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狐の嫁入り  作者: 若狭巴
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愚かな発言

「花嫁様。少々、おふざけが過ぎるのではありませんか?」


長男のなぎが不穏な空気を収めようと凛とした声で言った。


「それは、そちらではありませんか?まさか、自覚がないのですか?そんなわけありませんよね?」


言い合いの収めどころを凪が買って出たことには気づいたが、それは私には関係のないことだ。


今さら、止めるくらいなら最初からやらせなければいいだけのことだ。


「どういう意味でしょうか?」


梨々花が笑顔で尋ねる。


まるで私たちが悪いみたいな言い方をするのね、と批判するような口調で。


「あら、本当におわかりになっていなかったのですね。雅家の品格が疑われるような発言ですけど大丈夫ですか?」


最後の発言に桔梗以外の雅家たちの逆鱗に触れたのか、全員妖力を放出した。


格の違いを見せつけたかったのだろうが生憎、私には効かなかった。


本来の婚約者である茜だったら話は別だろうが、歴代最強と言われている私には痛くもかゆくもない。


そもそも神力は浄化するだけでなく、全ての気を取り込み、自分の力に変えることができる。


そんな力を持つ私相手に妖力を放出するなんて馬鹿でも普通はしない。


今までの花嫁たちは、その時代で最も弱いものが送り出されていたためできなかったのだろう。


だから知らないのも当然だが、仲がよければ教えてもらっていてもおかしくはないのだが、知らないということはどういう対応をしていたのかわかる。


いま妖力を奪い取ってもいいが、それでは面白くはない。


徹底的に潰すためにもお楽しみは最後まで取っておくべきだろう。


いま私が雅家から受けていることを知れば、西園寺家の当主は喜んで雅家を潰し、その力を代々奴隷のように使い潰してやろうと考えるだろう。


だが、それでは私が何もできずに当主に泣きついて助けを乞うたことになってしまう。


これは私一人でやらなければいけないことだ。


誰にも絶対に邪魔をさせない。


そう決意をして、喧嘩を続けることにした。


「‘花嫁様‘。あまり調子に乗らないほうがいいんじゃないですか?」


彪雅が立ち上がりながら今にも殴りかかってきそうな勢いで言ってくるが、私はそれに対して「‘花嫁様’ではなく奥さまです」と言った。


「は?」


彪雅は本気で何を言われているのかわからないと言った表情をする。


「私の旦那様はもうすぐ当主になります。奥さまと呼ぶのが当然でしょう。花梨も先ほどそう呼びました。侍女でもわかることなのに、あなたはわからなかったのですか?」


当主の息子が?とは言わなかったが、私が言いたいことを口調から全員が理解できたはずだ。


花梨はいきなり自分の名前が出されて「本当にお願いだから巻き込まないでよ」と心の中で訴えた。


少し前、この部屋に入る前に私は花梨にあることを頼んだ。


それは「若奥様」ではなく「奥様」と呼んで欲しいと。


花梨に拒否権などないため、素直にそう呼んでくれた。


もともと、今の状況のときに使うために言わせたことではないが、結果的に大いに役に立った。


とりあえず、今日はここまでにして終わらすことにした。


主導権はそちらではなく、こちらがもつと意思表示できただけで良しとする。


「今日は初めてなので皆様も緊張して間違えてしまわれたのでしょう。人間と妖では住む世界が違うので、あわせるのは大変だと思いますので、今日のところは許してさしあげます。ですが、次からはありません。私の言っていること、わかりますよね」


要約すると、「浄化の舞をしてほしければ、分をわきまえろ」だ。


それをわかっているからか、誰も何も言わなかった。


浄化の舞をしてもらえなければ、困るのは雅家の方なのだから。


「では、今日はこれで失礼します」


私は部屋から出ようと歩き出すが、障子が開くと、わざとらしくいま思い出したふりをしてこう聞いた。


「あ、そういえば、私の荷物を盗んだのは誰ですか?」と。


さすが妖狐のトップの家と言ったところか。


さっきまでは無様な姿を晒していたが、一瞬で反応を消した。


今ここで盗んだと言ったが、燃やされたことはすでに知っているはずだ。


さすがに、西園寺家の娘の荷物を燃やした犯人になれば両家の関係に傷をつけたものとして、どうなるかはわかっているみたいだ。


それなら最初からしなければいいものを、獣だから仕方ないかと納得することにした。


「なんで、私たちがあんたの荷物を盗まないといけないのよ!」


梨々花は妖狐なのに鬼のような顔で叫んだ。


「皆さんの誰でもないのなら、この屋敷に誰かが侵入したことになりますよね。天下の妖狐のお屋敷に、ですよ。これ、外に知られたら大丈夫ですか?」


「私たちじゃなくて侍女たちが勝手にやったかもしれないじゃない!」


梨々花はそう叫ぶが、自分が今どれだけ愚かな発言をしたかに気づいていないみたいだ。


「侍女たちが勝手に、ですか?そんな侍女を雅家は雇っているのですか?」


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