第一話 頭に響く声
ここはどこ?
暗闇の中、ゆらゆらと水中の中を漂うような感覚、音は曇っているようであり、それ以前に音は耳へと届かない。何も思うことなく時間だけが過ぎていく。
―――カレン、起きた? 早く支度しないと間に合わない。ほら、目を開けて、みんなが君を―――
そんな中、一つの声だけが頭へと響いた。誰の声なのか、この声は誰なのか、何一つわからない。此処がどこなのかすら分からないのだから。このまま寝ていればいい。そう思った。
しかし、考えることと思うことは違った。
―――そうだ、早くしないと。間に合わない。
今まで抜けていた身体の力が、身体全身に湧いてくる。スピードを上げ、だんだんと集まり固まろうとする力。この身を起こすには、もっとたくさんの力が必要だ。しかし、自分はそんな力を無視して、自分に、そして声に応えるが如く、今集まったばかりの力を使う。
―――――行かなくちゃ・・・
私は目を覚ます。
目を覚まし、視界に入ったのは、見渡す限りの青空だった。太陽の光が目に染みる。
「此処、どこ・・・? 何してたんだっけ―――」
身体は水の上にぷかぷかと浮かび、波に流されていた。足は動かしてみたが、水の底につきそうにない。仕方なく自ら水の中に潜る。
水の中は意外と深く、下のほうは真っ暗で底が見えない。すると、目線の先に黒い、点みたいに小さい丸い物体を発見する。底の色と同化して見えずらいが、確かにある。気になったため、そちらに向かって泳ぐ。
黒い物体を両手でしっかり持ち、落とさないように水面に上がる。
息継ぎをしてから近い岸に上がり、髪の水けを払う。一息つき、また黒い物体に意識を向ける。
「この黒い物体はなんだ・・・・・ 軟らかい?」
指でツンツンと突いてみると、意外と軟らかく弾力がある。しかし、それ以外のことで目立った特徴はなく、ただの黒いボールだ。
―――周りを見渡す。そこには木々ばかりで、あとは湖だけ。目立ったものはない、高い塔のような建造物もないようだし、これらのヒントから考えるに、此処は森ということだろう。
―――貴方の名前、カレンっていうのね、とてもいい名前だと思うわ。それで、貴方はどこから来たのかしら?―――
まただ、脳内に謎の声が響く。何処から発されているのかわからないが、自分に向けて言われていることは分かる。
――『貴方はどこから来たのかしら?』――
何処から来たかなんて、こっちが聞きたいくらいだ。どうして自分はここにいるのだろう・・・・・。どうやってこんなところに来たんだろう?
そんなことを考えていると、黒い物体がプルプルと震えだし、宙に浮いたと思ったら、球体に巨大な口が現れた。ギザギザに裂け、まるでノコギリの刃のようだ。
「ゥウオオーーッ!! 俺様を解放させちまったのはどいつダァ?!」
・ ・ ・ ・ ・。
口が開いてうるさくなっただけらしい。球体なのは変わっておらず、大きさもさっきと変わっていない。一体何なのだろうか、この変な物体は。