車を運転するにおいて絶対に守るべきものとは何か
私は仕事で1年に10万km以上の距離を走ります。
安全運転に気をつけていますので、交通事故はゼロです……と、言いたいところですが、残念ながら9年間で3回あります。
うち2件は相手の車に点ほどの傷がついた事故、1件は去年エッセイにも書いた自分の車がグシャグシャになった事故です。正直悔しいです。
さて、タイトルに掲げた『車を運転するにおいて絶対に守るべきもの』とは何だと思いますか?
道路交通法でしょうか?
違います、と私は断言します。
車を運転するにおいて絶対に守るべきもの……それは道路交通法の理念である『安全』と『円滑』です。
その理念に基づいた道路交通法を守ればそれは実現されるのでしょうか?
「そうだ!」と、ここで大半の方が誤解をしている、と私は思っています。
状況によっては道路交通法に違反したほうが安全であり円滑である場合も多々あります。
それについて私が日々思っていることを書いてみたいと思います。
まず『安全』と『円滑』とは何でしょうか?
普通に考えて『事故を起こさず』『渋滞を作らない』ということだと私は思います。
それはつまり、こう言い換えることが出来るように思います。
『他の交通と無駄にぶつからないこと』
もちろん接触するのは事故になりますので、『ぶつからない』というのは広い意味になります。
無駄に他の車に接近しない、ペースの速い車をムカつかせない、ペースの遅い車が前にいてもムカムカしない、離れて走る、みたいなことです。
ところで『優先側』という考え方、ありますよね?
右折と直進なら、直進が優先、みたいなやつ。
ここで日頃よく見る光景があります。
右折しようとしている車が、直進して来る対向車が遠くにいるので、右折を始めたら、直進側が「こっちが優先だろうがーッ!」みたいにハイビーム食らわせながらスピード上げて飛んで来る。
危険です。
円滑でもありません。
『安全』と『円滑』を脅かしてまで自分の優先を主張するのは間違っています。
また、これもよくある光景として、制限速度を守って走行している車が速度超過の車に追いつかれて、追い越しをかけられたところ、
「速度違反の犯罪者は許さないーッ!」みたいに追い越し妨害のスピード上げ。
危険です。
対向車がいたらもちろん事故になりかねません。
もちろんこの場合は発狂した『元・制限速度遵守車』が一転、『追い越し妨害』及び『速度超過』の犯罪者に化けているわけですが、
こんな極端な例(というにはよく見るけど)でなくても、じゅうぶんに『道路交通法信者さん』が『安全』と『円滑』を脅かしているところはよく見ています。
『速すぎる車を製造するのはやめさせるべきだ』『なぜ法定速度を超える速度が出せる車を作るのだ?』『乗用車にも90km/hリミッターをつけるべきだ!』という大型トラックドライバーさんの意見をネットで見ました。
確かに230km/hで追突事故を起こし、老夫婦を死なせたポルシェの痛ましい出来事は記憶に新しく、また未熟なトラックドライバーさんはそういう暴走車を想定に入れていらっしゃらないので問題視するのはもちろん私もわかりますし、うなずきます。
しかし、以前、某トンネルが崩落事故を起こした時、インプレッサWRXがカッ飛んで逃げて、崩落するより早くトンネルを抜け出て助かったというニュースには「インプすげぇ!」と拍手喝采が沸き起こったように記憶しています。
また、高速回転型でなければ速い車をゆっくり運転するのは余裕に繋がりますし、
高速回転型のスポーツカーは低速トルクが貧弱で公道では走りにくかったりしますが、やっぱり乗ると気持ちよかったりします。
結局、車の問題ではなく、乗る人の問題だと思うのです。
話がそれたかな……。
ところで制限速度というのは安全な速度でしょうか?
大体は30〜60km/h。高速道路なら80〜120km/hだと思いますが。
そのスピードから、急に前に何かが飛び出して来たら、停まれるでしょうか?
道路状況や見晴らしのよさ、ドライバーのテクにもよるでしょうが、
はっきり言います。
制限速度とは、じゅうぶんに危険な速度です。
ただ、信号や一時停止を設けること等で脇道からの飛び出しを防止し、子供にも交通教育を施しているため、そして何より自動車に乗る目的は『出来るだけ早く目的地に着くため』である以上、制限速度をそんな高い数字に設定してあるのです。
とはいえ、高い数字と言っても、それは老人や初心者、普段は近所のスーパーまでしか運転しない主婦にとっても比較的安全に走行できるような数字に設定してあります。
私はプロですので、正直に言いますと制限速度は遅すぎます。
『本当は○○km/hオーバーでも初心者さん等が制限速度で走るのよりも安全に走行できる』
でも、そこを敢えて抑えて走れば、より安全に走行できます。
でも、あんまり遅すぎると眠くなる。
さて、制限速度は『安全な速度』だと思われているように思います。
実際はじゅうぶんに危険な速度なのですが、前述したインフラ整備や教育によって安全な速度だということにされています。
現状、道路は全員が制限速度を守って流れているでしょうか?
流れていませんよね。
場所によっては制限速度以下でいつも流れているような道路もありますが、大抵のところではほとんどの車が制限速度+10〜15ぐらいで走っていると思います。
場所によっては+20〜25なんてのが普通のところも。
さて。
そんなところを制限速度で走るのは、はっきり言って、『安全』でしょうか? 『円滑』でしょうか?
その道路の平均ペースより10km/h遅い車が走っていると流れが悪くなります。
20遅ければ渋滞にもなりえます。
30遅いと危険にさえなって来ます。
80で流れている50制限の道路とか、普通にあります。
そこを50で走るのはつまり、危険でさえあるということになります。
だから速度違反をしましょうなどと言うつもりはありません。
ただ、それが『安全』と『円滑』を脅かす行為だということさえ理解してもらえれば。
ルールを守るのはとても善いことです。
ですが、だからといって『俺はルールを守ってるのにーッ!』と発狂するのであれば、
それは車を運転するにおいて絶対に守るべきものを守らない、積極的に他の車とぶつかろうとする行為だということだけ申し上げて、
長くなったのでこのエッセイを終わらせて頂きます。
もしも公道が、皆が制限速度を遵守している、理想通りの場所なら、制限速度は確かに『ぶつかり合うことがないから』安全な速度と言えると思います。
私なら80で流れている50道路なら、最低70で走るか、合わせて80で走るか、片側2車線ならずっと左側を走るか、あるいはその道路は決して走らないか、どれかを選びます。
『他の交通と無駄にぶつからないこと』
それ『だけ』が大切なのです。