横から見ると、ふたつ並んだ土管の上に、もうひとつの土管が積み上げられている感じだ。
三つの土管は、ぱっと見、象の胴体を貫いて設置されているだけのように見える。
ところが、実は下側の土管の片方には、ちょうど真ん中辺りからさらに別の土管が垂直につながっていて、横穴が存在している。
水萌はそこに隠れていてもらうのだ。
外から土管をのぞき込んだとしても、よく見ないと横穴の存在には気づかない。
おそらく、この土管に実際に入って遊んだことのある人にしかわからないだろう。
あたしたちが必死に水萌を探していたら、奴らも慌てるはずだ。
本当に奴らが水萌の様子を隠れてうかがっているのであれば、水萌が突然いなくなったら、きっとなんらかの動きを見せるに違いない。
もし慌てている様子があれば、それだけでも水萌を隠れて見ていたという証拠になる。
公園内に入ってきて探し始めたりすれば、こちらの思うツボだ。
あたしたちは小さい頃からよくこの公園で遊んでいた。だから地の利はこちらにある。
複数いる奴らの全員を一網打尽、とはいかなくとも、みんなで協力すれば誰かひとりを捕まえるくらいなら可能だろう。
そう考えたのだ。
というわけで、ミッションスタート。
公園を取り囲むように何ヶ所かに分かれて身を潜め、こちらの様子をうかがっている怪しい奴らの存在を、あたしたちはすでに確認していた。
作戦が開始されるとすぐ、奴らはこちらの思惑どおり、慌て始めた。
ここからでは正確にはわからないけど、人数は五~六というところか。
どうやら公園の入り口前付近の物陰に集まり、なにか話しているようだ。
その動きを見て、あたしたちも一旦集合していた。
表向きは、「いた?」「ううん」といった感じで友人探しの報告をしているように装い、小声で作戦の伝達という本当の目的を果たす。
「奴らが公園に入ってきたら、頃合いを見計らって持ち場についてね」
「うん、わかったのだ」
「了解」
それだけ伝えると、あたしたちは再び水萌の名前を呼びながら公園内の各所に散っていく。
やがて、奴らが公園の中へと入ってきた。




