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スマイルプロジェクト ~その笑顔、国家機密につき~  作者: 沙φ亜竜
終章 笑顔は続くよどこまでも
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-1-

 すっ……。

 苦々しい表情をしている飛沫さんと、その横に寄り添う水季さんの目の前に――、

 水萌が、そっと立つ。


「お父さん、お母さん……」


 にこぉ~っ。

 水萌の表情は、これ以上ないくらいに優しい微笑みだった。


「……水萌、こんな私たちを、お父さんお母さんと呼んでくれるのか……?」

「当たり前だよぉ~。私のお父さんとお母さんは、ひとりずつしかいないんだから~」


 にこにこにこ。

 水萌ったら、両親に会えて本当に嬉しそう。


 水季さんは涙を流していた。それほど、水萌の言葉が嬉しかったのだろう。

 飛沫さんも一瞬その相好を崩す。

 だけど、すぐにもとの苦い表情に戻った。


「水萌……。すまない、まだ解除薬は完成していないんだ。本来ならば、完成するまで水萌の前に姿を見せるつもりはなかったのだが……」

「そんなの関係ないよぉ~。私は、お父さんお母さんと一緒にいたいの~」


 そう言って両親に抱きつく水萌。

 水萌に抱きつかれ、嬉しそうではあったけど、飛沫さんはそれでもそれを振り払うかのような言葉を続ける。


「しかしだな、私はお前をそんな体にしてしまった。親として失格なんだ。だからせめてもの罪滅ぼしとして、しっかりと解除薬を完成させる。それまでは、お前の親としての権利を持つ資格なんて……」


 そんな飛沫さんの寂しげな主張を、水萌は遮る。


「私は寂しかったわ~。このお守りをいつも握って、寂しいのを我慢していたのよ~?」


 水萌の手には、薄汚れた巾着袋が握られていた。

 いつも大切に持っていた、あの巾着袋だ。

 その口は開かれ、中からは袋と同様に薄汚れたお守りが、静かにその姿をさらしていた。


「私を逃がしてくれたとき、これを私たちだと思って持っているんだよって、そう言ったじゃない~。なんとなくだけど、覚えてるんだよ~? 罪滅ぼしなら~、これからはずっと一緒にいてほしいの~。お願い~」


 水萌は両手を顔の前で組んで懇願する。その目には、キラキラした輝きが溢れていた。


「……こんな私たちを、お前は許してくれるのか……?」

「許すもなにも~、今の私がこうして笑ったり泣いたりできるのは、お父さんお母さんのおかげだもの~。ほんとに、ありがとう~」


 笑顔のまま涙をボロボロと流し続ける水萌を、飛沫さんと水季さんは、ぎゅっと抱きしめた。


「今まで寂しい思いをさせてすまなかった」

「これからは、ずっと一緒よ」

「うん~!」


 水萌の明るい歓喜の声が、部屋の中に響き渡る。

 黙って成り行きを見守っていたあたしたちも、もらい涙で頬を濡らしていた。



 ☆☆☆☆☆



 氷室やその手下であるグレースーツの男たち、そして水鳥さんと白鷺さんも、ロープで縛られて黒いスーツの男たちに連行されていた。


「彼らは、どうなるんですか?」

「とりあえずは国のほうで拘留するだろう。拳銃の所持などもあったから絶対とは言えないけど、氷室以外はそれほど重い罪にはならないんじゃないかな。あまり遠くないうちに解放されると思うよ。その後どうするかは、彼ら次第といったところかな」

「でも、水鳥と白鷺ちゃんは、うちで引き取るつもりよ」


 あたしの問いに、飛沫さん水季さん夫妻が仲よく答えてくれた。


 すぐにというわけにはいかないけど、なるべく早めに新しい家を用意し、ふたりは水萌と一緒に住むつもりのようだ。

 その資金は国側に申請するらしい。

 地下に研究室を作り、そこで研究を続けるという名目で願い出れば、今回の働きもあるし認めてもらえるはずだ、そう飛沫さんは語った。


 あたしとしては、とても複雑だった。

 水萌が両親と一緒に住める。それは祝福すべきことだ。

 おめでとう、水萌。素直にそう言ってあげなければならない。


 でも……。


 水萌が引っ越してしまう。

 それはあたしには耐えられなかった。


 水萌のいない生活なんて、あたしには考えられない。

 涙目で訴えかけるあたしに、水萌の両親は優しい微笑みを向けてくれた。


「わかってるよ。水萌にとっても君の存在は特別だと思うからね。そんなふたりを引き裂くなんてことはしないさ」


 そう言って飛沫さんはウィンクしてくれた。


 それから一ヵ月後、夏休みが終わる頃には、急ピッチで建てられた水萌の新しい家が、あたしの家のすぐ隣にあった空き地に完成していた。


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