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16話『突然のこと』

最終話まで毎日、投稿していきます。



 それはあまりにも突然すぎた。

でも、きっと必然なことだったのだろう。



 -------------------------



 それは突然のことだった。

「そろそろディアマンテに王位を譲ろうと考えている」

国王陛下と妃殿下方、オブシディアン様と私たち夫婦が揃い食事をとり、食後のデザートを楽しんでいた時、陛下が何気なくそう口にした。

皆、一斉に陛下の顔を見る。

驚きで誰も口を開けずにいた。

「そろそろというのは具体的には決まっていないということでしょうか?」

オブシディアン様が陛下にそう聞く。

「あぁ。まだ誰にも話してはいない。まずはお前たちに話そうと思ってな」

「そうですか」

「待ってください!私はまだまだ王位に就くには未熟すぎます!!」

我に帰ったディアマンテ様が口を挟んだ。

「そんなことはわかってる」

「でしたら!」

「しかし、そんなことを言っていたらキリがないだろう。私もいつまでも生きてるわけではない」

そう言われディアマンテ様は口を噤んでしまった。

「私とて未熟だ」

陛下は真っ直ぐディアマンテ様を見つめた。

「お前は自分の未熟な部分を認め、それを補ってくれる人材を見極めることが出来る。今のお前にはお前の未熟さを補ってくれる者達が出来ただろう。それに」

陛下の視線が私に向けられる。

「良き伴侶も得た」

陛下の目尻が柔らかくなったように感じた。

「元々お前たち2人が結婚したら隠居するつもりでいたんだ」

「そうでしたね」

ペリドット様が口を開いた。

「陛下とガーネットと昔そんな話をしていたのよ。2人が結婚したら早々に隠居しましょうって、ね」

ペリドット様がふふふと笑みを零した。

「えぇ。なかなか2人が結婚しなかったので忘れていました」

ガーネット様がジロリとオブシディアン様を見た。

「…申し訳ありませんでした」

オブシディアン様は少し気まずそうに謝っていた。

「明日、皆にもこの話をするつもりだ」

「わかりました」

オブシディアン様がそう答えると妃殿下方も頷いた。

ディアマンテ様は浮かない表情のままだ。


 王太子宮に戻り、私はヴェルーリヤ様から頂いたハーブティーを淹れてもらった。

「ディアマンテ様」

そう声をかけディアマンテ様にカップを差し出す。

「ありがとう」

ディアマンテ様は力なく笑い、カップを受け取った。

「…驚きましたね」

私は両手でカップを包み込みながらそう零した。

「あぁ。…いつかはこうなるとわかってはいたが…まさか、こんなにも早く…」

私たちが結婚してまだ半年過ぎたところだ。

停戦してからは1年以上が過ぎた。


 急過ぎると私たちは思ってしまうけど、陛下の中ではちゃんと段階を経てのことで全然急ではないのでしょうね。


 ハーブティーを一口、口に含むと少し緊張が解れた。

ホッと一息つくとディアマンテ様もハーブティーを口に含んだ。

「…ヴェルのハーブティーはやっぱり落ち着くな…」

「そうですね」

少しディアマンテ様の表情が和らいだ。

よかった。

そう思うと同時に胸がチクリと痛んだ。


 その翌日からディアマンテ様は今まで以上にお忙しくなり、私と顔を合わせるのは食事をとる時のみになった。

そんな生活が3ヶ月経とうとしていた。

私は私で、今までの妃教育に加えて王妃教育も始まり忙しくなった。

それでも身体を壊しては元も子もないということで五日に1回は丸一日休みを頂いている。

お休みの日は毎回オブシディアン様が会いに来てくださる。

「お加減はいかがですか妃殿下」

「疲れてはいますが大丈夫です」

そう答えるとオブシディアン様は私に手を差し出すように促してくる。

私が手を差し出すとオブシディアン様はその手を両手で包み込む。

すると柔らかい光が包み込んだ手から溢れる。

柔らかい光が私の手から体に向かい全身に回る頃には倦怠感が体から取れている。

「いつもありがとうございます」

感謝を伝えるとオブシディアン様は柔らかな笑みを浮かべ私の手を離した。

「オブシディアン様もお忙しいでしょう?ご無理はなさらないでくださいね」

「お心遣い感謝いたします」

「よろしければ少し休んで行ってください。特製のハーブティーがありますから、ご一緒してください」

「それでしたら、こちらを」

そう言ってオブシディアン様は何もない空間からハーブが詰まった瓶を取り出した。

これも魔法なのだろう。

「リラックス効果の高いハーブを調合した物です」

私は瓶を受け取ると蓋を開けて香りを楽しんだ。

「オパールこちらをお願いしても」

「…はい」

オパールの返事が少し遅れたことが気になった。

オパールが瓶を受け取り席を外した。

「ヴェルーリヤ様にありがとうと伝えてください」

「はい」

「いつも寝る前にヴェルーリヤ様のハーブティーを飲んでから寝ているんです。おかげで寝つきが良くなりました」

「それは良かった。妻も喜びます」

オブシディアン様はいつも柔らかな印象だが、ヴェルーリヤ様の話になると声色からも優しさが伝わってくるくらい柔くなる。

オブシディアン様と話しているとオパールがお茶の準備をして戻ってきた。

オパールはカップをオブシディアン様と私の前に置くとさっきまでいた場所に戻る。

私はカップを手に取ると口元に近づけた。


 あら?香りが少し違う?


 さっき瓶を開けて嗅いだ香りと少し違うような気がした。

お茶の種類によってはお湯を注ぐと香りが変わるものもある。

このハーブティーもそういったものと同じなのかもしれない。

私は一応用心のため口に含む量をいつもより少なめにした。

口に含んだハーブティーの香りを確かめようと直ぐには飲み込まず、口の中で確かめようと思った時ピリッと刺すような痛みが舌の上で感じた。

「!?」

ペッとハーブティーを吐き出しオブシディアン様の手にあるカップを奪い、中に入っているハーブティーを床に捨てた。

「妃殿下!?」

すぐに吐き出したものの口の中がいまだに痛い。

痛みのあまり、ゴホゴホと咳き込んでしまった。

「っ…ど、どく…」

なんとかそれだけ伝えると私の視界はぼやけてくる。

「妃殿下!」

オブシディアン様が近づいてくるのがぼやけた視界でもわかった。

「…な、ぜ…」

その言葉を最後に私は意識を手放した。


 なぜ、あなたがこんなことをしなければいけなかったの。




明日は16時に投稿予定です。

よろしくお願いします。

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