第五話 冒険者
私たちは魔物を倒しまくった。ヘビやクマ、魚、鳥などの大型から小型まで、魔石を壊しまくった。魔物の死体はラーベ曰く、「いつか役に立つだろ」ということなので、次元収納に入れておいた。
魔力を使い切ると動けなくなるらしいので、浮遊魔法はあまり使わないようにしている。徒歩だと時間がかかるが、体調を崩すとラーベに笑われそうだから我慢する。
「あっちから人間の魔力を感じるぞ」
ラーベが示したほうを見る。
確かに、弱いが魔力を感じる。微かに声や物音も聞こえる。金属音がちらほら聞こえるので、魔物と戦闘でもしているのだろうか。
「おもろそうじゃねえか。行ってみようぜ!」
「人間なら会ってみたいし、行こ」
走って音の聞こえるほうへ向かう。
人間と魔物がいるのが分かる。剣を抜いているのが見えるため、やはり戦闘中なのだろう。大型の魔物を相手に苦戦しているようだ。
「ヒーロー参上するかァ? かっこいいじゃねえか」
「めんどくさいから、却下」
「つまんねえなァ」
特に演出などをするわけでもなく、木の陰から飛び出し、魔物を思いっきり蹴る。
「な、何ッ?!」
「子供?!」
魔物と戦っていた人たちは、突然現れた子供に驚いている様子。
私はそんな人間には目もくれず、魔物を見る。木に激突し、逆さになっているムカデは素早く元の体勢に戻り、こちらを威嚇する。
「そのちっせえ身体のどこにそんな馬鹿力があんだ」
「さあね」
ラーベの愚痴りに短く返答し、地面をけってムカデに突っ込む。
「ギギャァアアアーー!!」
ムカデも同様、こちらに迷いなく突っ込んでくる。力では勝てると思っているのだろうか。まあ確かに、真正面からの力の殴り合いでは勝てない。
私はさっきの姿勢よりさらに低くなり、突っ込んでくるムカデの下を通り、尻尾を使って、長いムカデの身体を縦に切る。魔石は無事に壊すことができた。
ムカデの返り血を浴び、べっとりとする身体を水魔法により、頭から水をかぶり、風魔法で乾かす。
「もう此奴の死体は使えねえな」
「ああ・・・・・ しまった」
助けるにしても、魔物の死体は使える程度に原形をとどめていてほしかったと、心の中で後悔した。
「君は何者だ・・・?」
「子供、かな・・・・?」
「あー・・・ えーっとー、僕はカレン。街を探しているんだけど、君たちは?」
「そうか。俺たちは冒険者で、魔物を狩りに来たんだけど、運悪く中位魔物と遭遇してしまってね・・・・・」
「そうだ、あんた街を探してるんだろ? 俺たちも消耗しているし、一緒に街に来ないか?」
「そうしようかな。ついでに護衛もしてあげる」
「おいおい、護衛までする必要ねェだろ」
「早速行こう。案内してくれる?」
私はラーベの言ったことを無視して、冒険者に街まで案内してくれるよう促す。
冒険者から話を聞きながら、徒歩で森を抜ける。
ここは〈王都アーベン〉の近くにある森なんだそうだ。この森は大昔、二〇〇年くらい前に恐ろしい魔物のような生物が暴れ、とても荒れたそうだ。この森の一部は街だったようだが、その生物が暴れたせいで、修繕が困難の状態になり、街は今の大きさまで小さくなった。
まあ、今の街の大きさが分からないのだが・・・。
そんな恐ろしい生物を倒した人がいるらしく、王都アーベンでは〈一四の英雄〉と言われている。英雄たちはそれぞれ、特殊な力や武器を持っていたらしい。その力と武器を駆使し、見事に謎の生物を討伐。しかし、第二の強敵が現れ、連続した強敵との戦闘により、二番目の敵も倒せはしたが、〈一四の英雄〉は全滅。
そんな誇り高き勇敢な英雄たちを、王都アーベンでは、その戦いを労うべく、〈戦労祭〉という祭りを始めたそうだ。
「俺も、いつかその英雄たちみたいになりたいだ!」
「そう・・・・・苦しくなかったかな・・・」
「〈一四の英雄〉は街の子供たちの憧れになってるんだ」
「そらァ、自殺しに行ってるようなもんじゃねえか」
私は鋭い目で、ラーベを睨みつけた。なんとなく、腹が立ってしまったのだ。何も知らないくせに、と。
「その英雄たちは一国を守ってくれたんでしょ。それは凄いこと」
「そうかもしれねえけどよォ・・・」
「そうだ! 王都の中心にある市場には〈一四の英雄〉たちの像があるんだ! ぜひ見てくれよ!」
「・・・それもいいかも」
カレン含み、冒険者一行は、王都アーベンに向けて足を動かしていく。
―――カレンが未来寂しくならないように、この名前を歴史に刻む、我ながらいい案だと思わないか?―――
その像が誰なのかなんて全く分からないが、何故かその像を見るのが楽しみになった。
謎の声は今もカレンに語り掛け続ける。