表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/24

19話『私自身のため』

最終話まで毎日、投稿していきます。



 別れは突然やって来るということを分かっていたはずなのに。



 -------------------------



 意識を失い、次に目を覚ましたのは2日後だった。

目覚めてすぐオブシディアン様がやって来てくださり、魔法で倦怠感をとってくれた。

「ありがとうございます」

「いえ、お礼を言わなければならないのは私の方です。妃殿下は私たち夫婦の恩人です。ありがとうございました」

オブシディアン様は柔らかく微笑んだ。

釣られるようにして私も自然と微笑んだ。

「ヴェルーリヤ様は大丈夫ですか?」

私の治療で得意ではない魔法を毎晩使い、体の調子を崩したと聞いている。

「はい。調子が戻り、いつも通り双子に振り回されています」

オブシディアン様の顔がより一層穏やかになる。

「そうですか。それは良かった」


 オブシディアン様と入れ替わるようにディアマンテ様がいらしゃった。

「体の方はどうだ?」

そう聞きながらベッドサイドの椅子に腰掛けるディアマンテ様。

「もう大丈夫そうです。先程オブシディアン様がいらしゃってくださり、魔法で身体を軽くしてくれました」

「そうか。それでも、無理は禁物だ。もうしばらく療養するように」

「…はい」

ガッカリして返事が少し遅れた。

「そんな顔をするな。部屋に閉じこもっていろとは言ってない」

ディアマンテ様の言葉に顔を上げるとディアマンテ様にケラケラ笑われた。


 顔にまで出ていたなんて…


 私は恥ずかしさに両手で顔を覆う。

「そんなに嬉しいか?」

ディアマンテ様は優しく私の頭を撫でてくれた。

「はい。クォーツ国にいる時は一度体調を崩すと1ヶ月近く自室から出ることが出来ませんでしたから」

過保護な両親、特に母が部屋の外に出ることを禁止してきたし、会える人も制限されていた。

私はそろそろと両手を下げていく。

「そうか…。あちらでは分からぬがこちらでは回復してきたら太陽の日差しを浴びて、外の空気を吸うことが推奨されている。体のためにも心のためにも」

「そうなのですね」

そういえばクォーツ国にいる時も侍医が太陽を浴びろと言っていたことを思い出した。

あの時は部屋の中、窓ガラス越しにしか日差しを浴びれなかったな。

「妃教育や公務は休むこと。それ以外は無理のない程度に過ごしてくれればいい」

「ありがとうございます」

私がそう答えるとディアマンテ様は優しく微笑んでくださった。


 何気ない会話を少しした後、私は気になっていたことを聞いた。

「ディアマンテ様。…オパールはどうなったのでしょう?」

先程まで柔らかかった表情が険しいものになった。

「…息子のことは聞いたか?」

「はい」

ご子息は無事助けることが出来た。

劣悪な環境にたった1人で放置されていて、あと1日でも遅かったら危なかったそうだ。

「息子を救い出した後、伯爵を捕らえ、伯爵家とオパールの実家、侯爵家と前侯爵が現在住んでいる家を強制捜査した。結果、伯爵と前侯爵の間で交わされていた取引が見つかり、伯爵と前侯爵は捕まり、両家ともに降格処分になった」

「取引とは?」

「ルチルを毒殺し、伯爵の娘を私の妃にすること。それが上手くいけば伯爵に自分の持っている土地と密輸事業を譲るというものだった」

「密輸?」

「あぁ。密輸と言っても商品は人だ」

「!?」

私は驚きで声が出なかった。

「戦争が徐々に減ってきていて、国内は平和だ。それに伴い、移民を受け入れることで、奴隷文化も消えつつある。だが、それをよく思わない者もいる。主に奴隷商だ。そこを前侯爵は逆手に取った。奴隷として無理なら移民としてこちらに入れてしまえばいいとな」

「しかし、それではメリットがないと思うのですが…」

奴隷商ばかりがいい思いをすることになる。

「移民申請が通れば、後はこちらのものだ。前侯爵はそのコネクションでオークションを開催し奴隷を必要としている者に高値で売りつけていた」

「そんな…」

あまりのことに言葉が続かなかった。

「元々、違法な奴隷オークションや移民問題については年々増えてきていて、議題にも上がるくらいだったからな。今回のことで違法な奴隷オークションについても情報が手に入ったから取り締まりも厳しくしていける」

ショックで下を向き、口を噤んだ私の頭をディアマンテ様は再度撫でてくださった。

ほんの少し気持ちが軽くなったような気がした。


 その後、伯爵は爵位を剥奪。

伯爵家は男爵家に降格、伯爵の妹の夫が当主代理になった。

侯爵家は伯爵家に降格。

オパールの父は当主の座を退き、オパールのいとこが後を継いだ。

伯爵と前侯爵、オパールの祖父はそれぞれ監獄に収容されるらしい。

オパールの父は早々にオパールの祖父に見限られていたらしく、密輸やオークションについて知ってはいたが携わってはいなかったことを考慮された罰則になった。


 そして、オパールは…。

私の侍女の任を解かれ、国外追放となった。

オパールの置かれた状況と私からの強い要望で、家族と、子供と、会えなくなる可能性の高い、監獄や修道院ではなく、国外追放が選ばれた。

オパールは息子と共に国を出ることになった。

もう二度とアジュール王国に足を踏み入れることはできないが、愛する息子とは一緒にいられる。

それが幸せなことかは分からないが息子のために行動を起こした彼女にはマシな罰だとは思う。

…正直な話、オパールがいなくなることが怖い。

彼女のためも、私自身のためにも、お別れをする。


 「オパールが国を出る日が決まった」

それは突然のことで必然なことだった。




明日は19時に投稿予定です。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ