『悪の肯定』
作品、キャラクターの『精神性』に深みを持たせる為には、
表題の概念が必須だと想います。
ここでの『肯定』とは別に悪逆非道な行為を進んで行うという意味ではありません。
ただ人間誰しも【悪意】を持っているように、
その存在は否定しないという事なのです。
毎度お馴染み、『ジョジョの奇妙な冒険』で例えますと、
敵のキャラクターに【ディオ・ブランドー】という男がいます。
作中でも“邪悪の化身”と呼称されるように、
彼は自分の目的の為にならその手段を選ばず
悪逆非道の限りを尽くします。
しかし同時に彼は主人公達の敵でありながら
作中屈指の【人気キャラクター】でもあるのです。
原作者の荒木先生も仰っているように
彼は【影の主人公】他のキャラが取らない選択を選ぶ者、
つまりは『もう一人の主役』であるという事です。
~悪には悪の救世主が必要だ~
作中のある敵キャラクターの言葉ですが、
人間『キレイゴト』だけで動いているのではないので、
その汚い部分や醜い部分を『肯定』しながらも、
尚且つ圧倒的に強い力と美貌と求心力を持った人物、
ソコに惹かれてしまう【人間の性】というのも
確実に存在するモノでしょう。
正にある種の人達にとっては『救世主』のように
映ってしまうものでもあり、
コレは人間の『業』や『原罪』と呼ばれるものかも知れませんが、
確かに確実にそして強烈に存在するモノなのです。
【この部分を】を無視して「正義」だの「使命」だのと語っても、
ソレは非常に薄っぺらい言葉の羅列と成り果てます。
【都合の悪い事から眼を背けて】放つ言葉は
全て『偽善』と『欺瞞』に成り下がるからです。
場合によっては【正しい事をしているつもりで最悪な事を行っている】
キャラクターを生み出してしまったりもします。
20年以上、未だに【炎上】しているキャラクターなどその典型ですが、
全ては【作者が自分の悪意を認識出来ていない】から起こる現象です。
認識していないのだから【コントロール】も出来ません。
そして多くの【犯罪者】に共通するのは、
『自分は別に悪い事はしていない』という意識です。
【悪意】とは別に汚らわしく悍ましい「感覚」ではなく、
寧ろ蠱惑的で陶酔を誘い好奇や興味を抱かせる存在です。
『麻薬』が一番良い例ですが、
【自覚が無いまま心身を致命的に蝕む】
という点は正にソレそのものと云って良いでしょう。
【悪意】とは自分から遠く離れた「彼岸」に在るモノではなく、
実は恐ろしく近い『此岸』に在るモノ。
この事を忘れて『キャラクター』を描くと、
深みが有る所か恐ろしく【間違った方向】にブレてしまい、
最悪【炎上】してしまう事でしょう。