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11話『庭園の先』

今日から最終話まで毎日、1話ずつ投稿します。

よろしくお願いします。



 豪華で煌びやかに咲き誇る花よりも控えめだけど凛と佇む花の方に心惹かれる。



 -------------------------



 どれくらい寝ていたのだろうか。

目を覚ますと部屋はオレンジ色に染まっていた。

額にのせられた手ぬぐいを取ろうとしたら誰かの手が先に動いて手ぬぐいが取られる。

「目が覚めましたか?」

声の主は私の顔を覗き込んできた。

起き抜けでまだ視界がボヤけているが似紫色の髪でその人が誰か分かった。

「申し訳ありません。ガーネット様」

体を起こそうとするとガーネット様に止められた。

仕方がないのでベッドに寝たまま話すことにした。

「医師の話では疲れが溜まっていたのだろうと。ゆっくり休めば大丈夫だと言っていました」

「申し訳ありません」

「そんなに謝ってばかりじゃ身体に悪いですよ」

扉の向こうからペリドット様が柔らかな笑みを浮かべてやってきた。

私が体を起こそうとするとガーネット様が手を貸してくださった。

「オブシディアンがハーブティーを持ってきてくれたの。飲めそうかしら?」

ペリドット様自らティーポットからハーブティーを注ぐ。

ずっと寝ていたから喉は乾いている。

私はペリドット様からカップを受け取るとゆっくり口をつけた。

柔らかな香りと温かさにホッと心が休まる。

このハーブティーはヴェルーリヤ様からいただいたものと同じだと気づいたら、余計に心が和らぐ。

ゆっくりとハーブティーを味わった。


 お二人が部屋を去った直ぐ後、ディアマンテ様が様子を見に来てくださった。

「起きていて大丈夫なのか?」

そう聞きながらディアマンテ様はベッドサイドの椅子に腰掛けた。

「はい。熱も下がったようですし、オブシディアン様からいただいたハーブティーのおかげで身体も温まりました」

「そうか。ハーブティーはヴェルのお手製だろうからよく効くと思う」

ディアマンテ様はニッコリと笑いながらベッドサイドに置かれていたティーポットに視線を向けた。

「はい」

釣られるように私も笑みを浮かべた。

「母上たちが来たと聞いたが」

「はい。お二方ともとても良くしてくださりました」

私がそう答えるとディアマンテ様は少し柔らかな笑みを浮かべた。

「そういえば、もう母上たちから聞いただろうか?」

何のことだろうと首をかしげる。

「妃教育は母上たちが自ら教えてくださるそうだ」

「そうなのですか!」

「あぁ。母上はガーネット様の時も自ら教えたようで、今度もと。ガーネット様は母上の補佐をすると申し出てくれたんだ」

「まぁ!」

様々なことを学ぶ妃教育は学ぶものによって指導してくださる方も変わるのが一般的だ。

それを妃殿下方が自ら教えてくださる。

ご自身の体験を元にした教えはとても貴重だ。

本当に有難い。

嬉しくて声を弾ませた私にディアマンテ様は優しく微笑んでくださった。

「詳しいことは後日話そう。しばらくは体調を整えることに集中することだ」

「はい」

私がベッドに横になるのを見守ってディアマンテ様は部屋をあとにした。


 式から約1ヶ月ほど経ち、私の妃教育が始まった。

あの後、体調を整えるのに10日ほどかかってしまい、中々妃教育に入ることが出来なかった。

一度、体調を崩すと元に戻すのに時間がかかってしまう。

それでも何時もより早めに体調を整えられたのはオブシディアン様とヴェルーリヤ様のおかげだ。

オブシディアン様が少しずつ倦怠感を取って下さり、ヴェルーリヤ様が作ってくださったハーブティーを毎日飲んでいたおかげ。

お二人には本当に感謝している。

妃教育は順調に進んでいるらしい。

元々王女として他国の知識をそれなりに持っていたので他国に関してはおさらい程度で済んだ。

ペリドット様はとても優しく教えて下さり、ガーネット様もとても教えるのが上手でお二人との時間はとても有意義だった。


「そろそろ、実戦といったところかしら?」

妃教育の後、恒例となったティータイム中ペリドット様がそう口に出した。

「実戦ですか?」

「えぇ。ルチル様がアジュール王国にいらしてもう3ヶ月になるでしょう。そろそろ王族以外と話してみるのもいいと思うの。ルチル様主催でお茶会でも夜会でもいいからやってみましょう」

ペリドット様はニッコリと笑いながらそう提案してきた。

「分かりました」


 分かったと言ったものの、私主催のパーティーなどまともに開いたことがなかった。

あったとしても小規模で人も会場も決められてしまっている状態のものしかなかった。

どうしたものかと途方に暮れ始めたので気分転換に庭園を散策することにした。

たくさんの種類、色とりどりの花が美しく咲き誇っている。

ふと、庭園の先に視線を向けると温室を見つけた。

「オパール。あの温室は?」

側に控えてくれているオパールに問いかけた。

「あちらはガーネット様が管理されていらっしゃる温室です」

「ガーネット様が…」

「元々はオブシディアン様の研究用に作られたものでしたがオブシディアン様がご結婚され、城を出られた後はガーネット様が管理されております」

「入っても大丈夫かしら?」

「王族ならば大丈夫でございます」

「そう」

温室の前には騎士が立っており、入ってもいいかと尋ねるとどうぞと言葉のかわりに礼をとられた。

温室の中にはオブシディアン様とヴェルーリヤ様に初めて会ったあの場所によく似た花が咲いていた。

ここは薬草を育てているのだと分かった。

「…オパール」

「はい」

「ガーネット様にお会いしたいのだけど」

「分かりました」


「あの温室でパーティーを?」

ガーネット様を訪ねたのはパーティーの会場としてあの温室を使いたいと思ったから。

「はい。ガーネット様が温室を管理していらっしゃるとお聞きしまして、許可をいただけるでしょうか?」

「構いませんが、あの温室で育てているのは薬草ですよ。庭園の方がよろしいのでは?」

「庭園が素晴らしいのはもちろんのことですが、私はあの温室がとても気に入りました。控えめですがとても美しくて心が穏やかになります」

確かに庭園は美しく煌びやかでガーデンパーティーの会場としてはこれ以上にないと思う。

しかし、それだけでは足りない。

私が開くパーティだ。

私が好きな場所に招待したい。

「…そうですか」

そう言ったガーネット様の口元がほんの少し柔らかく微笑みを浮かべた。


 ガーネット様に許可を取り、ペリドット様にご報告するとペリドット様もとても柔らかい微笑みを浮かべてくださった。




明日も読んでくださると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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