12話『血の繋がり』
最終話まで毎日、投稿していきます。
たとえ血の繋がりがなくとも家族になることは出来るのだと彼女たちが教えてくれた。
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温室でガーデンパーティーを開くことが決まり、本格的にガーデンパーティーの準備が始まった。
会場のセッティング、料理や飲み物、招待客、決めることがあり過ぎて毎日頭を悩ませる。
中でも1番悩まさせるのが招待客だ。
私には仲の良いご夫人方がいる訳ではない。
となると、招待する方々はアジュール王国の貴族ほぼ全員になる。
しかし、派閥がある。
今は昔ほど激しくはないがオブシディアン様が事件を起こす前、ディアマンテ様が王太子になる前までは、オブシディアン様を王太子に推す派閥とディアマンテ様を王太子に推す派閥がぶつかり合っていたらしい。
それもディアマンテ様が王太子になられて、少しは落ち着いたらしいが派閥がなくなった訳ではない。
どうしたものかと頭を悩ませていると胃が痛くなる。
「妃殿下、お休みになられてはいかがでしょう?」
「…そうね」
行き詰まりかけるとこうしてオパールが声をかけてくれる。
オパールも大変なのに本当に助かる。
ヴェルーリヤ様からいただいたハーブティーをオパールが入れてくれた。
「ありがとう」
柔らかく優しい香りが心を軽くしてくれる。
口に含むとより一層穏やかな気持ちになる。
オパールはほとんど毎日、朝から夕方まで私についていてくれる。
元侯爵令嬢で、21歳の時伯爵家に後妻として嫁ぎ、現在25歳。
伯爵家には娘が2人いたが息子はおらず、前妻は流行病でなくなったそうだ。
オパールは嫁いで直ぐ男の子を身篭り、その子はもうすぐ4歳になる。
前妻の子である姉たちに、ものすごく懐いており、姉たちも弟を溺愛しているらしい。
娘たちのおかげでこうして私の侍女として安心して働けると言う。
「旦那様より娘たちの方が歳が近いのですが、本当に素敵な子たちで直ぐに私を家族として受け入れてくれたのです」
そう言うオパールは母親の顔をしていた。
「しっかりとした娘たちで息子を甘やかすだけでなく、良いことも悪いこともちゃんと伝えてくれるので私が叱ることはほとんどないんです」
「素敵な娘さんたちね。ガーデンパーティでお会い出来るのを楽しみにしているわ」
「ありがとうございます。娘たちも喜ぶと思います」
少し憂鬱だった気持ちがオパールのおかげで晴れた。
ガーデンパーティーまで1ヶ月を切り、毎日が慌ただしく過ぎていく。
「招待客は決まったか?」
「はい。先週、招待状を送りました」
夜は毎日ディアマンテ様にガーデンパーティーの進捗を報告する。
今回のガーデンパーティーは女性だけを呼ぶことにした。
温室自体がそこまで広くなく、席を作るのが難しかったのだ。
決まった席を設けるのもやめた。
席順で悩みに悩んで胃に穴が空きそうだったところに、ガーネット様の一言のおかげで決めることができた。
『席を決めたとてパーティーが始まれば皆、席を外し、仲の良い者同士集まり、仲の悪い派閥同士腹の探り合いを始めるのだから、席なんてあってないようなものよ』
それならご自由にどうぞと決まった席を設けなかった。
「大変だっただろう」
「はい…とても…」
私が胃の辺りを押さえながらそう呟くとディアマンテ様は苦笑いした。
「もう少しの辛抱だな」
「はい」
1番の悩みの種がなくなったとはいえ、まだまだやることはたくさんある。
「終わったら少し休暇をとるか。久しぶりにヴェルに会いに行こう」
「!もうお身体大丈夫なんですか?」
ヴェルーリヤ様とは未だに会えていなかった。
「あぁ。やっと双子との生活にも慣れてきたらしい」
「そうなんですね。良かったです」
ヴェルーリヤ様は男の子と女の子の双子をご出産なさったそうだ。
「私は会ったことがあるがルチルは双子とまだ会ったことないだろう」
「はい。ずっとお会いしたいなぁと思っていたのです」
「そうか。ガーデンパーティーが終わったら会いに行こう」
「はい!楽しみです」
思いがけず出来たご褒美に憂鬱だった気持ちがどこかへ飛んで行った。
あっという間にガーデンパーティー当日になってしまった。
当日の朝まで本当に終わるのだろうかと思っていた準備も滞りなく終わり、あとはお客様が来るだけとなった。
開始時間10分前になり、続々招待客がやって来た。
ちゃんとお客様が来てくれたことに少しホッとし、私も温室に向かう。
開始時間になり、温室の中に入り挨拶をする。
「皆様。今日は私主催のパーティーにお越しくださり誠に感謝いたします。皆様への感謝を込めましたので、どうぞゆっくりとおくつろぎください」
挨拶を終えると次は一人一人に挨拶しに行く。
私にガーデンパーティーを楽しんでいる余裕はない。
「ごきげんよう、侯爵夫人」
まず最初に挨拶するのはパールとパールの母である侯爵夫人。
今現在、公爵家はオブシディアン様の家1つしかなく、その公爵家の女性はヴェルーリヤ様しかいない。
ヴェルーリヤ様は今回欠席。
となると今日の招待客の中で1番爵位が上なのが侯爵家になる。
「今日はお招きいただきありがとうございます、妃殿下」
侯爵夫人はパールと同じサーモンピンクの髪にエメラルドグリーンの瞳だが、パールとは違い柔らかな印象を持っている。
パールの顔立ちは父親似なのだろう。
「お二人ともゆっくりと過ごしてくださいね」
「お心遣いありがとうございます」
やはり17歳とは思えぬほどの落ち着きでパールは綺麗な礼をとった。
次に挨拶するのはオパールの母である侯爵夫人。
「妃殿下、娘はよくやっているでしょうか?」
オパールと同じモスグリーンの瞳に少しの不安を滲ませてそう問いかけてきた。
「お母様…」
オパールは少しため息をついた。
私はその光景が微笑ましくてクスリと笑ってしまった。
「大丈夫ですよ。オパールはとてもよくやってくれております。とても頼りにしているのですよ」
オパールをチラリと見ると少し照れくさそうにしている。
「本当ですか!それは良かったです。これからもどうぞよろしくお願いいたします」
「こちらこそ」
侯爵夫人は安心したのか、さっきまでの不安気な顔からとても素敵な笑顔に変わっていた。
侯爵家への挨拶が終わったら伯爵家だ。
1番最初はオパールが嫁いだ伯爵家のご令嬢方。
「ごきげんよう」
「ごきげんよう、妃殿下」
ご令嬢方は綺麗なカーテシーをとった。
「本日はお招きいただき誠にありがとうございます」
オパールとは血が繋がっていないはずなのにどことなくオパールに似ている。
「妃殿下、娘たちを紹介させてもらってもよろしいでしょうか?」
オパールが声をかけてきた。
「えぇ、お願いするわ」
オパールは娘たちの横に行き1人ずつ紹介してくれる。
挨拶をしてくれた姉のデーナは15歳、妹のティールは10歳。
姉妹揃ってとてもしっかりしている。
赤紫色の髪と青紫色の瞳をしていてルビーに似ている気がした。
後で知ったのだがルビーの母は彼女たちの母と姉妹だった。
2人ともとても落ち着いた色の綺麗なドレスを着ている。
今日のドレスはオパールと合わせているようで、誰が見ても素敵な親子だと思うだろう。
オパールに娘たちとの時間をあげ、私は次の挨拶に向かった。
「ごきげんよう、伯爵夫人」
ルビーの家だ。
明日もよろしくお願いします。




