表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

第五話 冒険者

 私たちは魔物を倒しまくった。ヘビやクマ、魚、鳥などの大型から小型まで、魔石を壊しまくった。魔物の死体はラーベ曰く、「いつか役に立つだろ」ということなので、次元収納に入れておいた。

 魔力を使い切ると動けなくなるらしいので、浮遊魔法はあまり使わないようにしている。徒歩だと時間がかかるが、体調を崩すとラーベに笑われそうだから我慢する。

「あっちから人間の魔力を感じるぞ」

 ラーベが示したほうを見る。

 確かに、弱いが魔力を感じる。微かに声や物音も聞こえる。金属音がちらほら聞こえるので、魔物と戦闘でもしているのだろうか。

「おもろそうじゃねえか。行ってみようぜ!」

「人間なら会ってみたいし、行こ」

 走って音の聞こえるほうへ向かう。

 人間と魔物がいるのが分かる。剣を抜いているのが見えるため、やはり戦闘中なのだろう。大型の魔物を相手に苦戦しているようだ。

「ヒーロー参上するかァ? かっこいいじゃねえか」

「めんどくさいから、却下」

「つまんねえなァ」

 特に演出などをするわけでもなく、木の陰から飛び出し、魔物を思いっきり蹴る。

「な、何ッ?!」

「子供?!」

 魔物と戦っていた人たちは、突然現れた子供に驚いている様子。

 私はそんな人間には目もくれず、魔物を見る。木に激突し、逆さになっているムカデは素早く元の体勢に戻り、こちらを威嚇する。

「そのちっせえ身体のどこにそんな馬鹿力があんだ」

「さあね」

 ラーベの愚痴りに短く返答し、地面をけってムカデに突っ込む。

「ギギャァアアアーー!!」

 ムカデも同様、こちらに迷いなく突っ込んでくる。力では勝てると思っているのだろうか。まあ確かに、真正面からの力の殴り合いでは勝てない。

 私はさっきの姿勢よりさらに低くなり、突っ込んでくるムカデの下を通り、尻尾を使って、長いムカデの身体を縦に切る。魔石は無事に壊すことができた。

 ムカデの返り血を浴び、べっとりとする身体を水魔法により、頭から水をかぶり、風魔法で乾かす。

「もう此奴の死体は使えねえな」

「ああ・・・・・ しまった」

 助けるにしても、魔物の死体は使える程度に原形をとどめていてほしかったと、心の中で後悔した。

「君は何者だ・・・?」

「子供、かな・・・・?」

「あー・・・ えーっとー、僕はカレン。街を探しているんだけど、君たちは?」

「そうか。俺たちは冒険者で、魔物を狩りに来たんだけど、運悪く中位魔物と遭遇してしまってね・・・・・」

「そうだ、あんた街を探してるんだろ? 俺たちも消耗しているし、一緒に街に来ないか?」

「そうしようかな。ついでに護衛もしてあげる」

「おいおい、護衛までする必要ねェだろ」

「早速行こう。案内してくれる?」

 私はラーベの言ったことを無視して、冒険者に街まで案内してくれるよう促す。

 冒険者から話を聞きながら、徒歩で森を抜ける。

 ここは〈王都アーベン〉の近くにある森なんだそうだ。この森は大昔、二〇〇年くらい前に恐ろしい魔物のような生物が暴れ、とても荒れたそうだ。この森の一部は街だったようだが、その生物が暴れたせいで、修繕が困難の状態になり、街は今の大きさまで小さくなった。

 まあ、今の街の大きさが分からないのだが・・・。

 そんな恐ろしい生物を倒した人がいるらしく、王都アーベンでは〈一四の英雄〉と言われている。英雄たちはそれぞれ、特殊な力や武器を持っていたらしい。その力と武器を駆使し、見事に謎の生物を討伐。しかし、第二の強敵が現れ、連続した強敵との戦闘により、二番目の敵も倒せはしたが、〈一四の英雄〉は全滅。

 そんな誇り高き勇敢な英雄たちを、王都アーベンでは、その戦いを労うべく、〈戦労祭〉という祭りを始めたそうだ。

「俺も、いつかその英雄たちみたいになりたいだ!」

「そう・・・・・苦しくなかったかな・・・」

「〈一四の英雄〉は街の子供たちの憧れになってるんだ」

「そらァ、自殺しに行ってるようなもんじゃねえか」

 私は鋭い目で、ラーベを睨みつけた。なんとなく、腹が立ってしまったのだ。何も知らないくせに、と。

「その英雄たちは一国を守ってくれたんでしょ。それは凄いこと」

「そうかもしれねえけどよォ・・・」

「そうだ! 王都の中心にある市場には〈一四の英雄〉たちの像があるんだ! ぜひ見てくれよ!」

「・・・それもいいかも」

 カレン含み、冒険者一行は、王都アーベンに向けて足を動かしていく。


 ―――カレンが未来寂しくならないように、この名前を歴史に刻む、我ながらいい案だと思わないか?―――


 その像が誰なのかなんて全く分からないが、何故かその像を見るのが楽しみになった。

 謎の声は今もカレンに語り掛け続ける。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ