1章 4話「神隠しにあった子供たち」
ーー葉月と同時刻の時の闇月は…ーー
時間は少し、前に遡る。
どこかに行く天狗様に、子供達の面倒を見る事を頼まれた闇月。
『お姉ちゃん、遊んで』
『お姉ちゃん、遊ぼ!』
「ッ……。」
闇月は1歩後退りをしてしまう。
子供達は少しずつ皆闇月に近づいていき、
裾を掴んで来たりする。
「私を……(お姉ちゃん、と、呼ばないでくれ……)」
『お姉ちゃん、どうしたの?』
『向こうで遊ぼ!お姉ちゃん!』
闇月は、お姉ちゃんと呼ばれるのが嫌いだった。
『ーーお姉ちゃん!』
どうしても、あの子の記憶が蘇ってしまうから。
忘れてはならない…大切な人だけど……。
私はお姉ちゃんと呼ばれなくなかった。
こういう時、睦月姉ちゃんはどうしたんだろ。
攫われた子供達と一緒に居ろと言われたら
何してるんだろ……葉月なら?葉月はどう行動する?
私だって葉月なんだ。それぐらいできるだろ…。
闇月は、行動に出た。
パシッと頬を軽く叩き、切り替えのスイッチを入れる。
左腕にある滅多に使わないゴムを使い、乱暴に髪の毛を縛る。ボサボサしてるが本人は気にしたりはしない。
なるべく髪の毛を高い位置に縛ると、
「……よし。みんな!何して遊びたい?」
闇月は葉月の1部でもある。
葉月の真似なんて、簡単な事だ。
笑顔や、言動も全て、葉月そのものだった。
『おままごと!』
『鬼ごっこ!!』
『かくれんぼ!』
『御本読んで!』
『お昼寝したい!』
「おおぅ……。みんな一斉に言わないで!えーっと……」
みんな一斉に言われたため、鬼ごっこ、かくれんぼ、お昼寝くらいしか闇月は聴き取れなかった。
「まずは動こうか!その後に休憩とかしよう!!じゃあ鬼ごっここ隠れんぼを混ぜて【隠れ鬼】はどうかな?」
『いいよー!』
『それにしよー!』
「よし、決まりだね!鬼は誰がやる?」
『いちばんここで年上の僕がやるよ。』
「お!名乗り出てくれたなら頼もうかな!じゃあ、よろしくね!」
『……………。』
名乗り出てくれた彼を鬼担当をしてもらい、
皆は逃げる者や隠れるために動いた。
(私も……逃げないと。ここから。隠れ鬼…鬼ごっこで隠れながらここから逃げれるか?……やるしかない。)
『みっけ。』
『見つかったぁー!』
遠くでそのような声が聞こえる。
こっちに向かってくる足音が聞こえる。
ガタッ……。
「やべッ……」
移動した時、積まれてるダンボールに
背中が当たってしまった。
ガタガタっと闇月の方に向かって崩れてきた
逃げるまもなくダンボールにのまれた。
崩れる時、光が見えた。
(あそこに……光?)
その音を聞きつけてきた子供達は集まってきた。
『何かあったの?』
『大丈夫?』
『逃げようとしたの?』
ワラワラと、闇月を囲うように。逃げられないように。
どこからか出てきた縄で闇月は手を縛られた。
「……は?」
『こうでもしないと、逃げるということが分かった。』
『隠れ鬼はもう、終わりにしよう。』
さっきまでの元気のいい子供達の声色でなかった。
とて冷たい声。
「ッ……。」
(……葉月が助けに来てくれないと私は逃げれそうにない……ごめんな。こんなーーーー。)
子供たちに連れられ、広い部屋に着いた。
そこで、待ってるように言われた。
『ここから逃げようとする者にはバツを』
『お前が大切にしている刀を折ってしまおう。』
バキッ…………と音が聞こえた。
そう思った途端心臓に何かが刺さったような感覚がした。
「い"ッ………、」
実際は刺さってなどいない。感覚だけなのだ。
不思議と身体から力が抜けていき、
そのまま壁に背中を授けて座っていた。
カランカランッ……と折られた刀は
床に落ちるのを眺めている……ことしか出来ない。
旅する前に、あの人に貰った刀だ。
壊したら怒られるのかなぁ……とか思ったが
何処か思考ではここから逃げられないのなら
怒られることも無いか……。とも思っていた。
『ほら。お前の服だ。その折れた刀で切り刻め。』
「…………」
闇月は自分の服を手に取ると大事に抱きしめた。
「……嫌だ。葉月が選んで作ってくれた服だ……。その大切な服を壊したくない……。」
『……好きにすればいい。どうせ、お前はここから逃げられない。』
「……。」
子供達は皆、闇月のいる部屋から出ていった。
闇月は戦おうとも考えたが、あの刀が折れてから何処かもう、「どうでもいいや」と思ってしまっていた。
どれくらいの時間が経ったのか分からない。
闇月は、窓の縁に移動し座ってただただ外の景色を眺めていた。
『闇月さん。お客様を連れてまいりました。』
遠くから、人の声が聞こえてきた。だけど
闇月は言葉を返すことは無かった。
「………………。」
『…どうぞ、お入りください。』
「失礼します…。やみちゃん……?」
誰かの声が聞こえた。
とても聞いた事ある声……誰だっけ?
「闇月?聞こえる?」
ヒヤッ……と冷たい何かが闇月の頬を触れた。
「ッ……ビックリした……。葉月…来ていたのか……。」
闇月は意識が引き戻されたような感覚があった。
目の前には葉月が居る。……
「うん。やみちゃんを連れ戻しに来たよ。」
「…そっか。ごめんな、迷惑かけて……。」
「いや、全然、大丈夫だよ!いつものやみちゃんでよかった!」
「…………」
軽く闇月はニコッと微笑むと、葉月の方へと向き直し立った。
「もうそろそろ、帰らないとな。……あまりに此処が居心地よすぎて。何も考えたくなくなってしまう。」
闇月は無意識に葉月の裾を掴んでいた。
闇月達は、前を歩く子供達に案内され、居間に向かった。
そこには約20人近くの子供たちがいた。