1章 5話 『真実』
『待っていたよ。葉月、闇月』
子供に案内されて着いた場所は、とてつもなく広い居間だった。
『ここまでご苦労だったね。ゆっくりと寛ぐといいよ』
案内してくれた子供は、沢山いる子供達の所へと向かいそちらに紛れ込んだ。
「闇月を連れ戻す。…そして、お前の目的も知りに来た。なんで、子供らを拐うのかを。」
「葉月と私は旅人だ。困った人達を助けに回る為に。」
『そうかい。で、私には何を話せと言うのかね。』
「……………天狗様。この世界で困っていたのは、貴方ですよね。」
『…ッ!!』
闇月と葉月は、お互いにバラバラで動いていたが、
心の中では何処か分かっていたように2人はハモって言った。
葉月は、楓と天狗様と行動してる時に。
闇月は、天狗様や子供達と関わる時に。
「…図星って所か。」
「お願いです。話してくれませんか。ボクたちは貴方を助けたい。やみちゃんを拐ったのは許せないけど、なにか理由があったんでしょ?」
『…はは……。お見通しかよ。』
『いいさ!話してやるよ。私の話といこうか。』
天狗様は、微笑みながら話し始めた。
だが、その顔は少し辛そうで…悲しそうだった。
ーーーーー
昔々……いや、そんな昔でもない。
100年くらい前の話だ。
私はこの世界で、この街の『神』として降りてきた。
人々は皆、神社等に参拝にも来るほどだ。
家族連れや、独りだったり。色んな人がいた。
性格の歪んだやつもいれば正義感で溢れた人もいる。
50年くらいは神として過ごしていたが、
たった50年で大分変わってしまった。
人々は神社に来なくなり、寂れていく。
街の方は少しづつ発展していく。
そんなある時に、こんな山奥の神社に
ボロボロの子供が来たんだ。
『神様、神様……!!!どうか、お助け下さい!!』
(どうしたんだろうか、こんな小さな子供がこんな所に来るなんて。しかも深夜に。)
『最近、街の大人の人が…!!!』
子供の前に姿を現した。
『一体、それはどういうことだ。』
そこからの話は早かった。
その子供は、親から見放されてしまった子だったこと。
要は、捨てられた子供という事だった。
そして大人は子供を道具として扱うようになったこと。
学校に行け無くなった子供。親からによる暴力。
そういう子供たちが増えてきた事。
『お願いします…!助けてください……!!』
子供からは神様に助けを求めるしか、もう
味方はいなかった。
『あぁ…助けるよ。ここに居てね。子供達を、今助けてあげるから。』
神様はそう言うと、倉庫の奥底に眠る天狗の面を手に取り服は白い和服に着替え子供の所に戻った。
『私は今から、神では無く、天狗として街の子供を連れ去る。神隠しとして。な……』
子供の頭を軽く撫で、バサッ……と羽を出し、
窓に身を乗り出し、そのまま飛び立った。
『……ありがとうございます。神様……。』
それがきっかけで、子供達……いや、虐待にあってる子供達を全員、神隠しとして攫った。
連れて帰るも、大人になったら
街に返さないといけない。ずっと置いておくには行かなかった。
街に連れ戻す時は街の人々の記憶を少し変えてその人がいた事にさせて連れて帰る。
全員はできず一部の人のみだ。
ーー返した子供が虐待しないように呪いをーー
その後は神隠しとして。50年間過ごしてきた。
昔の子供たちはすっかりもう大人だ。
その子供たちは虐待は一切してない。逆に守る立場に居る。
昔よりは少なくなっているんだ。
ーーーーー
『私の…力が強すぎるのか、子供達を操るような形になってしまったんだ……。抑えようとしても、抑えられなくて、どうしたらいいのかも分からずで……。』
天狗様は、過去について話してくださった。
「神の力だったのか。ずっと心地良いと思えていたのは。」
『そうなるね。でも私はもう……神でもない。』
「それは何故?」
『上級の…まぁ、同期の神に追放されたからな。私はここの結界にいるように命じられている。まぁ、虐待とかある子供達はここに連れてきて避難させてるけどね。』
少し、悲しそうに微笑む彼に葉月達はどうすることも出来ない。
神の存在でもない。そんな知り合いも居ない。
どうしようか、と困った時に葉月は黙り込んでしまい
シーンとした沈黙の空気が流れた。
それを破ったのは闇月だった。
「……なぁ。お前名前は?」
『私かい?』
「そう。」
『残念ながらないね。名前は無くなった。好きにつけてかまわない。』
「そうか。……………………なら、【エイレーネー】ってのはどうだ?」
少し考えてから闇月は言った。
『私はなんでも構わないよ。あと、もうひとつの頼みを言ってもいいかい……?』
「いいよ!ボク達で出来ることなら!!助けます!」
『……この、力を抑える物はないだろうか……。』
天狗こと、エイレーネーはこの力が強すぎるあまり
自分で制御出来なくなっていたのだ。
「……うーん。できないことは無いと思うけど……ちょっとあの人と連絡してみるから待っててくれないか。」
闇月はちょっと悩むと、ポケットから携帯を出し
とある人に電話をしに行った。
『私達はどうなるの?』
楓は不安そうに葉月に聞いてきた。
「大丈夫!エイレーネーさんや子供達も、助けてくれる人だから!エイレーネーさんは、ボクたちのいる世界で、力を抑えるのを学べると思うし……。」
『そうか、、それは有難いな。』
『みんなも一緒なんだね!』
「うん。一緒だよ。大丈夫!」
楓ちゃんは、置いてきぼりにされてそうですが、
実際は、天狗様の所で一緒にお話を聞いてると思います。
子供達は多分……居間で何かで遊んでると思います。
歳的に幼い子から高三位までの幅広いので
勉強してたり、子供の遊び相手してたり。
眠ってる子供がいたり。……そんな感じでしょう。
裏の背景的な感じなので描写は抜いておりました。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
まだ、もう少し1章は続きます。