『異世界転生モノの構造的問題点を考える』 《四》
さて、前回は異世界転生モノの『キャラクター』について語りましたが、
では一体何故、異世界転生モノの「主人公」は
読者の【印象に残らない】のでしょうか?
(ライトノベル全般と言い換えても良いですが)
答えは簡単です。
そのキャラクターに『人間的魅力』が希薄だからです。
~現世でニートだったから女神に与えられたチート能力で異世界無双!~
↑のようなタイトルからも解るように、
それじゃあ『主役』は【女神が与えるチート能力】
主人公は別に誰でも良いというコトになってしまい、
それでは読者の心に残る印象も暈けてしまいます。
コレは『異世界転生モノ』に限った話ではなく
ライトノベル全般に及ぶ【悪習・悪癖】で、
過去ワタシが再三弾劾していたある作品など
その最たるモノです。
その『逆の例』として『ジョジョの奇妙な冒険』を挙げますが、
こちらは「どの部」の主人公も『唯一無二』
決して誰も代わりは出来ないストーリー構成となっております。
例えば「第一部」の主人公、“ジョナサン・ジョースター”は
『波紋』という特殊能力を持っていますが
その前に、『生身の人間のまま』
石仮面を被り凶悪な【吸血鬼】と化した
宿敵“ディオ・ブランドー”に敢然と立ち向かっていき、
全身ズタボロになりながらも「勝利」を収めます。
その『精神力』がズバ抜けているから、
だから『波紋』を修得したジョナサンは「強いんだ」
という『説得力』が生まれますし、
読者はどんな困難にも決して屈しない彼の人柄に惹かれていき
『その最後』には皆で涙を流すという
【圧倒的魅力】が生まれるのです。
更に言えば『波紋』も「女神から与えられたお手軽なチート能力」
等ではなく、修得するまで何カ月もの過酷な『修行』が必要とされます。
ソレに比べれば何の努力も苦労もしないで、
「他人に与えられたチート能力」で
無双して良い気になっている主人公なんかに『魅力』が
生まれるワケがありません。
【構造的】に無理なんです。
「そんな都合の良い能力があるのなら俺でも出来る、私でも出来る」
と読者に想わせた時点で、
誰もそんな主人公のコトは好きになれないでしょう。
ソコにはそのキャラクターに対する
『憧憬』も『尊敬』も『共感』すらも存在しないからです。
仮に、「ジョジョ三部」でアナタが『スター・プラチナ』を与えられたとして、
最終的にラスボスであるDIO様を倒す事が出来ますか?
絶対無理ですよね? エジプトに辿り着くどころか
最初の花京院でヤられますよね?
『キャラクターを創る』というのはそういうコトなんです。
「能力」はオマケで『主役』じゃないんです。