命日と再会
1年が経った。
2024年4月16日——命日。
家族が集まり、遺影の前で手を合わせる。
そのとき、娘がふと空を見上げた。
「ねぇ、お父さん。夢に出てきてよ」
そう呟いた夜。
娘の夢の中で、お父さんは現れた。
透き通るような姿で、でも、ちゃんと笑っていた。
「頑張りすぎるなよ。ちゃんと、ご飯食べろよ」
夢の中で泣きながらうなずく娘。
目覚めた朝、心の中は少し軽くなっていた。
旅立ちの準備
お父さんは少しずつ、この世界から旅立つ準備を始めていた。
家族が前を向いて歩き出していることに、
安心と、少しの寂しさを感じながら。
もうすぐ、「光の列車」が迎えに来るらしい。
その列車に乗ると、「もう戻ってこられない」のだという。
「行ってもいいか?」
自分に問いかける。
そのとき——
仏壇の前に立つ娘が、ぽつりと呟いた。
「お父さん、そっちで待っててね。いつか、また会おう」
涙が、ひとすじ。
けれど、その声は優しかった。
「……あぁ。ちゃんと待っとくけぇ」
お父さんは、そう言って——
光の中へ、ゆっくりと歩き出した。
⸻
その後も、お父さんはふとした瞬間に家族のそばにいる。
大切な日、寂しい夜、心が折れそうな朝——
「ふっ」と吹く風、「カラン」と鳴る風鈴。
それが、お父さんからの小さな「エール」。
姿は見えなくても。
声は届かなくても。
“いつも、あなたのそばにいる”
その優しい魂の物語は、
これからも静かに、優しく、家族の胸の中で生き続けている。