エピローグ/プロローグ
あの日のことを私は一生忘れない。
貴方と初めて出逢った日のことを。
魔法使いや魔女は普通の人間とはかけ離れた存在だと思ってた。
しかし、実際は私となんらかわらない普通の人だった。
お二人は本当に素敵なご夫婦で私の理想の夫婦そのものだった。
貴方にとってどれほど大きな存在だったか、そんなことは貴方を見ていれば手にとるように分かったの。
別れがあるから出会いがあるなんて音葉があるけど、出会わなければ別れはやってこない。
別れなければいけないくらいなら出会わなければ良かったなんて思うこともあるけど、やっぱりこの出会いには意味があったから。
私はこれまでの全ての出会いに感謝している。
思い返してみればあっという間に過ぎていく時間に私は翻弄されていたのかもしれない。
こんなにも心躍ることが私にもあるんだって初めて感じたの。
豪華で煌びやかに咲き誇る花よりも控えめだけど凛と佇む花の方に心惹かれる。
たとえ血の繋がりがなくとも家族になることは出来るのだと彼女たちが教えてくれた。
真実とはいったい何なのだろう。
願いというものはほとんどのものが叶うことなく、いつしか忘れ去られていく。
どうか貴方の願いが叶いますように。
それはあまりにも突然すぎた。
でも、きっと必然なことだったのだろう。
愛する者のためならば手段を選んでいる暇はない。
次、逢う時はどうか、また、あなたの笑顔に逢えますように。
別れは突然やって来るということを分かっていたはずなのに。
貴女がいてくれてどれだけ私が救われていたか。
貴方はいつだって誰かのために全力で生きている。
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18歳の誕生日、母の日記を見つけた。
それは父の書斎の本棚に飾ってあった。
父に許可をもらい、自分の部屋でじっくりと読むことにした。
母は今の私と同じ歳で祖国を出て、父と結婚したらしい。
そして、25歳の時に私を産み、翌年亡くなった。
元々体の弱い人だったそうで子供は諦めていたらしい。
しかし、母はいつしか父との子を望むようになった。
最初は父に反対されていたが最終的には父が折れたそうだ。
私は無事産まれたが、母は中々体調が戻らず徐々に衰弱し亡くなった。
私が1歳になってすぐの頃だった。
母のことは覚えていないが寂しいと思ったことはない。
それは父と伯父家族のおかげ。
私が幼い頃は伯父の家で過ごすことが多かった。
父が仕事で留守にしがちだったから。
いとこたちとは兄弟同然だったし、伯母が母代わりをしてくれていた。
私が4歳になった頃、父と一緒に母の祖国に引っ越した。
母の祖国は小さいながらも自然が豊かでゆっくりと時間が流れている。
最初は慣れない生活に苦労したが父と過ごす時間が増えてとても嬉しかった。
私が13歳になる頃、伯父夫婦が隠居して頻繁に会いに来てくれるようになった。
伯父夫婦は魔法が使えた。
そして、私も魔法が使える。
父も母も魔法は使えない。
隔世遺伝だそうだ。
父の祖母が魔法を使えたそうだ。
伯父夫婦が私の師匠になってくれた。
2人が来てくれると今まで知らなかった魔法や薬草学を教えてくれる。
私にはそれがとても嬉しかった。
そんな感じで私は魔法や薬草学にのめり込んでいった。
結果この歳まで恋というものとは無縁だ。
日記を見る限り、父と母は政略結婚だったそうだ。
しかし、母はいつしか父に恋をした。
父には想い人がいたみたいだが、それは叶いそうもないことだったみたい。
それにしても母の人生は波瀾万丈すぎないか?
てか、待って…
『アジュール王国王太子ディアマンテ殿下に嫁ぐ』って書いてない?
え?待って…
『クォーツ国王女ルチル』って書いてある?
「えっ!?」
長いシルバーブロンドの髪を靡かせながら、ドタバタと2階にある自分の部屋から1階のリビングに向かう。
リビングのソファーにグリーンフォッグの髪が見えた。
「パパッ!!」
振り返ったスカイブルーの瞳が私を見た。
「リシア、危ないから階段は走るなって何度言えば…」
少し怪訝そうに父は眉間に皺を寄せる。
「そんなことより!」
「そんなんことって…」
ため息をつく父を無視して話を続けようとしたら呼び鈴がなった。
玄関に向かうと伯父家族がいた。
「久しぶり!リシア!ハッピーバースデー!!」
「あ、り、が、と、アン、ちゃん」
いとこのアンバーが抱きついてきた。
ぎゅうぅぅっと抱きしめられて上手く話せない。
「アンバー、リシアが潰れる」
もう1人のいとこ、アンブロイドが助け舟を出してくれた。
「ありがとう、アン君」
2人は男女の双子で私より7歳年上。
私と同じスカイブルーの瞳にアンバーは伯父とお揃いのマルベリー色の髪、アンブロイドは伯母とお揃いの赤銅色の髪。
2人ともとんでもなく綺麗な顔をしている。
これを言うと『リシアの方が綺麗だ』と言われ、しばらくこの話題から逃れられない。
どうやら私は母似のようで母から儚さをとった感じらしい。
それ似てるって言うのか?って毎回思う。
「ごめんね、痛かった?」
アンバーがしょんぼりしながらこちらを伺う。
「ちょっとね」
「ごめんね。久しぶりだから嬉しくって」
「大丈夫、大丈夫。私も逢えて嬉しいよアンちゃん」
しょんぼりしていたアンバーの顔がパァと明るく輝いた。
伯父家族をリビングに向かい入れて、ふと思い出した。
「そうだよ、パパ!聞きたいことがあったの!」
「ん?」
「パパとママ、王子と王女なの!?」
「そうだよ」
あまりにもあっさり答えられてしまいポカンと口を開けたまま言葉が出てこなかった。
「リシア知らなかったの?」
アンバーが口を挟んできた。
「みんなは知ってたの!?」
「知ってるも何も私たち王族だよ?」
「んなっ!?」
アンバーがサラッとそう言うので驚きでよく分かんない音になった。
「教えてなかったんですか?」
伯母が父にそう聞く。
「いや、ちゃんと言ってきたつもりだったんだが…」
父は私を見ながら、ん〜?と考えている。
「も、もしかして、パパがママをお姫様だよって言ってたのって比喩じゃなくて…本当にってこと?」
「そうだよ」
「そんなーーーー!!!!!」
18歳の誕生日、自分が王族だということを知った。
だからと言って私の生活が変わるわけではないと思っていた。
ここからの人生が母に負けず劣らずの波瀾万丈な人生になるなんて、あの頃の私は知る由もなかった。
まぁ、人生なんてたいがい予想のつかないものだよね。
ねっ、ママ。
ルチルの話はこれでおしまいです。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
ブックマーク、いいね、評価をしていただけて嬉しかったです。
途中、投稿が途絶えてしまったりして
完結まで時間がかかってしまいましたが
最後まで書き上げることが出来ホッとしています。
本当にありがとうございました。




