18話『あなたの笑顔』
最終話まで毎日、投稿していきます。
次、逢う時はどうか、また、あなたの笑顔に逢えますように。
-------------------------
オブシディアン様が私の部屋にやってきた。
「妃殿下、ご無事でなによりです」
「オブシディアン様が直ぐに魔法で私を治療してくださったと聞きました。オブシディアン様のおかげです」
少し痩せたように感じるオブシディアン様は柔らかく微笑んでくださった。
私はまずオブシディアン様の幽閉を解いてほしいと願い出たのだ。
「それで。犯人は誰なんだ」
陛下が口を開いた。
皆の視線が私に向けられる。
「お呼びでしょうか」
「オパール」
私はオパールを呼んでもらうように頼んだ。
オパールは身体をお越しベッドの上にいる私を見るとわずかに目を見開きホッと一息ついたように感じた。
「オパール、なぜ私に毒を盛らねばならなかったのか教えてくれる」
「!?」
オパールのモスグリーンの瞳が大きく見開かれる。
周りにいた者たちの視線が私とオパールに向けられる。
「あの時、ハーブティーに細工ができたのは限られた人のみ。オブシディアン様は瓶をヴェルーリヤ様から預かって持ってきただけだと聞きました。そして、私が自ら毒を飲むことはない。そんなことをしたら祖国に迷惑をかけてしまいますからね。瓶を開けた時嗅いだ香りと、貴女が淹れて持ってきてくれたハーブティーの香りは違った。最初はお湯を入れると香りが変わる物なのかと思っていましたが、口に含んでみて、それは違うとわかりました。貴女はお茶の準備をお願いした時にカップと瓶に毒を混ぜた、違うかしら」
オパールの瞳を見つめ、そう問う。
オパールは見開いていた目をゆっくりと閉じるともう一度開き、私を真っ直ぐ見つめてきた。
「…いえ。おっしゃる通りです」
オパールの瞳には覚悟が宿っていた。
「なぜ…」
そう口を開いたのはディアマンテ様だった。
ディアマンテ様は信じられないと言った顔でオパールを見つめている。
オパールはディアマンテ様の方を向いた。
「殿下のご期待を裏切ってしまう形になってしまい、申し訳ありませんでした」
オパールは深々と頭を下げた。
「しかし、私にはこうするしか方法が見つからなかったのです」
視線を下に向けたまま、頭は上げた。
「…息子が人質に取られています」
「っ!」
そういうことだったのね…
「どういうことだ!?」
ディアマンテ様がオパールに詰め寄る。
「妃殿下に毒を盛らねば息子を殺すと」
「誰に?」
冷静にオブシディアン様がそう問う。
「…主人に」
そう答えるオパールの表情は苦しそうに歪んでいる。
「伯爵が!?」
ディアマンテ様の瞳が見開かれた。
「はい」
「伯爵ならやりそうだな」
「兄上…」
ディアマンテ様はオブシディアン様の冷静な判断になんとも言えない顔になった。
「私がいなくなれば、自分の娘をディアマンテ様に当てがえることができる」
私はオパールを見つめ静かに口を開くとオパールは小さく頷いた。
「嫁いだ時からずっと言われ続けていました。娘たちを殿下に勧めろと。殿下が妃殿下とご結婚なさって私が侍女に選ばれると今度は側室に勧めろと言われました。しかし、殿下に側室を持つ意思がないことは知っていましたので伝えることもなく、ただ私は妃殿下に仕えるだけでした。それが気に食わなかったのか、ジッと待つ事が出来なくなったのか、私に毒を渡してきました。もちろん、断りました。いつの間にか私は妃殿下をお慕いするようになっていましたので」
オパールは下げていた視線を私に向け、力なく笑った。
「でも…」
そこで唇を噛み、言葉が続かなくなってしまったようだ。
「ご子息を人質に取られてしまった」
私が口を挟むとオパールはまた小さく頷いた。
「…今、息子は主人に連れ去られて、監禁されています。私が妃殿下に毒を盛らねば息子を殺すと…」
オパールの瞳に涙が溜まっていくのがわかった。
「申し訳ありません!息子と妃殿下の命を比べてしまいました」
オパールは床に座り込み、額を床につけるようにして謝ってきた。
「でも、私は死ななかった」
そう。
オブシディアン様とヴェルーリヤ様のおかげで私は今もこうして生きている。
「…どちらかを選ぶなんて出来ませんでした。どちらも私には大切な存在なんです!妃殿下も息子も助ける方法はこれしかないと思ったのです。冷静な判断ができなかった。少量、1滴なら大丈夫だと、妃殿下のお身体のことを全くもって考慮していなかった」
「ありがとう。1滴だったから私は今こうして生きて貴女と言葉を交わすことができてる」
そう致死量はおろか、もう1滴でも毒を盛られていれば私は確実に死んでいただろう。
「!?おやめください!感謝されるようなことではありません!!」
オパールが顔を上げた。
「それでご子息は解放されたの?」
そう問うとオパールの顔が歪んだ。
「…まだなのね」
「はい」
「なら、早急に助け出さなくちゃね」
「っ!?」
オパールの瞳が大きく見開いた。
「よろしいでしょうか陛下」
「あぁ。この件はディアマンテと貴女に任せる」
私は陛下に感謝を込め頭を下げた。
陛下の隣にいたペリドット様が柔らかく微笑み、頷いてくれた。
「貴女の処分はご子息を助け出した後に決めましょう」
私がにっこりと笑いかけるとオパールはボロボロと涙を流し始めた。
「っ…ありがとうございますっ…ありがとうっ…ございますっ…」
泣き崩れるオパールを近衛騎士たちが別室に連れていく。
陛下とペリドット様、オブシディアン様も私の部屋を後にした。
私は起こしていた身体をまたベッドに沈めた。
「ディアマンテ様」
「どうした、ルチル?」
私の呼びかけに少し離れたところにいたディアマンテ様がベッドサイドまで来て答えてくれる。
「後のことを頼んでもよろしいでしょうか」
「あぁ」
「どうかオパールにもう一度ご子息を会わせてあげてください」
そう言うとディアマンテ様の眉間に皺がよった。
「…わかった。悪いようにはしない。だから、もう休め」
ディアマンテ様は私の頭を軽く撫でてくれた。
「お願いしますね」
ふふふと笑うとディアマンテ様は少し不機嫌そうに、困ったような顔をした。
そこで私の意識はまた途絶えた。
明日は18時に投稿予定です。
よろしくお願いします。




