第一段階失敗。一言で、深い傷。
映画も終了し、部屋全体が明るくなった。
「ん~!面白かったぁ」
未来が背伸びをしながら言った。
「あぁ、そうだな」
(いやいや、お前の方が可愛かったよ♪的なこと言わせろよぉ……。つーか、今しかなくね?)
俊はそんなことを思いながらも、行動に移せなかった。
「俊ちゃん?どうしたの?」
ボケっとしてた俊に、未来が声を掛ける。雅紀や浩介のような性格だったら、流れでも「好きだ」というだろう。しかし、俊の性格上『流される』のだ。周りの行動に自分に合わせる。反抗もできず、ただ合わせる。喧嘩をしたくないからだと言えばカッコいいが、自分がないともいえる。
「ゴメン、行こうぜ」
「うん♪」
その点、未来には自分の意見を言う度胸がある。その差が俊には羨ましかった。今までの俊なら、羨ましがって終わりだったろう。だが、今の俊には『欲求』が強くあった。この『羨ましさ』の未来を手に入れたくなっていた。
「確か、終わったらゲーセンだったよな?」
「そだね。早く行こうよ、百合はもう行ってると思うしさ♪」
俊は軽く頷くとゲームセンターに歩いていった。俊は手を繋ぎたかったのだが、その勇気が出なかった。手を繋ぐことによって、『周りからの視線』で、未来が
『嫌な思い』をすることが嫌だった。
俊と未来が、その場に着いたとき、浩介と百合は笑顔で手を繋いでいた。
「あれ~?カップル成立?」
俊は浩介に尋ねた。浩介は若干照れ気味で、
「まぁな」
と言った。ニヤケ顔が少し不気味だ。
「百合、こんなヤツでいいの?」
未来が百合の腕をつつきながら言った。元々面倒見がいい未来にとって、百合は子供のような存在なのだろう。中学のロリコン共に好かれているほどだ。
「こんなヤツって……」
未来の言葉に、浩介はツッコミを入れる。
「こんなヤツだからいいの」
百合はテレも見せずに言った。今までに見せたことのないような自信まで見せた。
「で?俊は?」
「まだ」
浩介と俊は、百合と未来に聞こえない程度で話をした。
「それじゃぁ、カラオケ行くとしますかぁ」
浩介は3人に向っていった。俊のことを考えての行動だったのかもしれない。
「あれ?雅紀は?いいの」
「だって、遅いじゃん」
浩介は百合の手を引いて、出入り口に進んでいった。
「まっ、いっか。浩介の提案だし♪」
「私も、賛成」
俊は同感とうなずくと浩介にむかった。同様に、百合も。
「もぉ!私しらないよぉ」
「大丈夫♪」
不安気な未来に、俊がフォローをする。
(サンキュッ♪浩介。俺ってば、頑張っちゃうからねぇぇ♪)
俊は一人でそう考えながら歩いた。目の前には手を繋いで歩く浩介と百合。そんな2人を見て俊には若干の嫉妬感が生まれた。
「なぁ、俺らも手ぇ繋いじゃう?」
本当に、スッとでた自然の言葉だった。
「ううん。嫌ぁ♪」
「だよなっ。ジョーダン♪」
軽く流した俊だったが、本当はその一言が、深い傷になっていた……。




