1章 2話『探し物と逃げる者』
ーーチュン、チュンチュンーー
朝、雀の鳴き声でパチッと目が開いた。
「ふぁあ……よく寝たぁ!おはよ!やみちゃ…………やみちゃん!?どこ行ったの!?やみちゃん!?!!」
目を覚まし、隣を見ると闇月が居なかった。
そして、窓が開いている。
(まじか……。やみちゃんが神隠しにあっちゃった……?そんなわけないよね、、朝たまたま早く起きて……街を歩いてるとか……?)
急いで葉月はパジャマから私服に着替え、
部屋から飛び出した。
「宿主さん!!今直ぐに、ロビーの監視カメラを見せてください!!!」
『どうした、嬢ちゃんよ、慌てずゆっくり言ってごらん?』
「ボクの相棒の、ロングの黒髪で赤目のボクと同じような顔をした人を探してるんです……!!」
『はて。そんな子おったかねぇ?君1人でここの宿に泊まりに来ただろう?』
「え……?何言ってるんですか!?宿主さん!!……いや、大丈夫です。失礼しました。」
『おお、気をつけて出かけるんだよ〜』
(あそこの宿主さんは、何も覚えていなかった……なんで?)
葉月は、吸血鬼だ。なのでもちろんのこと、羽がある。
バサッ……という、音が聞こえると葉月は既に空にいた。
「やみちゃん……何処にいるの…………。」
空から、闇月らしき人を探し回る。
黒髪で赤目の彼女はこの街の中ではとても探しやすい。
ここにいる街の人々は皆、【エメラルドグリーン】の髪色をしている。
その中に黒髪の彼女を見つけるのは早い。だけど、一向にそれらしき人は見当たらない。
1度、地上に着地をし、周りに聞き込みすることにした。
「すみません……!ここに黒髪で赤目でボクと似たような顔をした人を見ませんでしたか!?」
『いや、見てないね。』
『黒髪の子はこの街には居ないと思うよ?』
「えっ……。」
『もしかしたら、神隠しに巻き込まれたのかもなぁ!はっはっはっ。』
『こら、旅人さんに向かって笑うんじゃない。』
「神隠し……。それはどの辺でよく起こりますか!?それと、、子供が神隠しから帰ってきたと言う子はどこに居ますか!今すぐ行かないといけない用事が出来たのですが……!」
『いや、旅人に教える必要はないと思うんだが?』
『神隠しにあった子は戻ってこないんだ。もう、諦めたまえ。』
「……そうですか。この街の人は皆冷たいんですね。」
通りすがった人にはもう、話しかけず自力で探すことにした。話しかけても、先程と同じ結果にしかならないと思った。
走りながら、当たりを見渡す。
闇月が話していた人とたまたま遭遇したのだ。
話を聞いてみるも、闇月のことは覚えていなかった。
私の記憶だけに闇月が居て、周りには誰も覚えていなかった。少しずつ、もう見つからないのでは?と焦りが生じてくる。
『す、すみません……宜しかったら、楓に合わせましょうか……?』
「楓?合わせるというのは…?」
『彼女が、神隠しにあって、帰ってきた子です。私の愛しい娘です……。』
「なるほど……なら、1度会わせてくれませんか?」
『えぇ、もちろんです。着いてきてくださいな。』
葉月は、楓という子の母親に着いていくことにした。
街中を歩いて10分ほど。少し寂れた場所に家と、人1人入れるくらいの祠みたいな建物があった。
『楓はこの中にいます。では、私はここで……』
ソサクサと離れ、家に入って行ってしまった。
― ― ― ― ―
― ― ― ― ―
ーーチリンーー ーーチリンーー
鈴っぽい音が聞こえる……。
目を開けたいけど…まだ、眠っていたい。
この、フワフワした気分から。抜け出せない。
(……おき、ないと……葉月に迷惑…かける……。)
ゆっくりと重たいまぶたを開け、綺麗な赤い目が現れる
『お。やっと目覚めたよ。』
闇月は唐突に聞こえてきた声に驚き、飛び起き
戦闘態勢に取ろうとした。
(武器がない…。)
『昨日は君を攫って済まなかった。あまりにこの髪と目の色が珍しくて気に入ってしまったのだ。そう怯えるんじゃない。私は君と仲良くしたいんだ。』
パチンッと、指を鳴らすとどこからが来た、子供が闇月の持っていた服や武器を持ってきた。
(……ん?服???)
「お、おま……。服…、え???あの……え??」
『 あぁ、困惑するでない。服は着替えさせたが、私のようなものはやっていない。同い年くらいの少女にやらせている。安心しろ。』
「安心出来るか!!!!」
今の闇月の見た目は白い着物を来ている。
周りにいる子供たちと同じ服だ。
『君はとても興味深い。君は…………。』
「言うな。言わなくていい。お前がそれを知って何がある。知る必要は無い。」
自分の服と武器を受け取り、握りしめそう告げる。
周りにいる子供達はざっと見、6〜18歳くらいの子が多い。
大人っぽい人は居ない。となると。
神隠しにあった子供たちだろう。ということが分かる。
少年少女は、一言も話さない。
目を合わせてくれない。どこか虚ろな瞳をしている。
『まぁ、いい。朝飯にしよう。さ、用意してくれ。』
そう、目の前の天狗の仮面をつけている髪の長い男が告げると、子供達は準備をするために、その場から離れていった。
「………………(絶対にココの食事は食べない方がいいな。食べたらきっと言いなりになってしまうだろう。)」
『名前はなんと言う?少しお喋りでもしないかい?』
「お前に私の名前を教える義理はない。」
『まぁまぁ、そう、怒ることないって!』
「はぁ?」
闇月は自分の武器…刀を右手に持ち。
足で襖を蹴破った。
「ここに居る意味もない。私は帰る。葉月に迷惑かける訳には行かない。」
『いやぁ、出ていかれるのも困るんだよなぁ。』
その声が遠くで聴こえるはずなのに、真後ろで聞こえた。
振り返ると目の前に、奴はいて、、
何も動けなかった。動け、動け!!と願うも金縛りにあったかのように、動くことが出来ない。
『さ、戻って戻って。ここに座って。』
手を引っ張られ、そのまま赤色の座布団に無理やり座らされてしまった。
座った途端、動かなかった体が自由になる。
『先に食事にしよう。その後に君について知りたいな。』
うわぁ……何こいつ変態かな。というドン引きした顔をしつつも、
自分の目の前に置かれた食事がとても綺麗で美味しそうだった。
ゴクリ……
『いただきます。』
闇月以外はその食事に手をつけ始める。
自分は食べないと心から決めているので手につけることは無い。
だが、これは食テロか何かか……。
とても美味しそうに食べるものだから、気になってしまう。
そして、朝から何も食べてない。お腹がすいてしまう。
白米、だし巻き玉子、焼き鮭、味噌汁、サラダ、茶碗蒸し、
等と、和食が出てきている。何故か茶碗蒸しの横に1口サイズのショートケーキ。
『ん?食べないのかい?それとも嫌いなものでもあったかな?』
「……いや。要らないです。」
『この中に毒も入ってない。仕掛けがある訳でもない。普通に朝ご飯だよ。人間は食べ飲みしないと死んでしまうだろう?』
「それは…まぁ、はい。」
『警戒しないで、食べて欲しい。君は水色の髪の子と違って食事をあまりしていないだろう?』
「なんで……それを…。」
『この街に来て、2日さ迷ってる時から見てきたからね。「自分は要らないから食べなよ。」とあの子に渡している所もね。』
「うわ。ストーカーじゃんお前。」
そんな前から付けられていたのか。
もう少し警戒しないとな。葉月ばかり気にしていたから
自分自身の警戒を緩めてしまっていたのかもしれない。
彼女なら……きっと自分もあの子の事もきっと守れただろうな。
『ずっと、気になってたんだけど。なんて呼んだらいいのかな?君には2つ名前があるように見えるけど。』
「……………………闇月。」(言ってしまった……。)
『そうかい!君の名前なんだね!よろしく頼むよ!』
一瞬、ぐにゃりと、視界が歪んだ気がした。
瞬きをするが直ぐにそれは治った。気のせいだろうか。
『まぁ、いい、早く食べないと冷めてしまうよ。』
「えっ、あ……はい……。い、いただきます……。」
闇月、ここに出された食事を口にしてしまうが
特にこれといってやばい物は入ってなさそうだった。
普通に上手い食事だった。
お茶を除いては。
「お茶にっが!!!!!!!」
味が濃すぎるお茶に思わず大声を出してしまった。
「何時間お茶放置してんだこれ……相当苦い……水欲しい……」
『……お水が欲しいのかい?』
「え、何、その間……怖いからいらないわ……。」
『そうか、まぁ、いいや。少し子供達と遊んでやってくれないか?私は仕事が出来たみたいでね?出かけてくるとするよ。』
「………………。」
『じゃあ、また後でね。』
綺麗な白い羽をバサッと出し、窓から何処かに飛んでいってしまった。
「子供たちの面倒を見ろと……私子供苦手なんだけど……。」
窓の縁まで歩き座る。
目に光を宿さぬ子供達を遠目に見つめながらそう、ボソリと呟いた。
ちょっと遅れましたが、
2人の主人公を紹介!
稲田 葉月
人間と吸血鬼のハーフの子。
吸血鬼の血の方がおおい。
闇月と一緒に旅をしている。
過去は全て隠している。話そうとはしない。
闇月の事を1番信頼と信用と尊敬している。
元々何かの団の副団長をしていたらしい。
水色の髪の毛をして、紺色のシュシュを使い
ポニーテールをしている。解くと腰あたりまでの長さになる。
瞳は綺麗な青色。
闇月からは『海みたいだね』と言われている。
(服装は日によって違うので省きます)
闇月
ほぼほぼ人間の子。
葉月の裏人格と本人は言っている。
葉月しか基本信用していない。
まだまだ謎が多い子。
(物語が進んで行くうちに少しずつ分かっていく予定)
『闇月』という名前は葉月がつけてくれた。
本人は気に入っている。
黒色の髪の毛をして、ゆるふわの癖毛。
髪の毛は縛っておらず放置のまま。戦闘などをすると手につけているゴムで適当に縛る。
瞳は赤。自分自身はその目の色が嫌いである。
(服装は日によって違うので省きます)