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狐の嫁入り  作者: 若狭巴
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骨董品店 菫


花梨たちと街を歩いていると、知っている顔が視界にはいってきた。


狐面のお面にワンピーズを着ている人間がいるのだから、目立つし、好奇な目で見られることは予想していたが、ここで知っている顔を見かけるとは思ってもみなかった。


向こうも私に気づいたのか手をあげて「よっ!」と言ってきた。


私とその者の距離はかなり離れているので、声は聞こえなかったが、にやけたむかつく表情からそう言っているのは予想できた。


(なんで、あんたがここにいるのよ)


いや、いてもおかしくはないと頭の中ではわかっていた。


人間の世界で会っていたからといっても、彼は妖狐だ。


妖狐の街にいてもおかしくはない。


仮面のお陰で表情を悟られないのはよかったが、きっと男には私が今どんな表情をしているのかわかっているのだろう。


そして、私が今何を望んでいるのかも。


男はキセルを吸い、吐き出した煙で文字を書いた。



『骨董品店 菫 におる』



自分の伝えたいことを伝えると男はあっという間に人混みの中に紛れ見えなくなった。


(ちょっ、待ちなさいよ。私は初めてこの街に来たのよ。その店がどこにあるかなんて知らないわよ)


大声で叫んで文句を言いたいが、そんなことをすれば雅家の者たちに文句を言わせる機会を与えてしまうことになるので我慢するしかなかった。


とりあえず、今はこの目立つ状況を何とかしなければならないが、それは無理だと諦めて逆に堂々と男の店に向かってやるかと思ってしまった。


「ねぇ、この近くに骨董品店ってある?」


菫とつけなかったのは、雅家の者になぜ骨董品店に言ったのか聞かれても誤魔化せるように指定しなかった。


何個か回る羽目になるかもしれないが、男との繋がりを気づかれるよりはマシだった。


「ええ。ありますが……」


花梨はどことなく浮かない表情をする。


侍女たちも同じような表情になる。


「なら、そこに案内してくる?」


花梨たちの表情は気になるが、それよりも男に会って聞きたいことがあった。


「……わかりました」


花梨たちは言葉にこそしなかったが、本当にそこに行くのかと言いたそうな目を向けてきた。


なぜ、そんなふうに思うのか言ってくれないとわからない。


言わないということは危険な場所ではないが、その妖狐の性格に難があるのだろう。


もしかしたら、花梨たちが今から案内しようとしてくれているのは目的の男がいる店かもしれないと思った。


その男の性格は一言でいえば物凄く面倒だから。


私の予想は当たり、花梨たちが連れてきてくれた骨董品店は「骨董品店 菫」と看板に書かれていた。


骨董品店、菫は街から離れた場所にポツンと立っていた。


ここに来るまでの間に、妖狐たちの気配は完全になくなっていた。


よほど、この場所に近づきたくないと見える。


実際、花梨たちは店の中には入りたくなさそうだった。


できることなら今すぐこの場所から離れたいと思っていそうな顔だ。


「店には私一人で入るわ。じっくり見たいから時間もかかると思う。その間は好きに過ごしていいわ」


私がそう言うと、花梨と侍女たちは目を輝かせてお礼を言い、一目散にこの場所から離れていった。


「どれだけ嫌われてるのかしら」


花梨たちの逃げようから、妖狐の中でかなり孤立しているのがわかる。


面倒な性格だから当然か、と思いつつ店の扉を開け中に入ると、突然目の前が真っ暗になった。


「相変わらず、つまらない女じゃのう」


店に入ってそうそう男から冷たい言葉を浴びせられる。


「そっちこそ相変わらずね。客に対しての礼儀がなってないわ。私だったからいいものも、このイタズラはシャレになってないわ」


神力で体の周りを守っていたおかげで、未だに真っ暗になった視界でも問題なかった。


よく見ると目の前を真っ暗にした正体が何かわかる。


十体の呪霊が私の体の周りを囲うように集まっている。


このレベルの呪霊だと普通の人間なら魂を抜かれ食べられる。


ある程度の力を持っているものでも気絶して、最悪魂を抜き取られ食べられてしまう。


私は息を吐く空気に神力を混ぜて十体の呪霊を一瞬で祓う。


「おお!さすがじゃのう。お主にはこの程度のイタズラは無意味みたいじゃな」


男は少女のように、きゃ、きゃ、と楽しそうに笑う。


「私にはね。他の人にはしないで。面倒だから。それで、なんであんたがここにいるわけ?」


「別にいてもおかしくはないじゃろ。わし、妖狐じゃし」


「でも、あんたこの世界嫌いで人間界に来たんでしょ」


「……」


男は、それ以上は何も言わずに黙り込んだ。


「まぁ、別に興味もないから、あんたの好きにしていいと思うけど。それより、あんたに聞きたいことがあるの」


「雅家の歴代花嫁たちのことか?」


聞こうと思っていたことを先に男に言われて驚いてしまう。


そうだ、と認めて、もう少し付け加えようと口を開くが、それより先に「それとも、他の種族に嫁いだ花嫁たちのことか」と言おうとしていたこと全部言われてしまった。


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