恋のわけ。出会ったときにしか一目ぼれはしない。
結局、雅紀は諦めたようで、文句はいわなかった。もちろん、言ったところで何も変わらないだろうけど。
「さぁ~てと、何みる?」
いつもの流れで、浩介が仕切る。
「俺、なんでもいい」
「同感」
俊と雅紀はふてくされ気味で並んでいた。俊自身はそこまでの気持ちではなかったが、雰囲気を考えればそうなる。
「私も、なんでもいいや」
未来が可愛さ重視のスカートを触りながら言った。未来のこうゆうサバサバしたところが、俊には魅力的だった。
「私も・・・なんでもいい」
百合が未来の後ろに隠れるようにして言った。
「織は?」
未来が織に聞いた。
「私も、なんでもいいよ」
5人ともなんでもいいといわれた浩介。リーダーの血が沸騰したのか、すごい提案をしてきた。
「じゃぁさ。この中から、見たいのを適当にえらんで、観たいの観ればよくない?」
(おっ、やっぱ浩介は決断力あんなぁ……)
俊は浩介の性格に、尊敬した。浩介は決断力がある。浩介が指した作品は3つだった。多分、女子は3人が別々に分かれて、そこに男子が混ざろうとしているのだろう。作品は、全部最近はやりのものだった。『未来王』『家探し』『ミラクルケイト』。
「女子は何にすんの?」
浩介に振られた3人は少し相談した後、3人ともバラバラのものを選んだ。未来が『家探し』、百合が『未来王』、織が『ミラクルケイト』だった。この順番を聞いた浩介は、雅紀と俊の意見も聞かないで観る映画を決めた。俊が『家探し』、浩介が『未来王』、雅紀が『ミラクルケイト』だった。
「いいか、終了したらこの上のゲーセン集合」
浩介のその言葉で、3組は分かれた。浩介と百合の映画が一番早めの上映なのだが、俊と未来は場内に入ることが可能だったので、浩介達とは若干遅れで、入った。
「ねぇ、家探しってさぁ、ホラーっしょ?」
俊は、椅子に座ると未来に話し掛けた。
「うん、そうだね」
「工藤って、ホラー好きなの?」
「まぁ、若干は」
「ふぅ~ん♪以外」
「何がよ?」
「だって、工藤の好きな映画って、もっとチャラケタもんかと思ってたし♪」
「失礼ね……。私だって、俊ちゃんはコメディー系かと思ってた♪」
未来は俊のことを『俊ちゃん』と呼ぶ。他の人に対する言い方とは違っていたので、俊にはそれが嬉しかった。
「俺とお前って同類なのかもな♪」
「そうかもね♪フフッ」
「ハハッ」
俊と未来が話をしている内に、映画は始まった。
家探しとは、いわゆるホラー系映画。ゲームセンターにあった体験型ゲーム『家探し』を体験した少年達。ゲームは普通に終わったのだが、その後に少年の家の前にできた家は、そのゲームにでてくる家だった。少年のほかに遊んでいた少年少女たちにも、その現象がおきた。その家には、人がすんでいないように思えたのだが、夜中の2時になると電気がつく。その現象も、あのゲームと同じだった……。という話だ。
そんな映画を見ている途中で、俊は未来との出会いを思い返していた。
新年度が始まったころ、俊のクラスである3年2組のクラス表が張られた。そこには、俊と未来の名前があった。俊は未来のことを知らなかったのだが、席が隣になり、話をよくしていた。俊の性格と未来の性格がよく合い、思春期の男女とは思えないほどよく会話をした。
「なぁ、お前らって付き合ってんの?」
不意に、俊の前の席の奴が言った。
「はぁ?意味分かんねぇ」
「うん。正直興味ないし……なんつーか、弟的な感じ?」
「お姉ちゃーん、ってか♪?」
未来と俊はその時は適当な冗談で流したが、俊は未来のことを『友達』ではなく、『異性』と考えるようになってしまった。
「俊ちゃん、教科書見せてくんない?」
「えぇ~、ヤだよ。隣のクラスの奴から借りれば」
いままでの俊だったら、「いいよ、にしてもドジだろ♪」と言えたかもしれない。俊は、教科書を机の真ん中に置いて顔が近づくことを恐れたのだ。
「ぶぅ~!俊ちゃんの意地悪!」
「何とでもいえ~」
「馬鹿ぁ!障害っ!」
「なぬっ」
俊はいつもどおりにできているか心配だった。それでも、未来が何言ってこなかったので、特に触れはしなかった。
(そ~いや、コイツ、結構可愛いよな。工藤は俺のこと弟って言ったけど、本当は俺の方が妹だよな……)
俊は1人でそんなことを考えながら今までを過ごした。今までに何回かの席替えをしたのだが、この気持ちは1度も揺るがなかった。それに、今まで女性を『異性』と考えることもなかったからか、この気持ちが揺るぐ可能性も少なかったのだ。
「面白いな、この映画」
俊の回想はそこで終わり、俊は映画の感想をポツリと言った。未来は1つのことに集中するタイプだから聞いていないと思っていた。
「うん、そうだね」
だが、以外にも答えは返ってきた。その横顔を見て、俊はドキリとしてしまった。
(やばっ!俺、エロくね?雅紀に負けた?)
俊はそんかことを考えながら、1人オドオドしていた。




