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17話『愛する者のためならば』

最終話まで毎日、投稿していきます。



 愛する者のためならば手段を選んでいる暇はない。



 -------------------------



 いつまで経っても私は。

どこにいたって私は。

誰かに迷惑かけて生きていくしか出来ない。

そんな風でしか生きていくことが出来ない自分が嫌になる。

だから、せめて私の周りの人には幸せでいてほしい。

都合のいいことを、綺麗事を言っていることはわかっている。

これは私のワガママだ。

大切な人たちを笑顔にする。

そんな当たり前なことも私には出来ない。

私が出来ることは心配をかけること。

だから、私じゃなくてもいい。

私以外の人があなたを笑顔に幸せにしてくれればいい。

そんな心にもないことを自分に言い聞かせてきた。

でも、本当は私が貴方を幸せにしたい。

私に向けられる笑顔が私だけのものであってほしい。


 そんなことを願ったからバチが当たったね。


「…うぅ、ん…」

体が鉛のように重い。

目を開けるのも口を開くのも重怠い。

「ルチル妃殿下!」

聞き覚えのある声が聞こえてくる。

「ヴェルー…リヤさ…ま?」

なんとかそう口にすると握られていた手から温かな光が全身を巡る。

「オブシディアン…さま?」

先程より少し話しやすくなった気がする。

握られている手に重みを感じた。

ゆっくり目を開けると私の手を握ったままヴェルーリヤ様が顔をベッドに埋めていた。

「!?ヴェ、ヴェルーリヤ様!」

私の問いかけにヴェルーリヤ様はキュッと握っている手に少し力を込めた。


 良かった…


「今、人を」

「ダメ…です」

「え?」

「もうすぐしたら殿下がいらっしゃいますから…大丈夫」

「わかりました。それまで私に出来ることはありますか?」

そう聞くとヴェルーリヤ様は顔を上げた。

「毒を盛った犯人、わかりますか?」

「…はい」

「それは…オブシディアン?」

「いえ、違います。!、まさかオブシディアン様が疑われているのですか!?」

「はい。…オブシディアンには…前科があります。だから…」

そうだ。

彼はディアマンテ様の母ペリドット様に毒を盛った過去がある。

だからか…。

だから、あの場だったのか。

コンコンと控えめなノックの後ディアマンテ様がお一人で寝室に入ってきた。

扉を閉めこちらを見た瞬間、スカイブルーの美しい瞳が大きく見開かれた。

私は身体を起こそうと身体を捩ると、固まったままだったディアマンテ様がすぐにこちらにやってきた。

そして、私の身体を抱きとめた。

「ディアマンテ様!?」

「良かった…本当に…本当に良かった」

ディアマンテ様が少し震えていることに気づいた。

「ご心配をおかけして申し訳ありません。私は大丈夫です。オブシディアン様を救い出しましょう」

ディアマンテ様は抱きしめていた腕を緩めると私の顔を覗き込んだ。

「ヴェルに聞いたのか」

「はい」

ベッドの反対側、扉の死角になるような位置にいるヴェルーリヤ様に視線を向けるディアマンテ様。

「オブシディアン様は今?」

「兄上は昔、幽閉されていた塔いる」

身体を起こそうとしていた私を寝かせ、ディアマンテ様は私が意識を失ってからのことを話してくださった。


 私が意識を失ってすぐオブシディアン様は魔法で私の体に毒が回らないようにしたらしい。

そして、あの場にいたもの全員に聞き取りをし、部屋中を調べたところオブシディアン様が持ってきた瓶、ハーブに毒が混入されていたことがわかったらしい。

前科のあるオブシディアン様はあっという間に拘束されてしまったそうだ。

それは私が意識を失った翌日のことだった。

そこからディアマンテ様は独自に動き出した。

そもそもハーブティーはヴェルーリヤ様お手製のものでオブシディアン様は持ってきただけである。

それを主張しようとしたがそれはオブシディアン様によって止められてしまった。

そんなことをしたらヴェルーリヤ様が捕えられてしまうからだ。

オブシディアン様はまずは私の回復が先だと言ってヴェルーリヤ様に私の治療を頼んだ。

しかし、ヴェルーリヤ様はオブシディアン様の妻。

毒を盛ったかもしれない者の身内を私に関わらせるのはいかがなものかと抗議の声が上がった。

仕方がないので表向きはヴェルーリヤ様に自宅謹慎を言い渡した。

だが、ヴェルーリヤ様は魔女。

魔法の鍵を使い、公爵邸から私の寝室を繋ぎ、夜な夜な私を治療していたそうだ。

本来ならヴェルーリヤ様の作った魔法薬で直ぐに解毒が出来たはずだった。

しかし、魔法薬を作るには盛られた毒の解析をし、必要なものを揃えなければならない。

だが、毒が混入されていた瓶やハーブティーを入れたポット、カップが紛失してしまったそうだ。

こうなってしまうと魔法薬を作ることは困難だ。

時間が惜しかったヴェルーリヤ様は得意ではない魔法を使って私の解毒と治療をすることにしたらしい。

解毒は早くに終わったのだが、回復に時間がかかった。

元々身体の弱い私は人の倍以上の時間が必要になった。

やっとこうして意識が戻ったのは事件から7日目のことだった。

ヴェルーリヤ様はまともに休むこともできていないのだろう、目の下に隈を作っている。


 ヴェルーリヤ様がここにいると大変なことになるので、後のことは任せてもらって公爵邸に帰ってもらった。

そこからディアマンテ様が私が目を覚ましたことを皆に伝えると国王陛下とペリドット様がいらっしゃった。

ガーネット様がいらっしゃらないことを不思議に思っているとペリドット様が自室で自主的に謹慎しているのだと教えてくださった。

「意識が戻って良かったわ」

ペリドット様が優しく私の手を握ってくださった。

「意識が戻って直ぐのところ申し訳ないが犯人について心当たりはないか」

陛下は私を労わりながらそう聞いてきた。

「ございます」

「誰だ」


私はしっかりと陛下の目を見て口を開いた。




明日は17時に投稿します。

よろしくお願いします。

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