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第17話 成約(フィン目線)

 いまだ子犬の姿のままのフィンは、妖精の力を少しでも早く取り戻すために月の光の下で自身の力を増幅させていた。

 月光を受けた草花が放つ小さな光の粒を取り込むと、ほんの少し力が湧く。二日前にミシャーナが危険にさらされた時のように、せめて人の姿で駆け付けられるように力を蓄えておかなければ、いざと言う時に彼女の手助けが出来ない。


 自分の存在を思い出してもらえるまで、せめてサポートくらいはしたいと思うのだが、なぜか()()()()は不可抗力と言えど自ら危険に巻き込まれに行っているように見える。


 ふ、とシルフの姿のままフィンは笑った。


 ――ミサは本当に自由気ままな風のような人だ。責任感は強いし、他人の傷に敏感で優しくて――執着するくせに手放すのも早い。僕は風の化身《妖精》だというのに、彼女への想いが手放せないどころか益々好きになって独占したい。


 人への加護は精霊の()()()()でもたらされる。加護持ちは人間ひととして生きづらいはずなのに、ミシャーナは家族以外に悟られないよう生きている。

 隠しながら生きることがどんなに大変か、ほかの加護持ちを見たことがあるフィンには良くわかる。だからこそ平気そうなミシャーナが不思議でならないし、強烈に惹かれてしまうのだ。

 最初の出会いこそ興味本位だったが、単にミシャーナの加護属性が同じ風というだけでは惹かれる理由になり得ず、フィンは二人の間にある運命的な何かを感じ取っていた。


 ――美しく儚げで輝いていて、いつまでも見ていたくなる雨上がりの虹のような人。僕はいつまでもミサの隣に立ちたい。早く僕を思い出して。


 そう考えていた時だった。


 胸の奥がチリついたかと思うと、急に力が()()()

 人の姿に勝手に変化した自分に驚くと同時に、頭の中でミシャーナの危機だと警鐘が鳴る。


 ――僕を思い出してくれた! ミサ!


 フィンははやてとなり、草花を揺らし水面を切り裂いてミシャーナの元に駆けた。

 水の中から感じる気配を辿り脇目も振らず水の中に飛び込んだ。水の妖精が力を貸してくれて出来た空気の層を身に纏うと、一気にミシャーナまで追いついた。


 何かに引きずられるようにもの凄い勢いで水中に引きずり込まれるミシャーナの手を掴むと、原因が水中生物であることに気が付いた。睨みつけると戦意を喪失したのか、噛みついていたミシャーナの足首から牙を抜き逃げて行った。


 無我夢中でミシャーナを陸に引き上げ様子を伺う。

 ミシャーナの意識は戻らず、足は千切れかけて見るも無残な状態だった。

 フィンの胸は早鐘のように打ち、何をどうすればいいか分からなくなる。せっかく自分を思い出してくれた愛しい相手の顔からは、徐々に血の気が引いて行くのが見て取れる。


「ああ、ミサ、ミサ! お願いだ、目を覚まして。僕を思い出してくれたんだよね? お願いだから、どうか……」


 必死で力いっぱい生命力を流し込むと足の傷はすぐさま再生し、濡れた体も乾いてミシャーナの体温を守った。弱々しいがまだ心臓は動いている。

 だが、目を覚まさない。


 ミシャーナは一気に記憶が戻ったことで脳に負荷がかかっていただけでなく、息が出来ない時間がそれなりに長かったことで大きなダメージを負っていた。


 フィンはぐったりとしたミシャーナを力いっぱい抱きしめた。ぽたぽたとミシャーナの頬に滴り落ちる雫は、川の水ではなくフィン自身の感情から沸き上がったものだった。


「ミサ、ミサ! 目を開けて僕の名前を呼んでよ、ねえ……」


 ミサを抱きしめて懇願するフィンは、いまだ自身の生命力をミシャーナに注ぎ続けていた。有り余るほど湧き上がる力は、思い出してくれた彼女のおかげだったが、やがてその力も尽きかけてきた。

 フィンの涙がミシャーナの頬を伝い、口の中にひとしずく流れ込んだ。


「ミ……サ……」


 力を使い切ったフィンが振り絞った声に、ぴくりとミシャーナの手が動いた。反応があったことに気付いたフィンは再び力を込めてミシャーナの手を握り、必死に名を呼んだ。


「ミサ、ミサ! 僕はここにいるよ。僕はセドリック(あんな男)とは違う! 君を全力で守る。僕にはその力がある……この力はミサがくれたものだ! 制約に打ち勝って僕らはお互いを思い出したんだ!」


 ミシャーナから「ううん」と、かすかに声が漏れたのを聞いて、フィンはさらに全力で呼びかけた。


「君のことが好きなんだ! 誰よりも大切に思っている。だから戻ってきてくれ、()()()()()!」


 恐ろしく弱々しいが、それでも握った手が握り返された。うっすらと目が開いたミシャーナがフィンの顔を捉えている。


「あの時の……返事を、して……も?」


 苦しそうな息の下で、ミシャーナが何かを言おうとする。フィンは耳をそばだて、頭を何度も縦に振った。

 フィンを見たミシャーナは、幼い頃のようにくしゃりと笑顔を作ると、フィンが一番欲しかった言葉を告げる。


「覚えて……いる、わ……大好きよ、フィン」


 すると二人の体が光り輝いた。



 ――誓約は制約を以て成約されたのだ。

フィンとミシャーナは制約を乗り越えてお互いを思い出しました。

しかし、それだけで終わる訳もなく……次章からは隣国で様々な事件に巻き込まれて行きます。

そんな中でも二人はゆっくりと愛を育んでいきます。

舞台が変わって新たなキャラクターも登場しますので引き続きお楽しみください。


面白かった、続きが気になると思われましたら応援や感想、ブクマ・評価★で作品の応援をいただけると創作の励みになります。

いつもお読みいただきありがとうございます。

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