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14話『年相応の女の子』

最終話まで毎日、投稿していきます。



 願いというものはほとんどのものが叶うことなく、いつしか忘れ去られていく。



 -------------------------



 トパーズと話していると隣から声をかけられた。

「パール様…」

「申し訳ございません。オパール様の名前が聞こえてきましたので聞き耳を立ててしまいました」

パールは母、侯爵夫人と別行動をとっているようで1人だった。

「パール様はオパールについて何か思うところがあるということでいいのかしら?」

「はい。妃殿下には失礼なことを言うことになってしまうと思うのですが、よろしいでしょうか?」

彼女のはっきりとものを言うところにとても好感が持てる。

「構わないわ」

「ありがとうございます」

軽く礼をしたパールは私の目をしっかりと見た。

「私は幼い頃からオパール様とディアマンテ殿下が仲睦まじくしていらっしゃるところを目にしてきました。お互いにお互いを大切に想い合っていらっしゃると感じておりました。ディアマンテ殿下の行動力とオパール様の冷静な観察力があればこの国は安泰だと、お二人が統べる未来に希望を抱いていました。…ですが、それは遠い夢になってしまった」

「オパールが伯爵家に嫁いでしまったから…」

私がポツリとそう零すとパールは目を伏せ頷いた。

「間もなくして、私はディアマンテ殿下の婚約者候補になりました。その時決めたのです、オパール様に抱いた夢を私自身で実現しようと。しかし、それも叶わぬ夢になってしまった。そんな時オパール様が侍女として戻ってくると知りました。…嬉しかった」

パールは少しだけ笑みを浮かべた。

しかし、その笑みはすぐに消えてしまった。

「でも、ディアマンテ殿下の隣ではなく貴女の後ろに控えている。それが正しいことだということは分かっているのです…ですが…。ですが、やはりディアマンテ殿下のお隣には…」

パールはそこで口を噤んだ。


 大人びて見えていたのは憧れのオパールを真似ていたからだったのね…


 今、目の前にいるパールは年相応の女の子に見える。

「私は今でも殿下のお隣にはオパール様にいていただきたい。そんな風に考えてしまいます」

パールは小さな声だがはっきりと聞こえる声で言い切った。

私は何と応えたらいいのか分からず口を開けなかった。

隣にいるトパーズの顔色はより一層悪くなっている様に感じる。


「妃殿下」

後ろから小さな声で呼びかけられた。

気づくとオパールが娘たちと別れこちらにやってきていた。

「お加減がよろしくないのでは?顔色があまり良くない気がします」


 よく気がつく。

さりげない優しさをくれる。

一緒にいて嫌な気がしない。

…それに体も丈夫だ。

こういう人の方が上に立つ者として相応しいということは私にもわかる。


 私はオパールに微笑んだ。

「大丈夫よ。ありがとう」

「…わかりました。しかし、無理は禁物ですよ」

「えぇ」

少し疑うような顔をしているオパールに私は短く返事をした。

「妃殿下、私はここで失礼させていただきます」

「分かったわ。話し相手になってくださってありがとう」

「…いえ」

短い返事をしパールは美しいカーテシーをとった。

「トパーズ様もありがとう」

「滅相もございません」

カーテシーをとったトパーズとパールの元を後にする。


 パーティーが終盤に差しかかった頃ディアマンテ様がいらっしゃった。

「仕事が早く片付いたから、気になって寄ってみたのだが、もうおしまいか?」

「えぇ、そろそろご挨拶をしようかと思っていたところです」

「そうか」

ディアマンテ様は温室をゆっくりと見渡すと柔らかい笑みを浮かべた。

「ここはいつ来ても美しい…」

おそらく今、ディアマンテ様の頭にはあの薬草畑が浮かんでいるのだろう。

ディアマンテ様と過ごしてきて少しだが彼のことが分かってきた。

元々、人当たりが良く、人懐っこい笑顔を見せるディアマンテ様だが、オブシディアン様とヴェルーリヤ様のことになるとより一層表情が柔らかくなる。

お二人のことをとても大切に想っていらっしゃる。


なんとか無事パーティーを終えることが出来、ホッとすることが出来たのも束の間、元婚約者候補の方々から聞いた話が頭の中をグルグルと回る。

オパールがディアマンテ様のことをお慕いしていたこと。

今でもお慕いしている可能性が高いこと。

周りはオパールを次期王太子妃として認めていたこと。


 オパールが今でもディアマンテ様をお慕いしているかどうかはわからずじまいね。


一緒に過ごしていてもオパールとディアマンテ様が話をすることはほとんどないし、オパールがディアマンテ様をそういった目で見ているところを見たことはない。

周りに認められていたというのはわかる気がする。

先を読む能力に長けているのだろう。

こちらが頼む前にすでに動いていてくれていることが多々ある。

オパールは私の目から見ても、とても優秀だ。

ディアマンテ様の補佐をしていたということも納得できる。


 ディアマンテ様はオパールのことをどう思っていたのかしら…


 そんなことをグルグルと考えている内にいつの間にか日は落ち、眠る時間になっていた。

いつものようにディアマンテ様がいらっしゃった。

「今日はよくやったな。疲れただろう。明日は休みだからゆっくり休むといい」

「ありがとうございます」

ディアマンテ様はそう言って柔らかく微笑み、頭を軽く撫でてくださった。

最近、ディアマンテ様は時々こうして頭を撫でてくださる。

こうされると懐かしいような、嬉しいような、恥ずかしいような、そんな複雑な気持ちになる。

私の気持ちを知ってか知らずかディアマンテ様は撫でていた手をゆっくりと髪に滑らせていった。

「問題はなかったか?」

「……はい」

「本当に?」

私の返事が一瞬遅れたことに気づいたディアマンテ様が私の目を覗き込む。

「…パーティーに問題はありませんでした」

微笑みながらそう返す。

「パーティー以外に問題があったのか?」

痛いところをついてきた。

「…元婚約者候補の方々に聞いたのです。…オパールとディアマンテ様のことを」

「私とオパールのこと?」

「はい。オパールがとても優秀で、周りもオパールを王太子妃に推していたと」

オパールがディアマンテ様をお慕いしていたこと、今現在もお慕いしているんじゃないかということは伏せておこう。

「あぁ…」

ディアマンテ様はそんなこともあったなぁといったような顔で視線を上げる。

「オパールが元婚約者候補だったことも、とても優秀なことも知っていましたが…」

言葉が続かず、そこで途絶えてしまった。


「私は不出来な王子だったからな」




明日もよろしくお願いします。

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