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狐の嫁入り  作者: 若狭巴
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花嫁

浄化の舞を終え、帰宅するが出迎えてくれたものは誰もいなかった。


屋敷に着くなり籠を乱暴に下ろされ、妖狐たちは何も言わずにさっさとその場から立ち去って行った。


(お疲れ様、の一言もないわけ)


あまりの態度に今すぐ殴ってやろうかと思うが、すぐに殴る価値もない連中だと思いなおし、自分の部屋へと戻る。


部屋の障子を開けると、花梨がいた。


風呂の用意ができているから入ってくれと言われ、言われた通りに入り、風呂から出ると豪華な食事が用意されていた。


頑張って用意してくれたのだろう。


私の立場を考えれば、こんな豪華な料理を使用人たちが用意するはずがない。


花梨がどんな手を使って用意してくれたのかはわからないが、少しだけ感動したが、すぐに当然のことだよなと思い直した。


寧ろ、最悪から普通にした自分が褒められるべきでは。


そんな余計なことを考えていると、いつの間にか料理を全て完食していた。


昼食を食べていなかったせいで、自分でも気づかないうちに、かなりお腹が空いていたみたいだ。


あったかい風呂に、あったかい食事、ふわふわのいい匂いの布団に寝る。


今日はよく頑張ったなと、自分を褒めて眠りについたが、一刻も経たなうちにたたき起こされた。


嫁いでから、こんな出来事は初めてだった。


なぜ、今日なのかと思うくらい殺意が湧いてくる。


疲れているのだから、気を利かせて明日にしてくれればいいのに、と。


「で?私を起こした理由は何ですか?歴代の花嫁さんたち」


いま私の部屋には、白装束を身に纏った幽霊が四人いる。


妖狐に嫁いだ歴代花嫁たちは私を含めて五人。


間違いなく、この四人は歴代の妖狐の花嫁で間違いないだろう。


顔は骨になっていて、確認できない。


そうだ、と返事をしてくれたら助かるが、彼女たちはぶつぶつと何かを言ったり、急に叫び出したりして会話をすることができない。


そもそも、なんで、彼女たちがここに縛られているのかわからない。


いくら力が弱いと言っても、西園寺家に生まれた女が呪縛霊になるなんて普通ならありえない。


本当に彼女たちは西園寺家の人間なのかと疑ってしまうが、白装束に西園寺家の紋が記されてあり間違いなく西園寺家の人間だ。


死んだら遺体は西園寺家に渡される。


よほどのことがない限り、魂はあの世へとむかう。


呪縛霊になるだけの理由があったのは間違いない。


それも、妖狐に嫁いだ花嫁全員がなるほどのものだ。


いくら虐められたからと言って、言葉も話せなくなるほどの呪縛霊になるとは考えられない。


この屋敷に来た時からの違和感は花嫁たちの呪縛霊と関係あるのは確かだろうが、それだけではない気がする。


もっと、大きな何かを隠されている気がしてならない。


だが、今はそれよりも気になることがある。


(だれも、彼女たちに気が付かなかったのだろうか?いや、そんなことはあり得ない)


私もここに来たときは違和感程度だったが、彼女たちの存在に気づくことができなかった。


神力を持っているのに。


わざと隠されていたから気づかなかったのか?


それとも、彼女たちの意思で隠れていたのか?


そう思い、彼女たちをみるがどう見ても、四人そろっても私の足元にも及びそうにない。


となる、考えられるのはただ一つだ。


わざと、彼女たちの存在を誰かが隠している。


妖力を持っているものが呪縛霊に気づかないなんてあり得ない。


この屋敷の主である人物が知らないなんてあり得ない。


花嫁たちは妖に嫁ぐと、妖力のせいで短命になると言われているが、もしかしたらそれは事実ではないかもしれないと思えてきた。


(殺されたのかもしれないわね)


そう思うと、急に花嫁たちが私の目の前で何かを訴えているようにみえた。


――ここから逃げろ。


そう言っているように聞こえた。


実際には何と言っているのかはわからない。


もしかしたら、助けてくれ、と言っているのかもしれない。


真実が何かなんてどうでもいい。


大切なのは、雅家の連中は西園寺家に何かを隠している。


そして、私を殺そうとしていることだ。


(ん?でも、それじゃあ……)


そこまで考えて、桔梗の矛盾している行動が気になった。


雅家の連中は私を殺そうとしているのは間違いない。


それがいつなのかはわからないが。


でも、そうすると桔梗が私を心配したりするのは矛盾しているとしか思えない。


私を懐柔して、殺しやすくするため?


そんな必要はないはずだ。


何かがおかしい。


桔梗は何も知らないのだろうか?


それとも知っていて私を心配しているのだろうか?


(よくわからない)


どれだけ、考えても答えが出ない。


花嫁たちもどうすることもできない。


離れる気がないのか、少し移動しただけなのについてくる。


考えるのにも疲れたので、とりあえず寝て、起きてからこれからどうするか考えることにした。


花嫁たちがうるさいので、耳を神力で纏い、音を遮断した。


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